変型字典……過去・壱(標準漢和辞典)


02/08/20
[JIS C:2968*] 巛部 4画(7)
音:ジュン/訓:めぐ-る (「巡」の旧字体)
 旧字体から今の字体に変わるとき、大きく字体が変わるとその部首も変わることがある。 しかし部首の形だけが変わっているものは、たいていは旧字体も新字体も部首は同じはずだ。 だがこの字は「巛部」であるのに対し、新字体の巡は「之部(「しんにょう」が出なかったので 変わりに「之」を……)」というのはどういうことか。ただ、持ってる漢和辞典だけがそう してるのかもしれないが……
参考字 [JIS C:2968] 之部 3画(6) ジュン/めぐ-る

02/08/21
[JIS C:5970] 木部 7画(11)
音:キョウ/訓:ふくろう
 木にとまって獲物を探している、と考えればいかにもの漢字だが、鳥は普通木にとまる ものである。烏もそうだが、ちゃんと「鳥」という字が含まれてないと鳥部とされないらしい。
 ところで梟は「悪・不幸の鳥とされている」と言われているが、その名前から「福の鳥」と 呼ばれたりと全く逆のとらわれ方も。
参考字 [JIS C:1708] 火部 6画(10) ウ・オ/からす・いず-くんぞ

02/08/22
[JIS C:8183] 骨部 13画(23)
音:タイ/訓:からだ (「体」の旧字体)
 旧字体から新字体へ変わるとき、漢字全体が変わってしまうものはあるが、少なくとも一部は 原型を残しているものがほとんど。だがこの旧字体から、「体」という新字体がどうして 想像できようか。というかどうやったら「体」という形に簡略化できたのだろうか。 さもなくば「舊字體(舊:旧の旧字体)」である。

02/08/30
[JIS C:2378*] 月部 0画(4)
音:ゲツ・ガツ/訓:つき (「月」の旧字体)
 元々「月」と言う字は、曰みたく内側の線の右側はついてない。これのおかげで肉づき (体に関係する字の部首、「肌」「肺」「腰」などの月)と区別がついてたのだが、新字体になって 一緒くたにされてしまった……ちなみに「舟」をくずした形(月の中が線ではなくて点2つ)も 月に改められたので、「部首:月」となっている字の一部は本当は舟と関係ある文字だったり するので、漢字の本来に意味がわかりにくくなっているのでは。例えば「朝」も、月は舟の 変型だったりする。まあこれの場合は舟自体に意味はなく音を借りているだけなのだが。

02/08/31
[JIS C:1871] 牙部 0画(4)
音:ガ・ゲ/訓:きば
 調べた辞書には「牙部」というのはこの字しかなかったので、他の辞書には別の部首で 載っているかもしれない。それはともかく、この「牙」という部分が入っている字としては 「芽」「邪」「雅」などがあるが、これらの牙は現在では5画、旧字体では4画で書かれる。 これを考えると普通は「牙」単体も5画のはず……と思いきや、4画のままらしい。 パソコンで使われる文字は5画のが多いので、そちらで書く人が多いと思うのだが。 ちなみに「鴉」のは昔のままの4画らしい。
類字 [JIS C:1727] 瓜部 0画(5) カ/うり
(この字の場合は、中を「ム」と書かずに6画としている辞書も?)


02/09/01
[JIS C:1790] 凵部 3画(5)
音:オウ/訓:くぼ-む
類字 [JIS C:3844] 凵部 3画(5) トツ/でこ
 この2字は漢字でないような漢字の代表格で、凹凸は「オウトツ」、凸凹は「でこぼこ」と 入れ替えても同じ意味で読めるようになっているのは有名。しかし「でこぼこ」というのは特殊な 読み方で、凹はそれだけで「ぼこ」とは読まない。しかし凸は「でこ」と読めるのは面白い。
 ……と思ったのだが、パソコンでは「ぼこ」と打つと凹に変換できるものもあるようで、 便利ではあるが誤って覚えてしまうのではないかと懸念される。

02/09/06
[JIS C:4665] 人部 3画(5)
音:レイ
 ほとんどの字体では、この字の最後の画はまっすぐ下に引く。しかし学校で習う楷書では点、 つまり「マ」と書かねばならない。小中学校の国語のテストでは楷書で書くというのが 大前提なので、当然明朝体などのように最後を縦に書くと誤りである。「鈴」「冷」「零」 なども同じ。というわけで小中学生用の辞書は楷書で書かれることが多いのだが、 その割にはそれに対する注意書きが辞書に見当たらない気がする。大人でも間違うのに 子供が紛らわされないはずがないのでは。

