役割


 いよいよ学園祭に向けて本格的に準備が繰り広げられている。俺たちのクラスはお化け屋敷を

作るつもりなので、校舎の端のあまり使われない特別教室を借りて今コース作りをしている。

机を並べてその上にカーテンをかけて向こう側を見えなくするとのこと。カーテンが足りなく

なるので窓をふさぐのはダンボールで代用するとか。誰かが勝手にカーテン開けたりしない

ようにもな。

「おお、結構できてるな〜」

 担任の先生が入ってきて、作業状況を見て感心している。まあこのクラスは室長・綿貫が

かなり指示を得ているから、まとまりにかけては学年トップかもしれない。その中で俺は

ちょっと浮いているのかもしれないが……

「そろそろ休憩せんか、ジュースでも買ってきたらどうだ」

 先生は封筒みたいなのを持って俺に近づいてきた……ってなんで俺?

「タイト、会計係だろ、ちょっと買ってきてくれんか」

 会計係……4月に1人1役とかで何かの係を選ばねばならなかったのだが、一番やることが

なさそうな会計係を俺は選んだ。だがここで回ってくるとは……その封筒には学級費が入っていて

それで買って来いとのこと。買出しなんて(しかもほとんどパシリ)どっちかというと面倒だったが

「……わかりました」

 とにかくここは密閉されてて蒸し暑いのだ、エアコンもついてないし。外へ出られるというのは

嬉しいものでもあった。お化け屋敷が蒸し暑いのは変だと言ったら、当日は巨大な氷を用意

するらしい。大丈夫なのか……?

 

 で、近い店といえばいつも寄るコンビニ。白猫の「ライト」が人気を呼んでいるとか。

さらに言うと俺もそれに一役買ってたりして……

「いらっしゃいませ……あら、テツ君じゃない」

 カウンターから挨拶したのは店員は瑠璃絵さんだった。ライトは……カウンターの上で

眠っている。そりゃ男の俺が見ても、かわいいと言うしかないだろ……猫がいるコンビニって

いうのも珍しいし、客どころかニュースにまで取り上げられたりして?

「学校の時間じゃないの?」

「ああ、学園祭の準備で、ちょっと買出しにね」

 そういう瑠璃絵さんはバイトもいいが大学行かなくていいのだろうか、とは思ったがそれは

さすがに口には出さなかった。大学よりも歌手デビューのためのバイトが大事なのだろう。

……単位落とさなきゃいいけど(汗)。代わりに、

「それにしても、この時間でもバイトしてるんだ、てっきり瞳由ちゃんと同じ時間帯(夕方〜夜)

 だと思ってたけど」

「初めはそうだったんだけど、この子が来てからもっとここに居たくなっちゃって」

瑠璃絵

と言ってライトを撫でた。それほど……やっぱ猫は愛玩動物だよな、と思う。そういえば

瞳由ちゃんも、学園祭終わるまでのバイト期間の予定を延長するらしい。猫のための延長と

聞いて店長も快諾してくれたようだが。そこまでするなら、初めこいつを見つけてきた俺に

割引券とかくれてもいいような気もするが……そこまででしゃばれもできず。まあ金に困ってる

わけじゃないからいいけどさ。

 ボトルのジュースを何本か買って……っと、紙コップも忘れずに。そして精算を済ます。

当然レシートは捨てられないな(苦笑)

「いよいよ10日を切りましたね」

「俺たちバンドクラブの演奏日ですね、瑠璃絵さんが歌う……」

「やっぱり多くの人に聞いてもらったら、デビューって近くなるのかな」

「どうだろ、あんまり詳しくないから……スカウトする人が巷での人気を聞きに回っていたら

 評判を耳にするかもしれないけど」

「……難しいね(^^;」

 買ったものを袋に入れて手渡してもらう。あんまり遅くなってもいけないからそろそろ退散

することにした。帰りに俺もライトをなでる。ライトは起きていて、背伸びをしているところ

だった。きっと俺が見つけた、なんて覚えてないんだろうな。

「じゃあ、また」

「ええ、ありがとうございました♪」

 

 適当にジュースを選んだが、誰も文句は言わず(言うわけないか)。休憩した後、また作業再開。

これだけ頑張ってるなら、かなり余裕を持って終わらせられそうだな。というかとばしすぎの感も

あるんだけど……


Next Home