初詣


「「あけましておめでとう!」」

 年賀状ですでに挨拶はしたが、当然実際に顔合わせしての挨拶も。瞳由ちゃん、七希菜ちゃん、

佑馬、俺の4人は近くの神社に初詣に来ていた。近くといっても瞳由ちゃんは「実家」から

来ているので、俺ら3人より遠いのではあるが。

「うっは、やっぱ毎年混んでるなぁ」

 佑馬が人の波を眺めつつそうもらした。神社といっても、鳥居から1歩でれば道路、なんて

ところもあれば、林の中に舗装されてない道があってそこを抜ければ神社、というのもある。

俺たちが来ているのは後者で、その「舗装されてない道」には出店がずらりと並んでいて、

人がただ行き来するだけではない。つまるところかなり大きな神社なのだ。

「すごいね、私こんな所に来たことが無い」

 初めて来た瞳由ちゃんも目を丸くして沿道を見ている。さすがに振り袖で来たりはしないか、

なんて思ってはいたのだが……確かに瞳由ちゃんは普通に厚着してきただけだが、七希菜ちゃんは

まさに振り袖だった。多分佑馬にリクエストされたのだろう。実際佑馬も紋付袴だったりする。

そりゃそういうの着てる人たまに見るけどよ……

「とにかく、神社に向かおう」

 

 俺は人ごみが苦手、というか自分のペースで歩けないのが嫌なので、スペースができると

迷わずそちらに入ってしまうので、他の人のペースを考えず先々進んでしまう。でも人の流れに

沿っていけば目的地は一緒なので大丈夫だろうと考え、結局鳥居のそばで他のメンバーを

待つこととなった。一番初めに現れたのは瞳由ちゃんだった。

「はぁはぁ……テツ君早いよ」

「ごめんごめん……あとの2人は?」

「……さぁ、前に進むのに夢中だったから」

 じゃあ俺と同じじゃん、とは口にしなかったが。しばらくしてしっかりと手を繋いだ2人が

見えてきた。七希菜ちゃんの手にはりんご飴が握られている。佑馬がおごったんだな、彼女が

欲しいと言ったかにかかわらず。

「皆さんの分も買ったほうがよかったでしょうか?」

「あ、気にしない気にしない」

「俺あんまり好きじゃないしな」

 賽銭箱の前は当然ながら一番人で混んでいる。空くのを待っても後から人は来るので

仕方なく並ぶことに。ふと見れば「後ろから賽銭を投げないでください」なんて書いてある。

そこまでして賽銭入れて拝みたいか、とも思うのだが。別に神さんはお金必要ないと

思うのだけどなー……

「それは、人がどれだけ信仰しているかの証ですよ」

 七希菜ちゃんが45円(始終御縁)を賽銭箱に入れるときにそう言った。俺らも習って45円

投げ入れる。その割にはちょっとダジャレっぽいし、安い金額なのだが。まあ昔の45円というと

大金なのかもしれないが。

七希菜 & 佑馬

 そして毎年恒例おみくじ。去年は「凶」なんか引いちゃって佑馬に笑われたりしたが……

その割には去年は何事もなく過ごせたような?要は気持ちの持ちようか、それとも当たらぬも

八卦か……

「おい、テツ引けよ」

「あ、ああ」

 今年は「末吉」だった。去年よりはマシか、でもこれでどうなるとか実際わかったもんじゃ

ないんだろうけど。あくまで気休めだろう。それならいっそ「大吉」ばっかにすりゃいいのに(笑)

「ああっ?!」

 突然佑馬がすっとんきょうな悲鳴をあげ、周りの視線を集める。

「な、なんだよ……もしかして『凶』?」

「……いや、『大吉』」

 ならいいじゃん、じゃあなんでそんな悲痛な顔するんだ?

「ほ、ほら、この『恋愛』ってとこ……」

 くじには全体運だけではなく、「学業」や「健康」、「失せ物」なんて項があって、

それぞれの運も1行書かれている。佑馬のくじの「恋愛」の項は、

『あきらめなさい』

と冷淡に書かれていた。そりゃ佑馬じゃなくてもショックだろ……もちっとソフトな言い方

ないかね。

「ま、まあ佑馬、当たるも八卦、当たらぬも八卦だ、気にするな」

「だから、当たっちゃ困るんだよ〜!」

「お2人は?」

 騒ぐ佑馬を尻目に、女性陣のくじものぞいてみる。瞳由ちゃんのは「中吉」、恋愛は

「言わぬが花」。七希菜ちゃんのは「小吉」、恋愛は「正直であること」だって。こういうのは

女の子の方が敏感だから2人してきゃっきゃ言ってるけど。俺もこっそり見てみると……

『伝えれば必ず結ばれる』

 ……えらく大きく出たな、必ずって……でも考えてみれば、黙っていても相手に気持ちは

伝えられないもんな、その点からいえば――くじというより忠告なんじゃねぇの?

最後におみくじを近くの木の枝に結ぶ。これって大吉以外を結ぶらしいけど、佑馬も結んでたり。

ま、あれじゃな……でも七希菜ちゃんが佑馬を裏切るようなことなんてありえんと思うけど。


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