02/09/07
[JIS C:2823] 一部 1画(2)
音:シチ/訓:なな-つ
 前に「徒然笹」のコーナーで、七条などの「七」を「ひち」と読むのはおかしいのでは、 と書いたところ、掲示板やメールなどで『「ひち」と呼ぶこともある』と意見を寄せられた。 同ページの他の項ではほとんどなかったのに、だ(笑)ここで納得がいくような答え(こじつけ)を 考えてみる。
 「吉田」さんという人の中には、「吉」の上の部分を「土」と書く人がいる。辞書で調べてみると 上を土とかく吉は俗字(元の字形が間違って使われたり、簡単な字形にして間に合わせたもの) ということになっている。俗字の中でも辞書に載っていたり、正式な漢字として扱われるように なったものもあるので、一概に間違いとはいえない。というわけで、人名で使う上では 吉とは別字と考えるようにしている。
 さて「ひち」に戻るとすると、「七条」というのは人名・地名なのだから、そういう呼び方が あっても間違いとは言えないということになる。俗字ならぬ「俗音」だ(こういう単語は無いが)。 むしろ七をひちと読むのはまだましな方で、中には初めて見ただけでは絶対読めないような 当て字(当て読み?)などもあるとも言える。

02/09/08
[JIS C:4259] 廾部 2画(5)
音:ベン/訓:わきま-える・わ-ける
 この字は旧字体が3つもあり、しかもそれぞれの旧字体で意味が変わってくる。 弁自身も合わせると4つの意味が。
 ・弁[廾部 2画(5)]:(武官のつける)かんむり・おののく
 ・辨[辛部 9画(16)]:旧字体「辧」、わきまえる・区別する・(借りを)返す
 ・瓣[瓜部 14画(19)]:瓜の中の実・(花などの)ひら・液体などの出入りを調整するもの
 ・辯[辛部 14画(21)]:区別し明らかにする・喋る・言い争う・方言の「〜弁」
 全て「辛○辛」という形だし、同じ音だったので皆まとめられたのだろうが、 逆に弁の字がつく熟語の意味がとらえにくくなるのではと思う。だからって比較的 使う意味の字が20画もあるのではやってられないが。

02/09/15
[JIS C:6157] 毋部 0画(4)
音:ブ・ム/訓:なか-れ
参考字 [JIS C:4276] 母部 0画(5) ボ/はは
 毋と母、この2つの漢字は意味からみても別の漢字とされている。それはいいのだが、 例えば「毎」という字の下の部分は母ではなく毋とするようにと、小学校で教わるだろう。 それは母という字は学ぶので馴染みがあるが、毋は習わないからである。しかし実は、 「毎」の旧字体では下の部分は母と書くので、そう書いても間違いではないのである。 ほとんどの「毋」が付く漢字は「母」に置き換えることができる(「貫」の上の部分は例外)。
 実際は、常用漢字(毒・侮など)では「毋」に置き換えられ、常用漢字外(苺・晦など)は 「母」のままのようだ。パソコンでの字体では間違ってるのも少なくないが……それにしても、 「毋」自体は常用漢字外、「母」は常用漢字なのに、それらが付く漢字は逆になっているのは 変な話である。

02/09/16
[JIS C:4012*] 八部 0画(2)
音:ハチ/訓:や・やっ-つ (「八」の旧字体)
参考字 [JIS C:4012] 八部 0画(2) ハチ/や・やっ-つ
 「八」の右側の払いの上部に横線を入れると、大げさに書いているだけにも見えるが、 実はこれが「八」の旧字体だったりする。ということは昔は必ず上部に横線を入れて 書かなければならなかったということか。それも面倒だが、わざわざ新字体を作るほどでも なかったような気もする。
 常用漢字以外の漢字にその名残があり、「八」が上部にある漢字のうち常用漢字 (分・公など。例外で穴も)は新字体の八だが、常用漢字外(曾・兮・兌など)では、 旧字体のままなのが正しいようだ。

02/09/17
[JIS C:2810] 耳部 0画(6)
音:ジ/訓:みみ
 この字の5画目、下部の左から右へ貫く画は右側まで突き抜けている。さて耳がつく漢字のうち、 耳偏(聡・聴・職など)の耳の5画目は右側は突き抜けていないと言われても、篇は形が変わるものが 多いのでまだ納得できるかもしれない。しかし他の部分にあっても(聞・聖・茸など)の5画目も 右側は突き抜けていないと言われればどうだろう(調べた辞書では、熟語見出し中では突き出て いるのもあったが、親字見出しでは消されているものばかりだったので)。
 かといって「耳」の旧字体は突き抜けていなかった、などというのでもないのでこれだけと いうのも不思議だ。まあバランスの問題だろうが……

02/09/18
[JIS C:3815] 人部 11画(13)
音:ドウ/訓:はたら-く
 国字とは日本で作られた漢字で、基本的には音読みはない。音読みとは中国で使っていた 読み方だからで、その字の意味に対応した日本語での読み方を当てたのが訓読みである。 だから日本で作られた国字に中国読みは必要ないはずなのだ。
 さて「働」は「労働」のように音読みがある国字と知られている。実はこの字は、 中国でも使われている「逆輸入」の漢字らしい。しかし日本よりも多くの種類の漢字を 使っているはず、逆輸入しなければならないということは、それまで中国には「はたらく」 という意味の漢字がなかったということなのだろうか?

