前日


「テツ、おはよう!」

「おはようタイト君」

 いつもの交差点で信号待ちしていると、いつものように佑馬と七希菜ちゃんがやってきた。

「おはよう、お二人さん」

 信号はまだしばらくは変わりそうにない。周りには同じように待っている生徒がいつもより

少ない……皆学園祭の最後の準備でもっと早く登校しているからだろう。なんたって、学園祭は

明日なのだから。

「テツは余裕っぽいな」

「クラスの奴らはやる気出てたからな。そっちは?」

「将棋の方手伝ってて帰ってきたら、いつのまにか出来てたよ(笑)」

 佑馬のクラスはゲームセンターみたいなのとか。格ゲーやレースを置くようだ。ビーマニなら

俺も行っていいんだけどな……あってDDRか。

「私のところも、飾り付けくらいでしたから」

 七希菜ちゃんのところは、去年俺のクラスと同じ喫茶店だが、手作りのクッキーを売るらしい。

彼女を含む女子の料理部員が多いからできたとか。

 信号がやっと青に。待つのが嫌いな俺は、約100メートル向こうのように歩道橋とかあれば

いいと思うのだが、そっちの方が時間かかるか?

「そうそう、俺のところのお化け屋敷だけどさ、」

  宣伝とかやる性質ではないのだが、これは二人にうってつけの情報なので教えてやることにする。

「入場料は一人100円なんだけど、綿貫の意向で男女カップルは1組で50円なんだってさ」

「それって……安すぎなんじゃ(^^;」

「まあダンボールとか元手タダだしいいんじゃないか?」

 綿貫がそういう計らいをするというのは、武市によるとあいつは相当のときメモ好きらしく、

愛を語るのが好きだかららしい。その性格が滑稽だから、ある意味人気があるのかもしれんが(笑)

「だから二人して来てくれよな?」

「あ、あの、でも……」

 乗り気でない七希菜ちゃん。彼女とお化け屋敷といえば……そうだ、慌てて付け加える。

「グロテスクなメイクなんてないから大丈夫だって。ゴリラのマスクは出てくるけど」

「そうなんですか(ホッ)それなら……でもゴリラって(^^;」

 グロい=血だらけ、っつーこと。まああっても暗いからわかりにくいだろうけど。それでも

昨日持ってきていたが綿貫はゴリラのマスクをかぶって、さらには全身タイツで驚かせるらしい。

それはもはやお化けというか変(以下略)

「まあクラスの方はいいとして、問題はクラブの方なんだよな……」

 クラスは俺がいなくても完成はするが、バンドクラブは俺がいなかったら曲が成り立たない

よな……原曲知らないならわからないだろうけど。昨日は全員で合わせて、なんとか宗谷に

OKをだしてもらえたんだけど、本番はいかに……どうでもいいけどクラスとクラブって

一字違いだよな(ぉ

「僕は将棋部の方を頑張ってたから、余裕はあったけど」

 佑馬の将棋部は、詰め将棋をいっぱい用意して、正解した人に賞品を出すとか。その詰め将棋の

問題を作るのに苦労したとか。本から抜粋すればいいと思うのだが、顧問のポリシーが

許さなかったとかなんとか。佑馬はお兄さんに手伝ってもらって10本くらい作ったらしい。

「料理の方は、いつものとおりだから」

 料理クラブで何かやるというのではなく、食堂と合同で、いつもより安い食事を提供する

ようになる。去年はかなり重宝したが、それを買うにはあらかじめ食券を買っておかなければ

ならない。既に俺は10枚くらい持ってたりする。ありすぎかもしれないが、一応2日分だ。

学園祭は土日の2日間だからな。七希菜ちゃんがもう一つ所属している読書クラブは……

特に何もしないらしい(^^;

 校門まで来た。まだ登校時間はあるというのに、かなりの生徒があちらこちら動き回っていた。

なんかこう見てみると既に終えた俺たちは優越感を覚えるなぁ……これで全て成功すればいいん

だけど。目の前には大きな長方形の板に水彩で女性の絵が描かれたアーチがもう飾られている。

確か美術部だったよな……そういえば瞳由ちゃんのアートクラブの方は準備できたかな?

特別号だったっけ……親父の漫画のキャラを描くとか(汗)ある意味間に合わない方がいいかも(ぉ

 アーチには今年の学園祭に対するスローガンも書かれていた。去年は……なんだっけな、

まあ今年も生徒たちのアンケートから、3年生のが選ばれたんだっけ。アーチの下のほうに

書かれていた。俺もいい言葉だと思う。

七希菜

『Take it easy! 気楽にやろうよ』


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