海!


 今日は学校に行く日でもないのに目覚ましの音で朝を迎えた。まあ寝過ごしても起こしては

くれるだろうが、それ以前に楽しみで目が冴えたというのもあった。確かに海は久しぶりだが、

海に行くこと自体を楽しんでいるのなら小学生だ。同い年の友達らと(保護者なしで)遊びに

行くことが、高校生の楽しみでもある。

「テツくーん、用意できた?」

 持ち物の最終チェックをしているところで、丁度瞳由ちゃんの迎え。といっても駅まで徒歩で、

そこで佑馬と七希菜ちゃんと合流して、電車で海岸までいくのだが。

「ああ、今出るよ」

 最後に家の鍵を忘れずに手にとり、鞄を肩にかけた。

 

「おじさんの家の近くの海岸は、人があまりいなくてきれいなのよ」

 電車の中、瞳由ちゃんは俺たちが向かう場所の説明をしてくれる。お盆の帰省でちょっと

混んでるため、女性二人を座らせ佑馬と俺はつり革を。俺はあまり電車を利用しないのだが、

立つことには別段疲れることは無い。まあ行きだけで疲れるなんてみっともないこともできんし。

「でも、本当に泊めてもらってお邪魔じゃないかしら……」

 相手のことを気遣う七希菜ちゃん。実は1泊2日で、その瞳由ちゃんのおじさんのところに

泊めさせてもらえるとのこと。確かに知り合ってまだ4ヶ月くらい、しかも男もいるのに

そこまでしてくれるのは人がよすぎる。

「本当はね、私のいとこが、友達を見たいって言うもんだから」

 いとこか……多分女の子なんだろうが――そういや俺って親戚少ないよな……まあ多かったら

「タイト」姓がもっと出回ってるってことになるんだろうけど。

「あっ、海が見えてきたよっ!」

 七希菜ちゃんと海へ、っていうのもあるが、海自体も好きな小学生の佑馬。電車からだんだんと

近づいて見える海の風景は確かに風流だけどな。

 

 その海岸は、賑わいすぎてもなく寂れてもなく、俺には丁度いい人口密度だった。ただ

この直射日光は、海パン1つでは肌に痛い。別にシミ・ソバカスを気になどはしないが、

妙な焼け後が残るのは遠慮したい。でもまわりは皆水着姿なので、合わせるしかないのだが。

「こっ、これなら泳ぎまわれるねっ……久しぶりに勝負しようか」

 佑馬、台詞がぎこちないぞ……多分もうすぐ出てくる七希菜ちゃんの水着姿に動揺しないよう

話題をそらしているんだろうが、お前は別に動揺してもいいんじゃないか?俺の方が変な見方

しないようにしなきゃいけないが、これだけこいつが動揺しているのをみると逆に落ち着いて

いられるというものだ。そしてそろそろ後ろから瞳由ちゃんらの声が……

「お待たせ〜」

瞳由 & 七希菜

 ……………………

 ビキニかよ……(爆)

 ……七希菜ちゃんが無難なワンピースなのは予想はついていたんだが……つーかできるだけ

想像しないようにしてたためこれは予想外もなにもありゃしないのだが……ま、まあ最近の

若い娘はみんなそうなんだろうし?別に彼女が慣れてるならそれでいいんだけど……

「な、なに照れてるんだよ」

 ひじで背中をつく感触が。佑馬も七希菜ちゃんの水着姿を見入っているが、「冷静に考えても

俺の方が動揺してる」という矛盾した事実が見えてくる……

「う、うるさいな……」

「海に入る前に、コレで準備運動しよう♪」

 比較的空いている場所を見つけてビーチバレー。出来るだけボールに集中しようとするのだが

やはり健全な男、どうしても見とれてしまう……さすがにボール顔面直撃ということは無かったが

(佑馬は2度ほどしやがったが)、なんどもラリーを中断することに。それ以前にバレーが得意じゃ

ないってのもあるけどな。

 それでも一汗かいたあとは海中へ。直射日光に加え運動後で煮えたぎりそうな熱さを感じながら

海に入るのは、氷風呂に飛び込むみたいに一気に冷えるものだが、首まで入ると逆に温かい。

まだこっちの方が顔しか見えないから落ち着く……

 その後はさっき言ったとおり佑馬と競泳。オーストラリアの選手ほどではないが佑馬を大きく

抜いて勝利。まあこれでちゃんと泳げるってことは見せられたよな。ってほとんどの人は泳げる

もんだが。

「テツ君速〜い!」

 スタート地点だった場所で瞳由ちゃんと七希菜ちゃんが手を振り、こちらに泳いでくる。

後からゴールした佑馬がなにやら神妙な面持ちで寄ってくた。

「……もえたな」

「萌えるのは2Dキャラだけにしとけ」

「……燃え上がるよな」

「そっちか……つーかある意味やばいぞ(汗)」


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