02/09/19
[JIS C:7655] 貝部 13画(20)
音:エイ・ヨウ/訓:あま-り
類字 [JIS C:7032] 羊部 13画(19) ルイ/つか-れる・や-せる
 「輸贏(ユエイ・シュエイ)」とは、勝ち負けのこと。贏が勝ちの意味である。とはいえ 常用漢字でない字を無理に使う必要はないのだが、この字の部首は、下段中央の「貝」という 点に注目してほしい。この「外側」は、他の字でも使われているのを見るのだが、そのたびに 部首が字の下段中央の部分になっているのに気にかかる。同じようなのがあるのなら、 その外側を部首の1つとすればいいような気もするのだが、「○部 0画」に相当する、 部首の形そのものの字がないと部首にはならないのだろうか。

02/10/02
[JIS C:4384*] 又部 0画(2)
音:ユウ/訓:また (「又」の旧字体)
参考字 [JIS C:4384] 又部 0画(2) ユウ/また
 のときと同じく、旧字体との違いは「飾り」が あるかないかだけ。では同じように、「又」という部分を持つ漢字でどちらを使うかというのは、 常用漢字であるかないかで綺麗に分かれる……というものでは、この「又」はないようだ。 「叉・曼」は常用漢字外の字で、飾りがあるの方 なのだが、同じ常用漢字外の「叡・叟」などは普通の である(ように、調べた辞書では形が違っている)。

02/10/03
[JIS C:6188] 水部 5画(8)
音:コ/訓:う-る・か-う
 「売る」「買う」の意味・読みを同時に持つ漢字。訓読みの場合は送りがなで判別できるものの、 音熟語、例えば「沽酒」には「買った酒」「酒を売ること」と全く逆の意味が取られるので ややこしい(例の場合は、酒からの観点でいえば同じことなのだが)。売・買ともに音読みが「バイ」 であるというのと何かつながりがあるのだろうか。

02/10/04
[JIS C:7971] 門部 8画(16)
音:イキ/(訓:しきい)
 日本語での意味は「しきい」(「敷居」ではなく、2つの区間の境となるもの。「仕切る」に 通ずるところがあるのだろうか)で、「閾値」という風に「しきい」という訓読みが あるはずである。しかしパソコンで「しきい」だけを変換しようとしても「閾」とは出ず、 「しきいち」ならば変換できる。手持ちの辞書にも「しきい」の訓読みは書かれてなかったので これ一文字ではそう読まず、「閾値」は特別な読みなのだろうか。
 ネット上の漢和辞典では「しきい」という訓もあるように書いていたりもするので どちらが正しいかわからないが、「凹」が「ぼこ」で変換できる割には、「閾」を「しきい」で 変換できないのは面倒だと思ったので。

02/10/06
[JIS C:2152] 虍部 3画(9)
音:ギャク/訓:しいた-げる
 「雪・帰・尋」などの字を先に学び、そしてよく使うので「ヨ」には違和感はないのだが、 「E」は特異な印象を与える。漢字自体ががいい意味でないのも「逆っぽさ」を強めている。 旧字体は「謔」に見られるように「E」の中段は突き抜けているので、新字体でも中段は上下より 長く書いている辞書もある。が同じ中段が長かった「雪」はそう書かれているのを見たことはない。

02/10/07
[JIS C:5974] 木部 7画(11)
音:ジョウ/訓:えだ (「条」の旧字体)
 苗字には旧字体を使っているものがよくあるが、その中でもこの字が旧字体とは知らない人は 多いのではないだろうか。また新・旧で部首が同じなので少しは納得しそうなのだが、 同じ「攸」を持つ「脩」は月(肉づき)部であるのに対して「修」はイ(人)部というのもややこしい。 「悠」なら心部とわかりやすいのだが。

02/10/08
[JIS C:4581] 卩部 5画(7)
音:ラン/訓:たまご
 この字一文字で動物が産む「たまご」を意味するが、一般的にニワトリのたまごを思い 浮かべがち。しかしこの字の由来は、カエルのたまごの象形なのである。こう言ってしまうと 気持ち悪くなるかもしれないが……ちなみに「玉子」と書けばニワトリのたまごに限定される ようなので、たまご売り場では「玉子」と書かれていることが多いのでは。

