修学旅行1日目


「搭乗時間だ、一列に並んで一般人に迷惑かけずに行けよー」

 担任の真面目だが気の抜けてる声で、待っていた生徒たちは動き出した。今日は修学旅行初日、

学校からバスで最寄の空港へ来ている。今から乗るのは新千歳空港への便だ。しおりによると

今日は向こうに着いたらバスでいろいろ見ながら札幌まで行き、そこで泊まる。明日メインである

スキー場があるところに行くらしいけど、何てとこだったかな……北海道の地名は独特で

覚えにくいんだよな。確認するにもしおりは荷物もろとも飛行機に積んじゃってるし。

 はっきり言って飛行機の中はする事がない……テレビやラジオがあるにしろつまらん内容。

ま、早起きした分ここでぐっすり寝るとするか。隣に友達でもいりゃ何かと話でも出来るが、

出席番号順で席が割り当てられてるので左側はよく知らん妹尾、右側は……窓。せめて一つ

ズレてりゃ多少は話が出来る武市だったのだが……本当に眠いからこれでもいいや。寝よ……

 

 まだ寝足りんが新千歳空港に着く。やっぱ寒い……気温、氷点下なんじゃねぇのか?

あたりも雪景色だし。ともかく荷物を持ってまたバスへ……俺たちは7組だから、

後ろから2番目のバスだっけな。適当に空いてる席に座ってボーっとしていると、どんどん

生徒が乗ってくる。そのうち瞳由ちゃんがやってきた。空いてる席を探しているうちに

俺と俺の隣の席が空いてるのを見つけた。

「ここ、いいかな」

「そりゃ、どうぞどうぞ」

 またバスの中で寝ようかと思ったが、今度は話をして移動時間を過ごせそうだ。バスが動き出す。

「ところでこれからどこに向かうんだっけ」

「えーと……」

 瞳由ちゃんはジャケットのポケットからしおりを出し、日程表をさがす。俺結構車とか

酔うほうで、まだ喋る程度ならいいが、本とか読みだすとすぐ気分が悪くなるからな……

彼女はそうじゃないらしいからうらやましい……

「あ、白老(しらおい)でアイヌの村を見学するみたいね」

 ああ、修学旅行前にビデオ見せられたな、アイヌの人たちについて。というか「アイヌ」って

「人」って意味らしいだから、「人の人たち」って変な意味になるけど……それは置いといて、

最近まで変な法律のせいで差別を受けていたとか。その辺の事情をよく知らない俺たちが言うのも

なんだけど、どうして昔の人って弱い者を作りたがろうとするんだろうな、見た目や住んでる

場所で勝手に。

「でもそれは、私たちがそういう風な差別を受けてないから簡単に言えてしまうこと

 なんだろうけどね」

 瞳由ちゃんの意見にも共感。しかしなんだな、ゲーセンによく行ってるとどうも、

某おしおき巫女を思い出してしまうのは俺だけではあるまいな……(苦笑)

 千歳から苫小牧(とまこまい)まで、それと同じくらいの時間をかけてバスは白老へ。

「ポルトコタン」ってとこが見学する所らしい。家とかやっぱり藁ぶきで、こんなので

寒さを防げるのかなと思うほど。それともアイヌの人たちは寒さに強い体なのだろうか。

生えてる植物には皆アイヌ語の名前が付けられたりしているんだが……冬だし雪だしで

見れるわけもなく。こういう時期に来るのは失敗なんじゃないか?修学旅行自体についても(ぉ

 生徒全員が入れるくらいの大きな家で、アイヌの人たちが歌と踊りを披露する。こう見ると

やっぱり普通の民族の1つで、卑しめる点は一つもないと思うんだがなぁ……言葉は違うけどさ。

瞳由 & 十子

 やがて出発の時間になって、バスに乗り込む。眺めていたポルトコタンがどんどん遠ざかっていく。

「踊ってた娘、かわいかったよね、服装や踊りも」

 瞳由ちゃんもいろいろ見た模様。そりゃあんな若い娘もいるとは思わなかったけどな。

「瞳由ちゃんもあんな格好してみたい?」

「うん、でもこんな寒い所で暮らすのはちょっと……ね(^^;」

 本当に寒い。バスの中は暖房が効いているとはいえ、外は相変わらずの雪景色……降って

ないのが救いか、降ってたら移動するにも困難になるからな。バスは北上し、支笏湖(しこつこ)を

かすめて一路札幌へ。北海道は日の入りも早いからすぐに真っ暗。他校の修学旅行なら札幌で

自由散策、なんて事もあるんだろうけど。俺たちはそれが目的ではないのでおとなしくホテルへ。

先生方、ススキノ行ったりしないだろうな?

 明日はいよいよスキー場だ。ぐっすり寝て体力温存しとこう……


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