昼餐


 3日目のテストが終了した。明日でテストも終了だ。これで終わりだと思うと、勉強する気力も

少しは回復する、か? とりあえず今は、食堂で昼飯を食って体力回復だ。食堂に行ってみると、

いつものとおり佑馬も既に来ていた。

「あと明日だけだなぁ」

「そうだねぇ」

 当たり前な言葉でお互いを励ます。まあ二人とも悪い方でもないのだが、やはり勉強に対する

気力面では常人より劣るのかも。

「今日大変だったんだぜ」

 二人向き合って座って昼飯を食ってると、佑馬から話を振ってきた。だがその台詞は今までの

流れと大して変わってないように聞こえた。つまり、テストのことだ。

「俺は1日目も2日目も大変だったぞ」

「そうじゃなくって、七希菜がさ」

「……何かあったのか?」

 今日も登校時に3人一緒になったが、別に変わったところは見受けられなかったが。佑馬ほど

じっくり観察しないとわからないのだろうか?いやそれは怪しすぎるか。

「今日の1時間目、現国のテストだったろ?」

「ああ」

「小説の長文問題で、戦争ものがあったよな」

「確かに……ってまさか」

「あとで七希菜のクラスの子に聞いたんだけど、傍からわかるほど顔が蒼ざめたんだって。

 先生は保健室に行くことを勧めたけど、我慢して3時間目まで耐えたらしいよ。もっとも、

 その頃までには顔色は元に戻ったって話だけど」

 またそれですか……確かにあの文章はやけに生々しかったが、文章でもそこまで気持ち悪く

なるのかい……絵の少ない本をたくさん読んでる彼女だけに、想像力も人一倍なのかもしれない。

七希菜

「全く、先生も問題を考えてくれよな」

「ツッコむところはそこかい」

 思わず俺がツッコんでしまったが。ちなみにこの会話は普通のボリュームで話している。

佑馬の七希菜ちゃんへのノロケ話もここで何度も聞いた(聞かされた)が、周りの人にも聞こえる

声の大きさで喋ってしまっている。それで2人は付き合ってるのでは、というウワサが流れて

いるわけだが、それでも佑馬が直接彼女に「告白」していないわけだから、本人はまだだと

言い張る。やっぱ現状維持は納得がいかないのか。じゃあ何を求めるんだ?

「そんなに心配だったら、はやく一緒になっちまえよ」

「きゅ、急に……でも、もうギリギリかもね」

「? 何が」

「3年になったら大学受験だろ? みんなできる限り上を目指すだろうから、七希菜の目指す

 大学には僕は行けないかもしれないし」

 そうか、高校生活で自由なのは2年、長くても3年の今ごろまで、(早い人はもう始めてるかも

しれんが)それからはどう考えても勉強生活になってしまいそうだし(俺の場合は、新作ビーマニに

つられてしまいそうだが)。

「だな、夏休みに2人で思い出作ってこいよ」

「告白がO.K.だったらだけどね(*^^*;」

 前に彼女に佑馬への気持ちを聞いたことがあるが……恋人同士になってみたら、初めて

わかるものかもな。何をもって恋人なのかは知らんが。

「僕が落ち着いたら、テツの方も全面バックアップしてやるからさ♪」

「な……だから、相手がいないって……」

「つーかさ、最近急にモテてない?女の子と一緒にいるのをよく見かける気がするんだけど」

 そんなことは……あるかも。今まで女っ気のない高校生活だったのに(七希菜ちゃんがほとんど

唯一みたいだったのに)……なんか星のめぐり合わせか?それともこの頃になると女の子の方が

人に親しく接してくることが多いんじゃないか?俺だけでなく。佑馬がそう思うのは、あまりにも

七希菜ちゃんにべったりしてるから、遠慮してるというか、気持ち悪がられてるというか……

「フタマタとかするなよ(笑)」

「あのな……お前が一途すぎなんだって」

 否定しなかったことは触れないことにして。まあ「あの娘は俺に惚れてるナ」とか勘違いは

しないように努力しよう。しかし逆に、俺が自分に惚れてるんではないか、と思ってる娘も

いたりして。どちらかと言えば……愛されるよりも愛したい派なのかなぁ、俺は。


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