千代川家へ


「……ちょっと待ってろ!」

 そう言って荷物を置き、ぽかんとしている佑馬を尻目に俺は体育館内を走り回った。

もしこの中に俺が探している人がいたら俺はここに残る。ここにいないのなら佑馬と一緒に

七希菜ちゃんを探しに行く。ここで俺が探しているのは、衛星のことに詳しい三樹男さんと

あおいちゃん、そして……俺の一番大事な人。

 3分ほど見回したがそれらしい人は見かけず、またこちらにも声はかけられなかった。

目的の人も俺を見つければ声をかけるだろうからな。だが結局とぼとぼと佑馬のところへ

戻ってきた。

「走り回って、何やってたの?」

 未だ俺の行動を理解できてない佑馬。少しは判れよ……

「他に知り合いでも探したんだけど、いないみたいだったな……佑馬、七希菜ちゃんを

探しに行くぞ」

 ここまで言ってようやく理解できたのと、彼女を探しに行くことに同意してくれたので

佑馬は笑顔でうなずいた。

 

 学校から出るときに先生たちに大声で止められたが聞いてもいられず、荷物は瞳由ちゃんに

頼んで体育館に置いてきたので、持ち前の若い走り(笑)で先生の追っ手を撒く。といっても

向こうも追いかけてる暇もなさそうだったな。

 さてこれから七希菜ちゃんの家まで通学路を辿っていくことになるのだが、

流石にマンションから自転車でも取りに戻りたいところ。でもあのとおり橋は壊れてるので

遠回りしなきゃららないし、ところどころクレーターができて乗り物では無理だ。

というわけでやはり自分の足か……

 今言ったように、彼女の家に向かう途中にもいくつか隕石は落ちていて、その周りは

いろんな破片と砂埃、そして怪我人……お互いが助け合って避難しているから

俺たちが助けなくてもよさそうだが、もう手遅れなのも目撃することになり、

佑馬はちょっと吐きそうになった。

 俺たちが走っている間にもいくつか隕石は落ち、一つは4〜5ブロック向こうに落ちて

地面がゆれ、煙が立ち昇ったのが見えたのがあった。一応怪我人がいないか見に行ったが、

もう避難した後なので誰もいなかった。

「なぁ、七希菜ちゃんももう別のところに避難したんじゃないか?家の近くに

避難場所くらいあるだろ」

「うん……」

 俺の言葉に暗く声を落とす佑馬。別に安心させようとして言ったんじゃないが、

彼女の家まで向かっても見つからない確率の方が大きい。見つからないから無事じゃない、

なんてことは言えないが、無事でいるか、最悪の状況であるかはどちらとも見つけて

みなければわからないのだ。

 そうこういっているうちに佑馬と七希菜ちゃんの家の近くまで来ていた。俺は佑馬にまず

自分の家に向かわせ、家族の人が残っていないかの確認と、避難するのに何か使えそうなものを

取ってくるように言った。佑馬は一刻も早く七希菜ちゃんの家に行きたかったようだが、

俺に任せろと言ったらうなずいて、自分の家の方に走っていった。それを見て俺は彼女の家へ。

 七希菜ちゃんの家の手前100mくらいに隕石が落ちた跡を見つけ、もしやこれに彼女が

巻き込まれたのでは……と佑馬並に心配になってしまう。だが彼女がそこに転がっているのを

見つけるよりはマシだった。気を取り直して彼女の家の戸を叩く。

「七希菜ちゃん、誰か、誰かいないか?!」

「……タイト君?タイト君来たの?!」

 奥の方から声がして、続いてバタバタと走って来る音。そして玄関の扉が開き、

七希菜ちゃんが今にも泣きそうな顔を覗かせた。

七希菜

「よかった、無事だったのか……佑馬も安心するな」

「佑馬君?佑馬君も来てるの?」

「ああ、自分の家に帰ってるけど、すぐ来るよ。……それにしても、なんで避難してないんだ?」

 見つかりやすい場所に留まってくれてたのはいいが、流石に家の中だと逃げ場がない。

頭のまわる彼女ならもっと広い場所に避難するなどすぐ考えつくことだが。というわけで

尋ねたのだが、彼女はさらに泣き顔になってしまった。

「それが……お母さんが……!」

 彼女は俺の手を引っ張って家へ上がらせた。彼女の表情でただ事ではないと思うが、

俺も面識があり、優しい彼女の母親に何があったのか。どうしても一番悪い想像をしてしまい

足が重かったが、彼女に連れられある部屋に入った。そこに……


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