意地を張る


 テストは、まずまずってところで終了した。いつもこんな感じのような気もするが。

放課後はIIDX!と言いたいところだが、今日はバンドクラブの日なんだよな……サボると

宗谷に何言われるかわからないから、一応行くか……どうせすぐ終わるんだろうし。

 

 とはいえ、学園祭が終わった後は何をすればいいんだろうか?そりゃイベントがなくても

キーボードの腕をあげるに越したことはないのだが、やっぱり目標がないとやる気が違う。

だからといってPrestoが弾けるようになるまでなんて無茶だし……(ピアノ習ってる七希菜

ちゃんでもどうかなぁ)

 ぶつぶつ言いながら部室の前まで行くと、既に針井がギターを持って扉の前へ来ていた。

珍しく早いな……でもメンバーの中で一番バンドに熱入れているのがこいつだったりする。

「よっ」

「……」

 軽く挨拶したが、ちらっと視線を動かすだけだった。わかってたけどな……ギターが上手い

針井でも、初めたてのころは下手だったはずだ。それならどうやって上達したかのコツくらいは

訊けるかもしれない。しかし訊きづらい相手だよな……俺が「ビーマニ教えて」って言われたら

喜んで教えるけど、こいつはそうじゃないしな……

「あ、おまたせ〜」

 どうしようか迷っていると、ちょうど宗谷が走ってやってきた。あいつが鍵持ってるから

入れないんだよな。今はいいが、もう少ししたら寒い中待たなならんのだぞ……

「そんなにイヤそうな顔しなくてもいいじゃない」

 おや、どうやら顔に出ていたようだ。条件反射とかそんな感じで出たのか?ともかく、宗谷が

鍵を取り出し扉を開けた。続いて男2人がぞろぞろと部室に入る。

「で、これから何するんだ?」

 針井がやりたがる限り、宗谷もここへ来るだろう。ということはバンド活動はやめないと

いうことだ。宗谷はなにかすることを決めているんじゃないかと思って尋ねたのだが……

「何って……別に何も?」

 予想していた答えの1つが返ってきた。それにしても針井並に淡白すぎ……やっぱり自然と

似てくるものなのかね……?

「じゃあこれからダラダラやってくわけ?」

「ダラダラって……そりゃシャノンが何かやりたいって言うんだったらやるけどぉ」

 そういいながら針井に流し目をおくる宗谷。当の針井は一人ギターを弾いている。こいつ

一体レパートリー何曲あるんだ?まあ針井はダラダラ……というか、今のまま自由気ままに

弾いている方がいいのかもしれない。それにしても、その言い回しじゃ俺が何か提案しても

全て却下ってわけか?まあ何も出てこないけど……

「じゃあ部長が来たら話し合おうじゃないか」

「あ、聞いてなかったっけ?部長ならもう来ないわよ」

「……来ない?」

 『今日』来ないじゃなくて、『もう』来ないって聞こえたんだけど……どういうことだ?

「だから、受験勉強に専念したいからクラブはもう続けられないってね」

「ああ……てことはこの部も3人になっちまったか」

「でも、卒業までは幽霊部員として籍は置いておくみたいね、内申点とかなんとか」

 関係あるのか……?逆に下げられるような気もするのだが、この高校は他とわけがちがうから

ありうるかもしれん……しかしどちらにしろ来年になれば、新入部員がいなければ3人だ。

いくらクラブ推進校といえど、一人で新しい部を作ることはできず、最低3人らしい。

俺は少なくとも5人だろと思っていたのだが、まさにその3人のうちの1人となってみると

そうも思ってられないかもな……

 キーボードの練習についたのだが、やる気も失せてきたのでさっさと帰ってビーマニ

したいが、そうなると針井と宗谷が2人きりになって、宗谷の思い通りになってしまう

ような気がして何か不愉快だ。あいつは内心俺が部をやめればと思っているに違いない。

もしそうなら、意地でもやめんぞ。

巫琴

「……もういいでしょ?」

「いや、まだまだ!」

「……?」

 気付けば宗谷が驚いたような顔でこちらを見ていた。周りを見回せば、針井がギターを

片付けて、帰る準備をしていた。宗谷がは「もう今日の部活は終わりにしていいでしょ?」

という意味で言ってたらしい。

「あ……お、おう」


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