解明と漏洩


 ふと腕時計を見てみた。もう4時近くになるのか、普段ならもう30分もすると空が

明るくなってくるのだが、今は雨で空が暗いのでもう少し遅い時間になるだろう。

そんなことを考えて、再びあおいちゃんの話に注意を向ける。

「私があなたの後をつけて、石を取り戻す機会をうかがっていました……あの日も……

 あなたたちが石を探している日も、この建物の陰から見ていたんです……」

 そ、そうだったのか、隕石が落ちた日――山藤が無くしたあの石を、俺と一緒にこの部室で

探していた時、窓とかから覗いてたのか。全然気づかなかったな……

「隕石が落ちた後、その振動で棚が倒れていたようで……石はその棚の裏側に落ちてました……」

「そんなとこに……」

 山藤が思わず漏らすのもわかる。俺たちもそんなところまでは探してなかったからな。

丸い石だから転がってったのだろう。演奏中だったら石が落ちた音も聞こえなかっただろうし。

あのとき石を見つけてりゃ、未だあおいちゃんは山藤をつけまわし(ストーカーし)てたりして(汗)

「あとは石を持ち帰って、父が改良して……最後の実験で今日落としたのです……

 雨の日だったからあなたたちは眠ってると思ってたのに……」

「じゃあ、3・4日前に山藤が見たっていうあの隕石も、実験で落としたわけ?」

 俺の質問に、彼女は黙ってうなずいた。ということは隕石は白衣たちが回収したわけじゃ

なくて、彼女や三樹男さんが先に回収したのだろう。後から白衣たちも調査しに来たかも

しれないが。

「……隕石を見つけた私たちを言いくるめて、騒ぎを大きくさせないようにしようと

 思ったのはわかるけど」

 珍しく山藤が考えに考えた末のような表情で口を開いた。別に頭がどうとか言う意味では

ないが、今まであおいちゃんに対して感情的な返答しかしなかったのでそう思った。

「だったら初めの隕石、私たちが完全に帰ってから落としてれば、私たちにウソをつく必要

なかったんじゃない?そもそも落とす必要もないと思うんだけど」

 確かに……俺たちが帰った後、あおいちゃんは部室に忍び込んで石を見つけるだけで

よかったはず、隕石を落としても目立つだけだ。まあ隕石が落ちたおかげで棚が倒れて

石が見つかったんだろうけど。

「……あれは、私にも予想外でした……多分研究所の人が落としたのでしょう、あちらからも

 落とせるようにしていますから……」

 三樹男さんが衛星を操れるようにしたとはいえ、白衣たちが使えないと気づかれれば、

三樹男さんたちの計画が感づかれてしまう。てことはまだ白衣たちにその計画は気づかれて

ないということなのか?だったら照下邸へ行った時に、白衣たちが見張ってるのではないかとか

いうのは考えすぎだったのか?白衣たちは意外と真面目な集団だったのかも……

「でも、研究所が落としたにしてもなんでこんなとこに?前聞いた……海に落とすとか

 聞いたのが本当だとしても、1年前の精度から考えればとんでもなく見当はずれの場所に

 落ちたじゃない」

 驚くほど的確な疑問を山藤は挙げていく。三樹男さんのあの話もデタラメだとすれば

片付くように見えるが、それではまた別の疑問が出てきそうだ。だがあおいちゃんは

海に作られた発電システムは実在すると言い、

「父の話では、衛星が隕石を落とす精度は1年前と大して変わってないらしいです……

 システムの広さが十分になければ、海に隕石が落ちて津波を引き起こす恐れがあるから……

 でも面積を広げるにも莫大な費用がかかって……今はまだ陸上に落とす方が被害が少ないと

 思ってるからでしょう……」

 彼女が喋り終わって、また沈黙が――雨音だけが響く。ずっと座っていて尻が痛くなって

きたので、立ち上がって窓の外を見る。雨は少し強さはおさままってるようにも見えたが、

ほとんど変わっていないのかもしれない。

「で、どうすんの?あなたの計画はバレちゃったわけだけど。あ、ちゃんとビデオに

 撮られてるからね」

 言っている内容の割にはどうでもいい感じの口調で山藤がつぶやく。ビデオカメラは

あさっての方向を向いているが、回っているので声は撮られている。それにかかわらず、

あおいちゃんがここまで喋ってまだシラを切るとは思わない。それを見越してのこの口調だろう。

だからって俺たちにも拘束力はない……警察に突き出すっていうのもなぁ、泥棒犯って

ことにはなるけど、元々彼女たちの石だったんだし……

「……私が動かなくても、父はもう計画の最後を行っているでしょう……」

 ……そういえば三樹男さんが何をやっているか考えてなかった……まさか、完成したこの石を

複製し、白衣たちの研究所に置きに行ったんじゃ……!

 俺は2人に構わず、間に合わないとしても止めようと、外に出るため扉に手をかけた。だが……

「動かないで」

 はっきりとした口調であおいちゃんが言ったのに振り返れば、彼女はいつのまにか手に

機械のようなものを……放射線センサとは違う、1つボタンが目立つリモコンのようなもの

……それはまさか。

あおい


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