POOR PLAY


 学園祭まであと1週間。クラスの準備(お化け屋敷)は順調だ。だが急に作業人数が少なくなって

しまっている。というのも部活の出し物の準備の方にも駆り出されるからだ。文化系クラブが

多いので、今クラスの作業人数はおよそ20人、約半数だ。瞳由ちゃんもアートクラブの方に

まわってるし。ってかく言う俺もそろそろバンドクラブでの練習時間だ。一通り作業を終えた後、

「綿貫、俺そろそろクラブの時間なんで抜けるから」

 一応室長に伝えておく。もう完成にかなり近いからあとは少人数でも時間には間に合うだろう

抜けられる。あるいは、そう思っているから抜ける人が多いのかも。

 

 が、部室に行っても入り口のカギは開いておらず……相変わらず宗谷がカギ当番だが、彼女の

クラスの手伝いが長引けば当然バンドの時間も遅くなる。俺がカギ持ってりゃ、キーボードの

練習を一人できるのに。というか練習が必要なのは俺くらいで、他のメンバーはもう数曲こなして

いる。これほどまで腕前って違うもんなんだな……

「あらもう来てたの、早いわねぇ」

 やっと宗谷が来た。余裕の奴め……

「俺は練習しないと間に合わねぇんだよ」

「そう?でも結構上達したと思うけど」

 意外にも宗谷からお褒めの言葉をいただく。むしろ俺の上達の方が、宗谷にとって意外だった

のかもしれないが。

 その後針井、上久部長と来て、全員で(瑠璃絵さんいないけど)頭から演奏することに。

俺が合同練習に参加するのは初めてだ。果たして……

 

「……ちょっと」

 演奏の途中で宗谷が手を挙げて止めさせる。その前に針井はギターを下ろしていたようにも

見えたが、譜面を見るのに精一杯の俺は周りを見る余裕はなく、宗谷の手に気付いたのは

部長もドラムを止めて静かになってからだった。もしや……

「アンタ、ミスったでしょ」

 宗谷がジト目でこっちを睨む。やはりバレていたか……一番難しいところだから仕方ないと

思ってそのまま続けていたのだが、宗谷や針井の耳には悟られていたらしい。きっと部長にも

わかっていたのだろうが、そこは妥協してくれていたのかもしれない。

「……ゴメン」

 とりあえず謝るしかなかったが……なんかこいつに頭下げるのって腹立つな……

「間違うのは仕方ないけど、それを隠すのはやめてよね」

 なるほど、完璧主義か。そりゃお前らとは経験が違うよ……

「まあまあ、間違うのも経験や。次頑張ったらええ」

 さすが部長、人徳があるなぁ。そうでなかったらやっぱり関西人は、とか思っていたかも

知れないが(ぉ

「ほなもっかいやろか」

 部長のドラムでまた初めから演奏し始める。どうせ次間違えても止められるんだろうから、

今度は自己申告するか。

 

「あ、間違えた」

「失敗しちまった」

「悪ぃ、ミスった」

「アンタね……いい加減にしなさいよ」

巫琴 & 選

 正直に言ったというのに、何度目で怒りマークを額に浮かべる宗谷。針井なんかギターを

テーブルに置いて座ってしまうほど呆れている。……やっぱり、と言うべきか?

「タイト君……もちっと一人で練習したほうがええな」

 さすがの部長もフォローしきれなかったようだ。俺って本番に弱いのかな……それとも団体

行動が苦手だったりして……

「ああもうやる気なくした。今日の練習はもう終わりっ」

 実は宗谷は別の曲でギターも弾くのだが(それも上手い)、その練習も切り上げると。意欲まで

削いでしまうとは……ついボソっと、

「俺って足手まとい……?」

「まだマシな方だろ。お前が言わなきゃ今年は何もしない気だったからな」

 自分のギターをバッグに片付けながら針井。こいつがフォローしてくれるのも珍しいが、

バンド活動が好きなだけ、とも取れるが。しかし本当に特訓しなきゃやばいぞこりゃ……

「なぁ、俺だけ残って練習するってのは……」

「ダメ。誰がカギ掛けると思ってんのよ」

「じゃあ俺がカギ持つからさ」

「もっとダメ。あんたが遅く来たらシャノンたちに迷惑じゃない」

 今日俺の方が先に来てたのによく言うな、と言おうとしたが、その可能性も少なくないのでやめた。

じゃあお前が遅く来ることはないのか、とは思ったが。

 

 というわけで解散。まあ学園祭前だから毎日練習はするんだけど、(俺のところはともかく、

他のメンバーの)クラスの準備もあって時間はあまり取れず……思ったより早く終わったので、

自分のクラスの手伝いをすることにした。綿貫かなりやる気だしな……


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