優先


「……で、結局無理だったってわけか」

「だってしょうがないよ〜」

 今日は佑馬と久しぶりに佑馬の家でゲームで遊ぶことに。佑馬は面談を済ませていなかったが

時間的に早かったので待ってから一緒に帰ることに。まあ佑馬の好みは冒険RPGだが、俺も

ちょっとははまる対戦パズルゲームとかあるからな。でも一番やるのは本物の駒と盤を使った

将棋だったりする……7:3ぐらいで俺が負けるけど。

 で佑馬の家に向かっているのだが、話すことといえば先日の七希菜ちゃんとのデート話だった。

「あの日は曇ってたんだもん、僕の『夕日を見ながら……』って計画が〜(>_<)」

「……それだけじゃないと思うんだが……それに計画って」

 なんのことかといえば、どうってことはない、デートで佑馬が七希菜ちゃんとキスできたか

どうかの話だ。この会話を聞けばその是非はすぐわかるだろう。

「どうせなら雨が降ってくれれば相合傘もできたのになー」

「……はは、難しいもんだな……」

 最後のほうは佑馬に合わせて話してた感じなのだが……俺にはわからないが、彼女が出来たら

そういう風に考えるものなのだろうか。でも佑馬と七希菜ちゃんは「恋人宣言」する前から

付き合ってるって感じだったんだけど……

「今度はクリスマスまでお預けか……」

「そのときにできるとは限らんけどな」

「……それ言うなよ(T_T)」

 というか、クリスマスパーティなら皆で楽しもう、って言い出すのは七希菜ちゃんだと

思うんだけど。佑馬のために皆に協力してもらって……なんてのもアリかもしれないけど、

そうすると俺はクリスマスにすることがなくなる(--; 俺だって毎年楽しみにしてんだぞ、

彼女が焼いたケーキとか(笑)

「ま、話は置いといて……なんか新しいゲームでも手に入れたか?」

 もう道のりの半分を過ぎたので、将棋ばっかさせられないように持ちゲームを尋ねてみた。

「まあ前に来てからいくらか買ったよ……そういえばテツ、DQIV買う?」

 PSでリメイクされるやつだな、シリーズの中では俺も一番好きで、実はDQ好きという

共通点で佑馬とは仲良くなったともいえる。確か中1のとき、前年に出たVIの話で盛り上がって

たよな……

「当然買い、だな。一番リメイク期待されてるシリーズだからな」

「よし、じゃあどっちが早解きするか競争しよう♪」

「って一通りはFCのときと一緒じゃ……多分いる隠しボスを倒すまでっていうのは」

「うん、じゃあそうしよう」

 とまあ友達らしい会話が続いていると。 「佑馬君タイト君?」

 七希菜ちゃんが私服姿でどこか出かけてるところだった。この辺は彼女の家の近くだったな……

「タイト君がこの辺まで来るなんて珍しいね」

「ちょっと佑馬の家にね」

 面談が無くてクラブも休み?の七希菜ちゃんは俺たちより先に帰っていたようだ。そりゃ俺が

 家と正反対の方向に(「実家」でいえば順方向だが)制服のまま歩いてきてたらそう思うだろう。

「七希菜はどっか行くの?」

「ええ、近くのスーパーにお買い物に」

 近くっていっても……確か歩いて10分はかかるよな。いや走ってだったか?それに何を買うか

知らんが、彼女一人が荷物を持って帰るのは疲れることだろう。

 ふと佑馬のほうをみれば、なんだかそわそわしている。これは七希菜ちゃんについて行きたい

という気持ちがあからさまに見えるのだが……ま、手伝えるのはこのくらいか。

「佑馬、彼女をエスコートしてやれよな」

「え、いいの?さすがテツ、わかるなぁ」

 遠慮も知らず手をすり合わせる佑馬。それに対し七希菜ちゃんは驚いた表情で、

「え、タイト君はこれから佑馬君の家に……」

「いいって、どうせただの暇つぶしだったし」

「でもせっかくここまで来て……」

 まだ彼女は俺に申し訳なさそうに言う。こういうところを見ると、自分のことよりも他人を

思いやるいい娘だなぁと思うのだが、佑馬の気持ちもわかってやって欲しいよな。

「俺もこっちの方にまだ行くとこあるから、気にしなくていいって」

 適当に理由を作って七希菜ちゃんを納得させてみる。

「そうなんですか?それじゃあ……」

 疑うこともせず、彼女は佑馬と行くことになった。……って言うと七希菜ちゃんが佑馬と

行くのは本当は嫌そうに思えるのだが決してそうではない……はず。

七希菜 & 佑馬

「テツ、また埋め合わせするから♪」

 さらにご機嫌になって七希菜ちゃんと歩いていく。彼女はまだこちらをちらっと振り返ったが

……これでいいんだよな、友人としては。


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