目撃と提案


「隕石が近くに落ちたって?!」

 それは初めの隕石が学校に落ちてから1週間がたった頃。隕石が降るのを待てといえど

いつ降るかわからないので普段の生活を送っていたところ、夜中にまた隕石が落ちたとのこと。

当然俺は眠っていたので知らないし、まだ報道もされていないのだが。大声で叫んでから、

山藤が口に指を当てるのを見て、慌てて口を塞ぐ。ここは朝の学校だが、今人気は少ない。

「……なんでお前が知ってんだ?」

「昨日夜中に勉強してて、ふと窓の外を見てたから」

 あおいちゃんならともかく、山藤が目撃するとは偶然だが、問題はその隕石の行方だ。

「向こうの山の手前の方に落ちたような気がするけど……建物の陰になってよくわからなかった」

 さすがに夜中に、山藤に一人で探させるわけにもいかないし。しかし早くしないと白衣たちに

回収されてるかも、いやもうすでに回収されたかもしれない。

「あ……おはようございます……」

 そこへちょうどあおいちゃんが登校してきた。3階(3年のフロア)の階段の前にいるから

やってきたらわかる。山藤が昨日わざわざ見たのを伝えにきたので、ここにいるのだが。

「おはよう……あおいちゃん、昨日隕石が落ちたのって知ってる?」

 あおいちゃん(三樹男さん)なら昼夜問わず観測してそうな気がするから、小声で尋ねてみる。

その質問に彼女はピクッと顔を上げる、その表情は少し驚いてるように見えた。

一瞬知らなかったのか、と思ったのだが。

「……はい……よくご存知でしたね」

 なんだ、やっぱり知ってたのか。驚いたのは、俺たちが知ってたということにか?

「山藤が偶然に落ちるのを見たんだよ。もしかしたらそっちで回収してくれたとか……」

「……いえ、父と探しに行ったのですが……すでに研究所の人たちが……」

 やはり遅かったか。落ちたところが白衣たちの研究所に近い側だったから間に合わなかったの

かも知れないな。これが学校に落ちてたなら、研究所からも遠いし、なんせ俺のマンションから

走って5分の距離だったのに。でも落ちる瞬間を見なければどこに落ちたかわからないよな……

「夜中に落ちたらなぁ……もしかして夜中に落とすようにしてるとか?」

「その可能性も……大きいです」

 うなずくあおいちゃん。そりゃ昼間落とすより人に見つかりにくいから俺だって考える

ことだけど……これじゃ夜通し空を見てなきゃいけないじゃないか。

「だったら、夜通し空を見張ってたら?」

 そんなときに山藤が考えても無いような提案。それが出来たら苦労はないだろ、

俺たちには学校があるんだぞ……と言おうとしたが、他に案があるわけでもないので

言い返せず。学校よりも大事なことではあるし、学校をサボれる理由にはなるが……

こういうときに限ってマジメぶる性格っていうのは、自分でも謎だ。

「……でも、父と私で24時間観測してるので……見つけたら連絡します……」

 あおいちゃんのもっともな意見に俺もうなずく。そりゃ人数が多けりゃ多いほど

見落としは少なくなるけど、あおいちゃんや三樹男さんの方が何か詳しそうなので、

2人に任してりゃ俺らは探しにいくだけでいいと思う。まあ2人には夜中も起きてもらう

ことになるだろうけど。しかし山藤は

「私が自分から見張るって言ってるんだからやらせてよ」

 と、何だかけんか腰に上級生のあおいちゃんに主張する。どうせキャンプ気分で星空を見ながら

寝てみたい、とか言うことなのだろうが、それにしても最近山藤のあおいちゃんに対する態度が

厳しい。あおいちゃんはといえば気にしてないというか、表情が乏しいので考えがよく

わからないが、きっと迷惑してるだろう。かといってあおいちゃんを庇うと山藤はもっと

怒りそうだし……ここは山藤の肩を持った方がいいのか?

藍子 & あおい

「まあ、邪魔になるってことにはならないからいいんじゃないか?」

 とりあえず無難な言葉を考えてあおいちゃんに提案する。彼女はちょっと考えてたが

(そのあいだ山藤の視線がするどかった)、

「……それなら……お願いします……」

 折れてくれた。というか山藤の願いであって、俺としては夜は寝かせてもらいたかったのだが、

きっと俺も徹夜させられるんだろうなぁ……学校がつらいし、お肌も荒れちゃう(爆)

「テツ、今日から毎晩学校に泊り込みね」

「今日からかよ……」

 そりゃ今晩落ちるかも知れないけどさ、それに別に学校でなくても……いや、この近くで

一番見晴らしのいい場所はここの学校の屋上だ。ちょうど天文部の部室があるのであおいちゃんに

開けてもらえるし。山藤はそれも考えて見張ることを考えたのだろうか。それにしては……

わかってるのか?俺と2人で泊り込むんだぞ(あおいちゃんもいるかもしれないけど)……

そういうことをしそうにない俺だって何もしないという保証はできないし(ぉ 俺はそんな

ことをする勇気のない男と思われてるのだろうか、それとも……信用してくれてるのか?

 尋ねることも出来ず、補習の開始時間になったのでその場は解散してしまう。今日の授業も

集中できなさそうだ……


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