「……早ぇよ(--;」
登校時、佑馬と七希菜ちゃんと出会い、佑馬は昨日DQIVをクリアしたとのこと。
俺はやっと5章で8人そろったとこっていうのに……なんか眼の下にくまができてないか?
まあ12月になれば期末テストだから、今のうちにやりこむのもいいかもしれないけど。
クリア後のダンジョンとか、あればね。
「でさ、クリアした後はね、なんと……」
「って言うなよ、面白くなくなっちまうだろが」
「ああ、ゴメン(^^;」
言いたくなるほどなことがあるらしいな……俺はのんびりやるか、なんたってDQIV以外に
やらなきゃならないゲームが増えたからな……俺にとっては苦痛のな。ふと視線を感じて
顔を上げると、俺と佑馬のやりとりを楽しそうに見ている七希菜ちゃんがいた。よく考えれば
俺たちガキっぽいよな……よく言えば純粋な子供の心を――って自分で言うもんじゃないけど。
「2人とも、仲がいいですね」
しみじみと言う七希菜ちゃん。まあ俺の一番の友達といえば佑馬かな。親友とまでは何でも
話せる仲では……あるか?結構恋愛の話したりするんだよな。今佑馬と七希菜ちゃんが
付き合ってるのも俺の助言があったりのことだったりして……当の本人はそういう相手は
いないのにな(泣)
「でも、佑馬と七希菜ちゃんの方が長い付き合いだろ?そっちの方が仲いいはずなんだけど」
付き合いといっても、この場合は「昔から知っている」という意味だ。わかるか。
「いえ、同性の友達として、ですよ。なんかそういうの、羨ましいな、って」
男の友情?そんな汗臭いものがあるわけでもないのだが、七希菜ちゃんはそういうのに
あこがれたりするのか。
「でも七希菜ちゃんだって、女の子の友達いるだろ?」
なんでもできる娘は女子からは疎まれがちだが、七希菜ちゃんに限っては見た限りでは、
男女関わらず人気がある。中学の時に同じクラスになったとき、休み時間によく彼女を中心に
女子が集まってたりするのを何度も見たことがある。
「そうだけど……『一番の親友』って人がいないんです」
……なるほど、友達はたくさんいても、何でも話せる親友はその中にはいないということか。
あれだけ友達がいたら、一人だけ構うってことが出来ずに八方美人になりがちなのか。
その点俺は友達少ない分、親友を決めるのは選びやすいからな。
「心配するなよ七希菜、悩み事なら僕が聞いてあげるから」
ちょっと暗くなった彼女を元気付けようと、彼氏の佑馬が声をかける。しかしそれほど
元気そうな顔にはならない。
「恋人はまた別物だろ……恋人のことで悩みがあるのを、親友に相談するとかさ」
よくあるようなマンガのシーンを思い浮かべながら独り言のように言ってみた。しかもその
イメージには俺が七希菜ちゃんの相談相手役になってるし。普通は同性の女の子だろ……
「でも、仲人を務めたという点では、2人の相談相手役になってもいいかもしれんな」
「……何が「でも」かわかんないけど……」
佑馬が妙な所にツッコミを入れるのが聞こえたが。
「『そういう場面』では、俺に尋ねてくれたらいいんじゃないかな」
半分は七希菜ちゃんをとりあえず安心させるためだが、もう半分は本当に相談に乗ってあげても
いいと思った。まあそれも今後彼女を悩まさせないということで結局は理由は1つだけなのだが。
「他人の不幸は蜜の味」というが、彼女を見てると、彼女が幸せだとこちらも嬉しくなってくる。
……これがいわゆる「癒し系」か?
「……いいんですか?」
おずおずと尋ねてくるが、すでに嬉しそうな顔が見えていた。それほど相談したい心配事が
あるのかな……俺なんか小さなことは一晩寝たら忘れる性質なのだが。
「僕も賛成!テツはいいアドバイザーだと思うよ♪」
佑馬からも太鼓判が押された。というか佑馬も俺並に友達があんまり多くないんじゃないか?
「じゃあ……お願いします」
七希菜ちゃんの顔が晴れると、寒空の下でも温まる感じがした。やっぱり俺も「七希菜信者」
なのかもしれない……当たり前だが、佑馬から彼女を取ろうなんて気はさらさらないぞ、
そんなことしたら毎日合わせる顔がないからな。それに「付き合うなら」俺と七希菜ちゃんの
性格は合ってないと思う。……今のままならな。