斥ける


 三樹男さんと別れてからは、隕石が近くに落ちることはなかったので安全に学校へ

たどり着くことが出来た。勝手に学校を飛び出した俺たちに先生は何か言いたそうだったが

背中の四季さんの手当てが先だと見て、何も言わなかった。

 体育館に戻ると、そこはさっきより人が多かった。ただ当初の混乱してる人が多かったのに

比べると大分落ち着いたようで、座っておしゃべりしている人をよく見る。四季さんは医務室に、

七希菜ちゃんはその看病に、佑馬は彼女のそばにいたいということで、思ったよりも楽に

一人になれた。まず瞳由ちゃんから自分の荷物を受け取ると、あおいちゃんを探した。

冷静そうな彼女のことだから、一箇所にじっとしているだろうとみてまず壁際を見やる。

するとあっけなく見つかった。いや時間をかけてやっと見つけるなんて演出はもうこりごりだが。

「あおいちゃーん」

 俺が手を振って名前を呼ぶと、少し安心したような表情を見せた。弟が目を覚ましてからは

多少いい表情を見せるようになったが、それでもまだ見分けるのは難しいが。

「無事だったんですね……」

「まあ間一髪だったけどね」

 初めの隕石といい、荒井田といい。でも今後も同じようなことが起こりそうな予感がして

ため息をつく。

「あの……父は……」

「ああ、会ったんだけど……怪我人を近くに運ぶからって別れたんだ。もう少しすれば

来ると思うけど」

 三樹男さんは、俺を探してくるといってあおいちゃんと別かれたのだろう。荒井田のことを

話してるとややこしくなりそうだし、彼女には面識のない奴なので細かいことは省略した。

「そうなんですか……それで、父から『石』は受け取りましたか……?」

「石?ああ、これ……」

 言われて、ポケットに入れていた石を取り出す。三樹男さんに渡されたものだから

危険なものではないと思うが、一体これは……尋ねるように彼女に視線を向けると、

「これは父が新たに作り出したもので……以前作った『隕石を引き寄せる』石と反対の性質、

『隕石をしりぞける』石です……」

 へぇっ、そんなものまで作り出せるのか。そりゃあ今一番持っていたいものだよな。

実際あれから隕石は近くに降らなかったし。三樹男さんから渡されたものだが、彼自身も

持っているだろう。あおいちゃんも……あ、今俺に見せている。

あおい

「にしても、なんかタイミングがよすぎるというか……いや疑ってるわけじゃないけど」

「元々、人工衛星の本来の使い方での性能を高めるために、最近父が開発しだしたもので……」

 本来の使い方というのは、隕石を落とした衝撃をエネルギーに変換して、

資源を節約しようというもの。三樹男さんが作った『隕石を引き寄せる』石は、

空に空気の道を作り出してそこに隕石を落とすことで、目標に的確に落とすことができる。

それで十分だと思っていたが……?

「以前の石だけでは、風が強いと道が崩れることもあり目標を外れることもあるみたいです……

そこでこの石……風の柱を作り出して、隕石がやってくると軌道を曲げるようにして、

近くに落とさないようにするのです……」

「そうか、この石を目標の周りに置くことで、落下地点がずれることがないように

しようとしたんだな」

 俺のこたえに、あおいちゃんはこくりとうなずく。やはり精度を高めるために作ったものだが、

単体で使えば隕石から身を守れるというわけか。

「ただ……まだ開発途中で、空気の柱の形成が中途半端で……有効範囲が狭かったり、

ときどき柱が消える時もあるらしいので過信しないでください……」

 タイミングよすぎと思ったのだがそうでもないようだったのか。過信するなと言われても

実際頭上に降ってきたらどうしようもない。少なくともこの石が唯一の防御策だから

肌身離さず持っていたほうがいいな。それからこの石、あいつにも持たせてやりたいが……

どこにいるんだろうな。

「……心配しないで下さい、きっと無事でいると思います……」

 俺が暗そうな表情をしていたのがわかったのか、あおいちゃんが励ましてくれた。

だがそのあおいちゃんも、何か心配ごとが残っているようにも見える。

「正輝は……まだ会ってないのか」

「……母と一緒にいるんだと思います……父が戻ってきたら探しに行きたいのですが……」

 三樹男さんも心配してるだろうに、まず俺のことを探してくれたのか。それよりも

2人は無事だと信じているからなのだろうか。とにかく、俺もお礼をしないと。

2人を探すのを手伝ってやろうと思った。


Next Home