窓を閉めて寝たし(笑)
今日はあんまり晴れてはないが、気分はすがすがしかった。健康っていいなぁ。
「あっ、テツ!」
交差点へ向かっていると、信号待ちをしていた佑馬が手を振る。信号はすぐに変わりそうには
ないからゆっくり歩いていく。
「風邪、大丈夫?」
「ああ、もう平気だ」
「よかったですね」
と、佑馬の影に隠れて見えなかったが、七希菜ちゃんもそこにいた。まあいつもこの二人は
一緒だからな、いない方が不思議ってくらいになってる。といってもクラスは違うけど。
信号が青になった。さて、2日ぶりに授業を受けますか。
「瞳由ちゃんのおかげで付いてくことができたよ、改めてありがとう」
「お役に立てて光栄です♪」
担任は数学担当で、教えは上手いが進むのが早いので1日で数ページも進んでいたり。
でも瞳由ちゃんのノートのコピーのおかげでわからないところは少なくなったな。
「あ、テツー?」
気付けば、教室の外から佑馬が手招きしていた。他の教室にも普通に入ってくるはずの
佑馬だが……内緒話ってことか?
「瞳由ちゃん、俺ちょっと」
「うん、どうぞ」
一応彼女にことわっておいてから、佑馬のほうへ向かった。
「何だ?」
「ちょっと相談があるんだけど……」
いやに小声で、口に手をかざしたりしている。なんかやましい話か?
「金なら貸さんぞ」
「……ってそういうことじゃなくてさ」
「金じゃないとすると……七希菜ちゃんとデートとか」
「……当たりだけど、僕ってその2択なわけ?」
まあ初めのは冗談なのだが、次のも本当に当たるとは思わなかったな、単純なヤツめ……
「11月3日にね、文化ホールで催しがあるらしいんだけど、七希菜に行こうって誘われちゃって」
へえ、七希菜ちゃんから誘うようになったなんて、そりゃ佑馬も舞い上がるだろう。
「で、俺に何をしろと」
「何をするというか……計画して欲しいんだよ、次のステップへの」
「……なんだよ、『次のステップ』って」
わけがわからず尋ねてみると、佑馬は急にもじもじしながら
「ほ、ほら、恋人同士っていったらさ、その……2人で……」
「……キスか」
「……うん(*^^*)」
まあ佑馬がウブなのはわかっていたが、もうそんなところまで来るとはな……しかし世間の
高校生はそんなこと日常らしい。というか俺がやったことないのに偉そうにも言えないが。
話を戻すが、佑馬は「そういうムードを作れるようなデート計画」を考えろと言ってるわけだ。
「何で俺がそんな計画を……自分で考えろよ」
「こういうことはテツの方が詳しいだろ?」
「そうだったら彼女の1人や2人既にいるぞ」
「……確かに」
納得されても悲しいんですけど(T_T)まあ俺も2人は同時に作るなんて怖いことはしたく
ないがな(苦笑)
「それにさ、計画とかステップとか、そういうのじゃないと思うけどな」
「それは一理あるけど……せっかく彼女になってくれたんだよ?もっと行動を起こさなきゃ」
彼女のために何かをやる、ってのはいいことだとは思うが……それが自分への見返りを
考えてるってのはどうかと思うな……とかきれい事を言っていられなくなるのだろうか。
でも俺は、相手に好きになってもらうように媚びを売るってやり方は好きじゃない。
ありのままの自分を好きになってくれるなら、俺も無理して装わなくてもいいし、相手に
隠していた欠点を見つけられて落ち込まれることもない。
佑馬と七希菜ちゃんの場合は、幼い頃からお互いをよく知ってるらしいから、別に隠すことも
ないはずだ。だから俺も2人の交際を歓迎している。だからこそ、佑馬も今までどおり自然に
接してあげたらいいと思うのだが……
「考えてくれないの?」
「ああ……悪いな」
「あっそ……わかったよ」
ふてくされてるわけでもなく、ただ物足りなさそうに教室へ帰っていった。というか他人の
恋愛感に口出しするもんでもないし、意見を求めるもんでもないだろ。
やれやれといった表情で俺も教室に戻ると、瞳由ちゃんが不思議そうな顔をして
「なんだったの?コソコソ話って感じだったけど」
「んー、ちょっと、ね……」
女の子から見た恋愛感ってどんなだろう。それがわかりゃ苦労はないのだが、そう簡単に
聞けるもんではなく、たとえ聞けたとしても、理想が高すぎて実現できなかったりして。
例えば白馬の王子様とか……きょうびそんな妄想する娘はいないか。