修学旅行4日目


 なんか騒がしいまま目を覚ます……部屋の他のクラスメイトたちは既に起きてなにやら窓の外を

見ながら何か話し合っている。俺も起きるか……筋肉痛は昨日よりもマシになっていた。というか

昨日はあおいちゃんに教えてたからそんなに滑らなかったからな。

「おはよう……どした?」

 この中では一応一番親しい武市に声をかけてみる。

「あ、おはようタイト君……コレ、すごいよ?」

 なんか楽しいそうに言うのを聞きながら俺も窓の外を眺めると……大吹雪。本当に真っ白。

そりゃあ北海道だからなぁ、コレくらいは降るものなんだろうけど。

「あー……これスキーできないんじゃ?」

「そうだよねぇ、どうするんだろ……」

 北海道に来て4日目、さすがにもう雪は見飽きた。だからといってこんな小屋の中で

じっとしてるのも息が詰まる……

 

 朝食時の先生からの連絡によると、「しばらく待機」。天気予報によると昼前には雪は止む

模様とのことだが、この吹雪の勢いはなかなか止みそうにないぞ……それに最近の天気予報って

アテにならんし(ぉ 仕方なく佑馬のいる部屋に遊びに行こうかと廊下を歩いていると、

向こうから歩いてくる女子生徒が。

「お、宗谷、おは……フッ!」

 いい切る前に変なものが見えて思わず吹き出してしまった。宗谷の目のあたりは白いのに、

そのさらに外側はちょっと焼けてて、その境がくっきり見えて逆パンダみたいになっている。

巫琴

「笑ったね!?」

 怒った顔で迫ってきても境が消えるわけでもなく。昨日は晴れてて、日光の雪への照り返しで

冬でも日焼けしやすいんだっけな。多分いっちょ前にゴーグルでも付けて滑ってて、目の周りだけ

焼けなかったのだろう。

「いや悪ぃ悪ぃ……結構滑りなれてんじゃない?ゴーグルまで用意して」

「……まあそうだけど」

 本当は睨み付けたかったのだろうが、宗谷にとってそれは「自滅行為」なのでできないの

だろう、きまりが悪いまま引き下がる。

「俺は初心者コースにいたけど会わなかったしな。そういや針井も見なかったけど、やっぱ上級者?」

「当然でしょ」

 どこからその自信が出てくるのかわからないが、まるで自分のことのように針井を語りだす。

「なんせ先生よりもインストラクターの人よりも華麗な滑り魅せてくれたからねぇ。

 シャノンは何をやっても様になるから……」

「……おーい」

 またも妄想モードに入ったのかと思い宗谷の目の前で手を振ってみる。思ったより早い反応で

手を払いのけようとされる。

「……何すんのよ」

「いや、まだ針井萌えなのかと思って」

「萌えってアンタ……」

 確かに男に萌えは変か。つーか萌え自体が変なのか(^^;

「……そりゃすぐにシャノン離れはできないわよ」

 無理して離れなくてもいい気はするのだが……針井も悪い奴ではないし。宗谷の場合は

依存しすぎたという意味だろうが。

「別にいい男がいたらそっちに移れるかもしれないけど、そうシャノンよりいい男なんて……」

「それにそっちに移ったとしてもまたベタベタして嫌われたりな」

「別にシャノンには嫌われてないわよ!!」

 やれやれ……そろそろ話にも点かれてきて窓の外を見る。相変わらずの猛吹雪、本当に

止むのか?まさかこのまま明日まで降り続いて、予定の飛行機に乗って帰れないとか……

「……男の人ってそんなにベタベタされるの嫌なの?」

「それは人によりけりだろ、男にも女にも。まあ俺はちょっとおしとやかな方が好みかな」

 多分一般的な男は昔から言われてる「女の子らしい」女の子に興味を引かれるのだと思うけど。

最近の女の子はいろんなタイプが増えたからなぁ……その分いろんな男も増えたけど(謎)。

「ふーん……じゃああんたはあたいようなのはタイプじゃないと」

「いやぁ、そういうわけじゃ……」

 思わず反論しかけて、自分で何を言おうとしたかに気付いて口ごもる。そりゃ宗谷は暴力的

だし、針井ひいきだし、俺のタイプとはかけ離れてるはずなんだけど……全く好きじゃない、

と言い切れないのはなぜだ……俺が宗谷の弱い部分を見たことがあるからか?タイプとか、

そういう定石みたいなものは通用しないものなのだろうか、こういうものって……

「な、なに黙ってんのよ」

 俺の反応に宗谷も意識してるんだろうか。それとも俺が勝手に思い込んでるのか……

こういうの俺には身がもたん……

「あー……針井の部屋に行くか、トランプでもしよう」

「なんでトランプ?別にいいけど……結局シャノンじゃない」

 

 結局雪は夜まで降り続き、無駄な1日を過ごしてしまった。トランプはといえば針井の

一人勝ちだったし。ラスベガスでも行きゃすぐに大金持ちになりそうなくらいにな……


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