いたり、女子はトランプで遊んでいたり。まあギリギリになって焦るよりはマシだけどな。
佑馬の影響で将棋をちょっとかじったことがあるので、そちらを観戦することにした。
男子って結構将棋知ってる割合が多いような気がするんだけど、教養として見につけるもの
なのだろうか?まあ動かし方覚えて相手の王様取ればいいだけのことなんだけど。数人の
男子が見ている中、先手が長考に入った(笑)。
「どーしよっかなー……お」
「……何かいい手があったのか?」
「そうじゃなくてさ、今年もアレやるのかな、ミスなんたら」
「ミス学園祭?そういえば……ってなんでそれが出て来るんだよ」
考えごとしてる時は余計なことが浮かんでくるもんだよな、俺もテスト中にビーマニの曲とか。
しかしミス学園祭のことが出てくるとは、こいつの頭の中って……
「去年は3年生だったけど、今年は1・2年から出たりして」
「今年の3年はブサイクばっかだからな」
「失礼なヤツだな……そうだけど(笑)」
「誰だろ……やっぱやまふじ」
「芸能人がそんなのに参加するか! お前この前も言ってなかったか?」
「そっか……じゃあ千代川さん?」
「あの娘の方がそういうのに参加しないだろ……いや、名倉が無理矢理出場させたりして」
それは無いと思うぞ……佑馬は彼女のことを独り占めしたいだろうからな。あいつは「人気の
彼女」じゃなくて、彼女自身を好きっていうのはいいところだな。
「じゃあ、ミス27HRってったら誰か」
「このクラス? といえば……逢坂さんとか?」
「顔はいいけど、あの性格はな(^^;」
つい彼女の方を振り返ってしまう……が、今この部屋にはいないようだ。クラブの方を
手伝っているんだろう。確かに俺もあの性格にはついていけん(苦笑)ついていけるのは室長の
綿貫か、妙なことを言いまくる井森くらいか。
「というかあの子だけ目立ってるからなぁ。それでも他にもかわいい子いるよな」
「……なんかオヤジっぽいぞ」
「みんな同類だ。で、誰がいいよ」
「そりゃやっぱ……れっとさんかな」
「それを言うなられつどさんだろ。実は俺もそう呼んでいたが」
いきなり瞳由ちゃんの名前を聞いてドキッとなってしまう。しかもクラスの男子も
知っていると思うが、俺は彼女とかなり親しい方なんだよな……
「今時珍しいよな、ああいう子って」
「何て言うんだろ……純朴?田舎とかの(笑)」
「あーあー、確かに」
田舎って……彼女のいとこの家は、そりゃどっちかと言えば田舎だったけど……
まあ都会っ子って感じでもないと言えばそうだろうけどね……
「ああいう子と付きあってみたいよな」
「お前は付きあったこと無いから誰でもいいんだろ」
「誰でもってのはないだろ(--メ」
「でも、列戸さんってタイトと……」
一人が俺の名前を言ったところで、その場の全員が俺の方を向く。こっ、これはマズイ、
ここで「タイトと列戸さんって付きあってるのか?」なんて聞かれたら俺は肯定も否定も
できなくなるぞ……何とかして話題を彼女から反らさなければ(ここまで1秒)(無理)。
「で、でもそういう子ってミス学園祭には合わないんじゃ?」
…………
「……そういやそうだな」
「じゃあ誰がいいかな」
「つーかお前早く指せよ」
……ホッ。なんとか切り抜けたか。もう話を振られないようにこの場から離れよう。
でもバンドの練習時間にはまだ時間があるし。とりあえずジュースでも買ってこよう……
「あ、テツ君」
!!
……今までの中で一番心臓が跳ねたのは、瞳由ちゃん本人に呼び止められたことだった。
丁度アートクラブから戻ってきたところのようだが……
「お化け屋敷、進み具合はどう?」
「あ、ああ、もうほとんど終わってるから皆休んでるよ……」
「そう、これからバンドの練習?」
「え、あ、うん……」
「そうなの、それじゃね♪」
ついうなずいてしまったが、ここでジュース買いに行くだけ、なんて言ったら「じゃあ私も」
なんてことになりかねん……って、何うぬぼれてんだ……? そりゃ俺たち仲がいいけど、
行く所行く所いつも一緒なんてそういうのでもなし。……でも俺はそれを望んでるはずなんだけど
どうも臆病で……結局バンド練習時間まで教室に帰れなくなってしまった。