修学旅行2日目


 ニセコはスキー場の多いところらしい。というわけで俺たちの高校はニセコのあるスキー場で

スキー体験学習をすることになった。ところでなんでニセコって常にカタカナなんだろうな、

漢字はないのか?まあこの方が共感持てる……と思うのは俺だけだろうか(苦笑)

 昼過ぎにバスは目的のロッジに到着する。今日を含めて3日間、ここでスキーを楽しむわけだ。

俺はスキー未体験だから、インストラクターの方の話をしっかりと聞いて、失敗して恥かかない

ようにしないとな。佑馬と七希菜ちゃんもスキー初めてらしいが、瞳由ちゃんは何度かやった

ことがあるらしいから羨ましい。もっと家族で旅行する機会が多ければよかったのだが、

親父があれだけ忙しいからな……俺自体も旅行がそんなに好きなわけでもないし。

 とやかく言うよりまず体験。スキーウェアに身を包みスキー板を履きストックを持つ。

順番にリフトに乗り初心者用の高さまで……ここで腕に自信のある生徒は体育教師らと

上級コースへ。その中に瞳由ちゃんらしき姿も見えたような?ああなりたいが2・3日で

上達するなど無理なこと、俺らは俺らでゆっくりすべろう……

 

「うわ、うわわわわ!」

 ずしゃあああ!

 インストラクターの話をよく聞いてなかったのか、はたまたただの運動音痴なのか、

盛大にひっくり返って雪まみれになる佑馬。ゲームや将棋ばっかやっててスポーツあんまり

しないから……俺もか。かく言う俺はなんとか真っ直ぐ滑っているが、気付かれない程度に

ボーゲン(内股)だったりする。

「はぁ……タイト君上手ね、本当に初めて?」

七希菜 & 佑馬

 前をよたよたと滑っていた七希菜ちゃんを追い抜いてから声をかけられる。ええと止まる

ときはどうするんだっけ……忘れた(汗)と、とにかく板を横にすれば……思い切って体を

90度回転してみると

 ズルッ!

「ぬわっ」

 勢い余って前方へつんのめる形で横から倒れこむ。自分から倒れて止めるよりかっこ悪……

とにかくすぐに身を起こした。目の前で七希菜ちゃんがゆっくりと止まる。もともとボーゲン

だからスピードがないので止まりやすい。そうか、ボーゲンにして止めればいいのか(違?)。

「あ、ごめんなさい、気が散った?」

「いやいや、こんなの人のせいにできないよ」

 顔についた雪を払いつつ苦笑い。そこへ佑馬がクタクタになりながらストックを杖代わりに

やって来た。斜面の歩き方くらいは誰でも理解できるよな、板を横にしながら歩くってこと。

「……僕には無理っぽい……」

「おーいまだ初日だぞ、それに他にも同じくらいのレベルの人いるし」

 貸切かどうかは知らないが、周りはうちの生徒ばっかりが見えるが、あちらこちらで

雪にうずもれてるのが見える。そもそも俺らの高校って運動クラブ少ないから自然と運動下手が

揃ってるんじゃ……とりあえず俺はちょっとだけマシなほうみたいだが。

「テツ、コツでもわかったの?教えてよ」

「コツっていうかなぁ、まあ心掛けてることといったら……」

「私にも教えてくださいね」

「……本当は僕が教えたかったのに(>_<)」

「お前は七希菜ちゃんより下手だろ」

 

 数時間後には、七希菜ちゃんはさっきの俺くらいに滑れるようになっていた。佑馬は……

さっきの七希菜ちゃんくらい。つまり角度の広いボーゲン(笑)やっぱ男がそれはちょっと

見た目かっこ悪いよな……俺はあれからインストラクターに止まり方をもう一度教えてもらって、

なんとか様になってきたようだ。「初心者にしては飲み込みが早い」って言われたし。

というか昔から要領がよかったからなぁ、勉強時間の割にテストの結果よかったとか(^^;

 しかしやっと滑るのが楽しくなってきたとき、今日のスキーの時間はお終い。そりゃ既に

こんだけ暗くなってたらな……夜のスキーっていうのも楽しみたいが、先生が許してくれない

だろうし(先生自体はするかもしれんが)、まだ初心者だし、それに天気が変わって大雪に

なったら危険だし。滑り終わったら素直にスキー板を外し、ロッジまで歩いていった。

「タイト君ありがとう、ちょっと自信がついちゃった」

 丁度歩いていた七希菜ちゃんと満身創痍の佑馬と並ぶ。

「七希菜ちゃんも素質があるんだよ、普段はスポーツしてないだけで」

 『体育以外はオール5』って佑馬に七希菜ちゃんの通知表を見せびらかされることが多いが、

それほど鈍いってわけでもないがやはり並みの女の子という感じである。何でもできる娘よりも

何かが苦手なほうが可愛らしいとは思わないだろうか。でもそれもあと2日もすればスイスイ

滑れるようになりそうだな……ま、俺もだけど。

 今日は疲れた……ぐっすり眠れそう……


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