02/10/09
[JIS C:4238] 米部 0画(6)
音:マイ・ベイ/訓:こめ・メートル
 この字といえばアメリカ(亜米利加)の当て字として「米国」などの使い方もされるが、 他にも距離の単位である「メートル(m)」とも読め、しかも正式な訓読みとされている。 訓読みなのに英語読みというのも変な気分なのだが、外国の単位を示す漢字は他にもまだ たくさんあるので、それは探して欲しい。
 mだけでなく、cmやkmなどもよく使う単位だが、漢字では一文字で表せるように なっている。厳密に言えば、そういう字を「国字」として作ったに過ぎないのだが。 「粍(ミリメートル)」「糎(センチメートル)」「粉(デシメートル)」「籵(デカメートル)」 「粨(ヘクトメートル)」「粁(キロメートル)」。[米+少]でミクロンというのもあるらしいが、 籵・粨なんかはその字を作った必要はあるのだろうか?

02/10/10
[JIS C:4608] 玄部 6画(11)
音:ソツ・リツ/訓:ひき-いる
 この漢字の中に確かに「玄」があるので、この部首の付け方はなかなか上手いと思う。 ということは亠と幺は離さずにくっつけて書くべきなのだろうか。あと読み方としては 「確率」のリツだけでなく「率直」などのソツを忘れがちだが、実はリツよりもソツと読む方が いろいろな意味を持っていたりする。決して「卒」と間違えないように……とは言うものの、 卒に置き換えられる率もあったりする(「率然→卒然」など)。

02/10/11
[JIS C:2913*] 自部 4画(10)
音:シュウ/訓:くさ-い (「臭」の旧字体)
 旧字体から新字体に変わるとき、一番よくある変化は「丶」がなくなること。ほとんどの字は あっても無くてもいいような変化なので、書き忘れるよりはマシな気もするが、この字の場合は 少し違う。「自」は鼻の略で、「犬」はもちろん動物のイヌ。つまり犬が鼻でにおいをかぐ、 というところからこの字が出来たのである。それが「丶」を取ってしまうと、大きな鼻で においをかぐことになる(笑)。
 ちなみにこの字は「にお-う」とも読めるようだが、それはできれば「匂う」の方を使ってほしい。 「におい」と読ませようとして「臭い」と書くと「くさい」と読んでしまうからだ。

02/10/12
[JIS C:4420*] 夕部 10画(13)
音:ム/訓:ゆめ (「夢」の旧字体)
 草かんむりの由来は「艸」という字で、旧字体の草かんむりは「十十」のように離れて 書かれていた。ほとんどの草かんむりがそうなのだが、この字はまず部首が草かんむりではなく夕。 そして旧字体で上の部分は「┤├」のようになっている。新字体になったせいで部首も わかりにくくなった例である。

02/10/25
[JS C:3858] 豕部 4画(11)
音:トン/訓:ぶた
 月(肉)部かと思ってたら、豕の方だったのか……と、それだけだとつまらないので熟語を一つ。 「豚犬(トンケン)」とはおろかで役に立たない者を見下していう言葉らしいが、ほかにも 自分の子供を謙遜していう言葉らしい。いくら自分の子供だからって豚と犬って……そう言ってる あんたはその豚と犬の親なんだから、自信も豚と犬なんじゃ、と思ってしまう(笑)。同じ意味で 「豚児(トンジ)」というのがあるが、こちらだとなんか太ってそうな子供というイメージがあるが、 熟語にはその意味はない。いずれにせよ、「祭りの時に神にささげる動物」の割には 一般には卑下されているというのもおかしな話だ。

02/10/26
[JS C:4828] 厂部 2画(4)
音:ソク/訓:ほの-か
 「仄暗い……」というタイトルの映画が出てすぐ、この映画について語る人が出てくるのだが、 よく「灰暗い……」と間違えている人がいる。読み方は「ほのぐらい」と知っているが、 それでは一発変換されず、また「ほのか」じゃないと変換されないことも知らず、 さらには「灰」に「ほの」という読み方があるのではと思い込んでいる結果、こうなったと 考えられる。しかしそこまで勘違いする人がいるとは(google検索で200件以上HIT。内何件かは このページように「仄」と「灰」は違う文字だと指摘しているところもあった)……

02/10/27
[JS C:2764] 歹部 2画(6)
音:シ/訓:し-ぬ
 やはりこの字だけではあまりいい印象を与えない(死角や死火山など、必ずしもそうではないが)。 実は歹部の中で、一番上の「一」を長く伸ばすのはこの字だけであり、しかもそれは大漢和辞典で 調べた中でも唯一であった。やはりこの字は特別な存在だと裏付けている証拠である。
 さらにこの字が1つの漢字の中に入っている(屍・葬・薨など)ものが多いような気がするが、 それはその字が目に付きやすいというのもあるかもしれない。それに必ずしもその字が死に 関係する意味でもなかったりするのだ([自/死]は「臭」の古字だったりする)。

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