足元から冷えるので靴下2枚でも履こうかなと思うくらい。でも女子ってもっと寒そうだよな、
スカートだし。タイツとか履いてもいいんじゃ……なんて男の俺が言うことでもないが。
ただ言えるのは、いくら寒いからってあそこまで表に出すのは周りが寒くなる。
「ねぇ〜シャノ〜ン、温めて〜♪」
いつもの交差点で珍しく、針井と宗谷が一緒に登校してるのを見る。そして宗谷は周りを
気にせず針井の腕に抱きついて甘えている。針井はといえば、嫌そう以前に眠たそうにボーっと
している。合宿の時、かなり朝辛そうにしていたが、どうやらいつものことらしい。というか
夜更かししてそうだけどな。
というわけで2人とも回りの視線を気にせずに、青信号になった横断歩道を渡る。一瞬
針井と目があったので挨拶だけでもしようかと思ったが、すぐに目をそらしたし、こういう
状況なのでこちらも声をかけづらい……結局2人の後ろを歩くことにした。
それにしても宗谷ってスカート似合わねぇよなぁ……特に運動しているわけでもなさそうだが、
足が飛んできそうな感じだし。その前に手が先だろうけど。しかし今その手は針井の腕に。
針井も冬の制服似合わねぇな、というか襟元をきちっとしているのがか。夏はいつも襟を
だらしげに開けていたが、そこは色男、悔しいが似合っていた。
「シャノンも寒いでしょ〜?温め合おうよ〜」
まあ一番似合わんのはこの性格だが。あまりの違い様に呆れを通り越して感心するほどだ。
針井も内心迷惑だと思うのだが……もう慣れちまったのか?それとも言っても効かなかったとか。
ふと、針井の表情を見てみるとあまりの眠たさにイライラしてるって感じだ。睡眠不足だと
頭が痛くなることもあるんだよな。それで耳元で騒がれた日にゃ……
「どう?温か〜い?」
宗谷が針井の顔を覗き込んで何度目か話し掛けたとき。針井は突然宗谷の腕を振り払った。
あまりのことに立ちどまって目を丸くする宗谷。
「うざ……」
振り返りもせずそういうと針井は一人校門へ歩いていった。残された宗谷は呆然と立ちつくす
のみ。こりゃもしかして初めて言われたのかな……
「……大丈夫か?」
本当に立ち止まってしまっているのでつい声をかけてみた。はたとして振り返る宗谷。
「……見てたの?!」
「つーか皆見てたけど」
後ろから登校してきてる生徒たちがこちらをちらと見て抜いていく。俺は宗谷を促して
歩を進めた。しかしさすがに宗谷の足は重く、こちらが気にかけるほどだ
「『ウザイ』は言いすぎだよな、『うっとうしい』くらいで」
「一緒じゃない……」
……確かに。宗谷の言葉でまた無言に。これほど落ち込んでる宗谷も見ないよな、まあ
次針井に会う頃にはまたいつもの調子で甘えるんだろうけど。というかその「甘えすぎ」が
原因だろうな。いくら好きな相手でも、年がら年中相手してると飽きたりするものだ。
それが好きでもない(だろう)となると……特に一人になりたいときに寄って来られるのは、
俺もウザイと思うかもしれない。
「何か間違ってたのかな……」
「つーかダイレクトすぎなんじゃ……」
女の子に言い寄られたらクラっとするものだろうが(言い寄られたことはないのだが)、
宗谷だといつもの性格がアレなのでそれはない。針井もその「差」を知ってて、冷めている
のかも。でも宗谷自体は美人な方……かはともかく、結構グラマーだしなぁ(爆)
「そろそろ見切りをつけたほうがいいんじゃないか?」
「何言ってるのよ……あたいはシャノン一筋だからね」
こういうところは健気というか……返す言葉もないな、勝手にやってください。でもな……
やっぱり宗谷の恋は実らないだろうな、今日のさっきのシーンを見てかなり決まった感じ
なんだけど。好きな相手なら眠気よりも相手を傷つけないように言葉を選ぶはずだから。
校門は既に通り抜け、ほとんど落ちて茶色くなった木の葉を踏みながら校舎へ歩いていく。
宗谷の春もまだまだ遠そうだ……