不参加


「えっ、クリスマスパーティ?」

 本屋に寄ったら丁度瑠璃絵さんがバイトしてる日だったので、七希菜ちゃん主催のパーティに

誘ってみることにした。またパーティで歌声を披露してもらおうと思ったのだが。

「悪いけど……もうバイトの予定が埋まってるから……」

「あ、そうなんですか……そりゃ仕方ないですよね」

 申し訳なさそうに手を合わせる瑠璃絵さん。そりゃ先約なら仕方ないが、ホントにバイト三昧

だよな、よくそんなに体がもつよなぁ……

「クリスマスって特に忙しくなる時期なの。でそんなときに限って働き手がいないしね」

瑠璃絵 , 優大 & ソラ

 それはつまり、恋人同士で過ごす人が多いということで、瑠璃絵さんはそうではないと……

そういう雰囲気だけど、やっぱり彼氏がいないってのは不自然な気が。結構奥手なほうなのかな?

でもナンパされるとか……いや、やっぱり断わるんだろうな――

「なに?考えごと?」

 気が付けば、ぼーっとしている俺の顔を瑠璃絵さんがのぞいていた。

「え、ああ、ちょっと……また次の機会に誘おうかなって」

「次というと……お花見とかかな?(^^; その頃には時間空けておくわ」

 そこでしばらく会話が途絶えてしまった。今はまだ瑠璃絵さんの休憩時間は少しあり、

2人とも本屋のすぐ外(外といっても、ここはビルの中だから「本屋の敷地外」ということ)の

ベンチに座って話していた。俺の目当ての本はもう買ったが、またもマンガなので瑠璃絵さんの

前で読むこともできず。瞳由ちゃんだったら一緒に読めるんだけどな(笑)まあそのときは

「あの」マンガなんだろうが……

「……そういえば」

 なんとか話題を思いつき瑠璃絵さんに質問してみる。あんまり言いふらすような話題でもないが。

「針井と宗谷、今仲が悪いの知ってた?」

「宗谷……さんって、バンドクラブの?」

 唐突な話題でもあったか、瑠璃絵さん意外そうな表情を見せる。

「あの2人、付き合ってたんでしょう?」

「いやそれは違うんだけど……宗谷はかなり落ち込んでて、針井も内心は反省してるみたいだけど」

「そうなんだ……この前社音くんに会ったときいつも通りだったから、全然気付かなかった」

 ふーん、針井が瑠璃絵さんに話すほど親しい存在とは思ってないようだな。俺は目の前で

見たから話さざるを得なかったんだろうけど。それに瑠璃絵さんも、2人が付き合ってるように

見えるなんて、針井を恋愛対象にしてなかったのか……?

「それなら、そのパーティに2人を呼んであげたら仲直りできるんじゃないかしら」

 瑠璃絵さんの提案で、やはり彼女は針井を狙っていないことが判明(ぉ ……なんとなく

ホッ、だな。でも俺がこの人を狙うかというと……まだなんか、お姉さんみたいな存在の

感じがする。だって何でもこなしちゃいそうだからな。もう少し弱い所があれば、守って

あげたいと思えるのだが。

「……うん、そうしてみるよ」

 だから今は、何でも瑠璃絵さんの言うことを素直に聞くだけの弟みたいだよな、俺……

もっと俺が引っ張ってやる!って感じでいないと現状のままだぞ。そりゃ向こうが年上なんだから

必然的にそうなっちゃうんだろうけど……って、なんで俺が「瑠璃絵さんを狙う」考えで

話が進んでるんだ?(汗)

「住村さーん、そろそろじかんでーす」

「あ、はーい」

 店の人(このひともバイト?)に呼ばれ、ベンチを立つ彼女。こんなにバイトしてるってのは、

親からの仕送りも無くて家賃や生活費を全部自分で稼いでいるんだろうな。ここで俺が少し

援助できたら(俺んちは結構裕福、ただし親父のおかげだが)、少なくとも弟とかは思われなく

なるだろうけど……多分瑠璃絵さんは断わるだろうな、自分のためにならないとかで。

働くこと自体嫌いでもなさそうだしな。第一にそれって援助交際(逆援助交際)?(爆)……

とにかく、せめてクリスマスくらいはゆっくりさせてあげたいな。

「テツくん、それじゃまたね」

「ああ……バイト頑張って」

 手を振ってニコッとすると、彼女は本屋の奥のほうへと走っていった。俺もそろそろ帰るかな……

ま、俺でなくても、彼女に素敵な男性が現れれば……大丈夫かなぁ、それこそバイトする

やる気とかなくなりそうなんだけど。織姫と彦星がそんな話だったような。やっぱり彼女は

「働く女性」な姿が一番、いや2番目に似合ってるのだろうか。


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