俺がマンション借りて住んでからは、妹ひとりじゃ危ないんで親父も家で仕事するように
なったが、まあその親父に電話して、今日家に帰ることを伝える。また補習があるのは最後の
1週間だけだから、それまで家でゴロゴロするか。……っと、バンドクラブの合宿もあったな……
携帯の番号は教えてあるか連絡もらえるだろうし。
もって帰るものを探してみたが、あまり見つからず。家の方がいろいろあって持って来たい
ものもあるけどな……適当に部屋を片付けて時計を見る。12時前か、そろそろ飯どき――って、
冷蔵庫の中全部処分した(食った)からなんもねぇや……こういうときこそコンビニだな。
「あっ、テツ君」
コンビニで品定めしているところで、不意に瞳由ちゃんの声がした。まあそれだけなら別に
不自然ではないのだが、彼女が声をかけたのは、スタッフ用出入り口から出てきたところだった。
「……何でそこから?」
疑問をそのまま口にしてから、ちょっと失敗だと思った。ほら、最近のコンビニってトイレ
貸してくれるとかさ……が、彼女は恥ずかしがる反応もなく答える。
「明日からこの夏休みの間、ここでバイトさせてもらうことにしたんだ」
俺たちの高校は別に先生とかに言わなくてもバイトは自由。でも俺は面倒だし、人と話すのも
苦手だし、金にも困ってないから(ぉ 今まで何もしていないのだが。アメリカの高校生って
バイトするのが普通とか聞くけど、もう日本でも珍しくはないのか?
「へぇ……何か買うものとかあるんだ?」
「ん〜、特に……社会勉強、のついでにお小遣い稼ぎかな(^^;」
社会勉強か……なかなか痛いところをつくなぁ(謎)。彼女なら別にそんなことしなくても
誰とでもつきあっていけそうなんだけどな。だってこの俺とでも仲良く話せてるんだから(苦笑)。
「テツ君は何かしてる?」
「え?……ああ、何も……」
「じゃあ家族の方に帰るの?」
「ま、ね。……瞳由ちゃんは帰らないのか?」
「親は心配してるんだけど、せっかく一人暮らししてるんだもの、有意義に暮らさなきゃ」
やっぱ女の子は心配されるんだよな、俺の親父だって、妹の一人暮らしが駄目だからって
自分が家に帰ってるんだから……まあ妹はお父さんっ子だから一人暮らししたいなんて言わない
だろうけどな。
適当に買ってから、瞳由ちゃんと一緒に帰る。彼女は家で昼を作るらしい。
「ホントに帰っちゃうの?」
「……こっちでいても遊んじゃうだけだし。向こうもか。」
家のほうにはIIDXは無いけど。家庭用は貸してるし。まあPS(1)で某RPGでも久しぶりにやるかな……
「寂しいなぁ……」
彼女の何気ない一言に、「え?」の言葉すらも出ないほど驚いた。だって俺がいなくなるから
寂しいって……そりゃ俺だって佑馬みたいな男友達だって1ヶ月も会わずに遊んでなきゃつまらん
とは思うけどな(ちなみに、俺の家・中学・佑馬の家・高校の位置関係がほぼ一直線で、自転車で
25分・15分・10分なんで、家に帰ると40分も漕がなきゃならんので滅多に遊びに行かない。
なんか説明くさいな……)、異性に対して寂しいって言うのは……別の意味合いなんじゃ……
「せっかくみんなで海とか遊びに行きたいな、とか思ってたのに」
……ああ、みんなで、ね……みんなっつーのは佑馬と七希菜ちゃんのことだろうけど。そういや
二人が付き合いだしたのって瞳由ちゃん知ってたっけ?まあ初め2人に会ってからそう思ってた
かもしれないけど。しかし、海も何年も行ってないな、どうせ人で混むものだから面倒だとは
思っていたが……
「いや、俺も海に行くよ」
「本当?! でも帰るんじゃ」
「別に必要性は無いし。俺もこっちで居るよ」
どうせ家に帰っても、妹の宿題を手伝わされるだけだし(親父の原稿の手伝いはキッパリ断わるが)、
やっぱ友達とよく遊べる方が俺にとって有意義だしな。それに……瞳由ちゃんもいるし。
「そうと決まりゃ、今日の晩飯の材料買わないとな」
「あそこのコンビニでも野菜とか売ってたらいいのにね」
「そりゃもうコンビニとは言わんような(^^;」
「……ああ、気分が変わって、やっぱ居ることにしたよ。……セイが?……もうガキじゃ
あるまいし……」
帰らないことを親父に電話したら、妹は俺が帰るのを楽しみにしてたんだって。あいつ
お兄ちゃんっ子でもあるからな。そんであんまりお兄ちゃんお兄ちゃん言うもんだから、
俺がそう呼ばせてるように思われたりもしたんだぞ(爆)。ある意味帰らなくて正解かもな……