for Xmas


 冬休みまであと何日……と数えるようになったこの頃。朝の登校時、交差点で佑馬と

七希菜ちゃんを発見、声をかけようとした――が、なにやら様子がいつもと違うぞ?

二人とも困ったような顔をしながら話し合っている。邪魔しちゃ悪いかな、と思いつつも

無視もいけないので挨拶する。

「よう、おはよう」

「あ、テツ、いいところに」

 おはようも言い返さずに佑馬はそでを引っ張って俺を2人に近づける。なんだ、俺に関する

ことなのか?

「ちょっと七希菜を説得してくれよ〜」

 そうではなくて、同意見の人を揃えて多数決でって魂胆か?それは話にもよるし、七希菜

ちゃん側に付くことだって多々あるはずだ。そしてこういう場合は、大抵七希菜ちゃん側に付く。

「どうしたんだ?」

 俺が七希菜ちゃんに尋ねると、珍しく不機嫌そうに口をとがらせて主張した。

「クリスマスに、タイト君や他の友達と皆でパーティしたいんです」

「ほうほう」

「でも、佑馬君が……」

「僕はクリスマスは、七希菜と2人だけのパーティがしたいんだ」

 オイオイ2人きりって……まあ最近の高校生ならありえんこともないだろうが、この2人が

っていうのは想像しがたいというか……佑馬も大胆になってきたなぁ(苦笑)

「テツ、わかってくれるだろ?」

 大体の事情は察したが、つい「何が?」と言い返したくなるような……どうもこの雰囲気だと

俺の答えが2人の答えになりそうで、プレッシャーで聞かなかったことにしたいくらいだ(ぉ

佑馬の気持ちもわかるが、そうなると俺が七希菜ちゃんとのパーティを断わったみたいで

後味が悪い。既に彼女が他の友達とやらに声をかけたかは知らないが、その人たちも彼女の

料理なんかを楽しみにするだろう。それにそのパーティにもちろん佑馬も居られるんだから、

別にクリスマスでなくても2人きりで初詣でもすりゃ……やっぱクリスマスは特別なのか?

「……佑馬、ちょっと」

 俺は佑馬の肩に腕をまわして、七希菜ちゃんに聞こえないように小さい声で話した。

まあ別に聞こえても大丈夫だろうが。

「俺は七希菜ちゃんの意見を支持する」

「そんなぁ、テツまで〜」

 案の定佑馬は不満の声をあげる。でもこういうときは後一押しすれば佑馬から折れるんだよな、

この話の場合はそううまくいくかわからないけど……

「ほら、もう少ししたらバレンタインってのがあるだろ、そのときでいいだろ」

「……まだ2ヶ月もあるけど」

 ……確かに。しかしこいつ、2人きりになって何がしたいんだ?(爆)

「と、とにかく、ここは彼女の機嫌を取るためにも、譲ったほうがいいぞ」

 彼女に嫌われたくない、という思考が一瞬よぎったのか、身震いをしてこくこくうなずく。

「あのー、信号変わりましたよ?」

 男2人でコソコソしてるのに気を遣って(?)微妙な距離を開けて七希菜ちゃんが声をかけた。

そこで周りの視線に気付き、あわてて肩の腕をほどく。

七希菜 & 佑馬

「あ、ああ、佑馬もやっぱり皆でパーティしたいって、な」

「う、うん」

「本当?!ありがとう佑馬君、タイト君」

 そして笑顔。まあ何でも彼女の言うことが正しい、ってわけじゃないけど、やましいところが

一切ないのは確かだ。皆のことを思ってる時点でわかることだよな。

「じゃあタイト君、列戸さんにも声かけてくれるかな」

「瞳由ちゃんね、もちろん言っておくよ」

 クラスは違えど、やっぱり瞳由ちゃんと七希菜ちゃんは一番仲がいいように見えるな。

共通点は……俺と仲がいいってことか?

「それから、料理クラブの皆も誘おうかな……でも料理手伝ってもらうようになっちゃうかしら」

 誰を呼ぼうか考えている七希菜ちゃんは楽しそうだ。内気に見えるけど、結構社交的なんだな。

俺とは正反対だ(笑)一方佑馬はというと、まだちょっと納得してないところが見える表情だ。

きっと「七希菜は僕だけのものだ」という考えがあるんだろうな……正式に付き合う前なら

彼女の言うことは何でも正しい、って言ってたんだがな。見た目にはわかりにくいところで

人は変わるもんだ……

 空気も一段と寒さを増して、コートを着て登校する生徒も目立つようになった。クリスマス

パーティまで風邪をひかないよう気をつけないとな。っていつも気をつけなきゃならないことだけど。


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