BECEとLUIS(前)


 今日、いつものゲーセンに行くと5鍵の7th MIXが。しかしちょっとやっただけで終わらせる

(そんなに期待するものでもなかったし(ぉ)。今日はここに遊びに来たのではない。この前

新しく出来たというゲーセンへ、美鳥と一緒に行こうと約束した日である。時間までいつもの

場所でマッタリしていると。

「お待たせ〜」

 時間通り、美鳥はやってきた。美鳥がその新しいゲーセンの場所を知っているから案内も

兼ねてもらわないとな。

 ゲーセンを出て徒歩。お互い自転車でもよかったのだが、そんなに遠くないらしいし、

時間も余裕があるのでと、美鳥の提案だった。行く途中は美鳥のDPクリア報告。

単発でDP ABSOLUTEをクリアできるようになったらしい。交互打ちのところでどれだけ

回復できるかがクリアに関わってくるもんな。

 2・30分ほど歩いているうちに例のゲーセンに到着。いつも行っているところよりちょっとだけ

大きい建物に見える。そして中を覗くと、音楽ゲームがかなりの割合を占めていた。コナミ

だけじゃなくてVJとかもあるみたいだけど(笑)。

「美鳥はここによく来てるのか?」

「ううん、1度だけ……なんか一人じゃ入りづらくって」

 新しいゲーセンは客が大勢いるだろうから、なかなか自分の番が回ってこないだろうな、

そんで回しうちとかする輩も出てくるだろうし。その辺は堂々とした態度でいないとな。

まあ同じ音ゲー同士でそんな奴らがいるっていうのも悲しい話だが(?)

 店内に入る。いつものゲーセンより確かに客は多い。でも開店間際からは少なくなったと

いう感じだ。パッと何があるかと見れば、3つ並んでギター・ドラム・キーボード、

ポップン・DDR・IIDXがそれぞれ2台ずつ、5鍵も2台あるが片方はIII筐体だ。

あとPARAPARAもあるなあ……全部の台に最新作が入っているようだ。それで今日は一応5鍵7thが

出てすぐということなのでそこに人が集まり、IIDXのほうは2・3人となっている。

「5鍵はやらないの?」

「客が空いたらやってみるよ」

 結局やるのはIIDXということになる。しかし新作でも1PLAY 100円というのは嬉しいなぁ

(6th styleはもう新作って感じでもなくなって来てるが)……久しぶりに7keyでやってみる。

最後にHolic(A)をやってみたが、同時押しでなんとかごまかしてみるが70%……多分10回やれば

1・2回はクリアできるようになってるんじゃないだろうか。最近この曲練習してないからな、

家庭用は美鳥に貸しっぱなしだし……そんなことで責めたりはしないけど。

 "FAILED"の文字が出てるところで連打してると、

「……美鳥?」

 俺ではない、別の男の声が彼女の名前を呼んだ。知り合いでも来てるのか?と振り返ると……

どこかで見たような男の姿が。眼鏡をかけてて……あっ、dj LUIS!!やっぱりというか、

このゲーセンにも来ているのか。……それはいいとして、この二人、面識があったのか?

俺が尋ねようとしたのだが。

「……だっ、誰ですか?」

 美鳥は彼を見て知らない素振りを見せた。何だ?昔合ったきりとかでばったり再開したとか

……でも俺も前にLUISさんのこと聞いたことがあるよな、あのときはとぼけられたけど……

よく見てみれば、今の美鳥はあのときの表情に似ていた。

「何言ってんだよ、一緒にビーマニしたじゃないか」

 やっぱり向こうは美鳥のことを知っているようだ。というか一緒にビーマニって……彼と

ビーマニできるなんてすごい羨ましいことなんじゃないのか?!……まあ専らDPか、片手SP

なんだろうけど。

「……しり、ません……!」

美鳥 & dj LUIS

 しかし美鳥はそういうと、いきなり出口のほうへ駆け出して行ってしまった。オイオイ俺

ほったらかしかい……でもこれで分かったのは、美鳥はLUISさんに対して辛い思い出を持って

いるということか。例えば失恋とか……

「あの……LUISさん」

 俺は思い切って彼と話をしたくなって声をかけた。ビーマニの話もしたいが、今日はもちろん

美鳥のことについてだ。

「君は……美鳥の連れか?」

「はい、タイト テツって言います」

 向こうがdj NAMEなのにこっちが本名ってのも変な話だが、彼はそっちのほうがしっくりくるな。

「美鳥と何があったか、話してくれませんか」

 何があったかって、どれほど親密な関係になったのかを聞きたいのじゃなくて、別れ際の話だ。

いくら元彼だったからってあんなに逃げることないじゃないか……よっぽど好き合っていたのに

なんで……と思ってのことだろうか。

「……タイト君は、彼女のことを大事にしてくれる?」

「え?」

 LUISさんがこんな事を言ってきた。もしかして俺と彼女が今付き合ってると思ってるのだろうか

……その真偽はともかく、「他言しないで欲しい」という雰囲気は十分に伝わってきた。

「……わかりました」

「じゃあ……とりあえず別の所へ行こう」

 既に美鳥が出て行った出入り口から、俺たち2人も外に出た。


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