いつもふたりで


 春休み、俺はコンビニでバイトをしている。前にも言ったが、小遣いが欲しくてやっている

わけではない。少しでも瑠璃絵さんと一緒にいる時間を長くしたいからだ。

「テツ君そんなに大丈夫?」

「へ、平気平気……」

 とか言いながらダンボール箱を3つも積んで足がふらつかないわけがない。それでも男らしい

ところを見せようと一人で並べる棚の前まで運んでいく。よく考えてみたら、これを落としたら

商品ダメになるから危険なのだが、なんとか無事に箱を下ろした。

「テツ君が一緒に働いてくれていろいろ助かるな」

 箱を開けて中を取り出す瑠璃絵さん。一番上の箱は弁当が入っていた。それを取り出して

棚に並べながら独り言のようにつぶやいた。俺には、それは単なる男手だからだけではなく、

精神的にも楽になっていると言っていることがわかった。俺はふと手を止め、箱から弁当を

取ろうとした瑠璃絵さんの手に俺の手を重ねる。

「あ……」

 一瞬ビクっとしたが、ひっこめはしなかった。不思議そうに、恥ずかしそうに俺を見上げる。

俺は両手で瑠璃絵さんの手を取り、その手を優しく包んだ。彼女の手は自然と握りこぶしの

形になる。

「瑠璃絵さんがこんな風にマイクを握るようになっても、俺は応援しつづけるからね」

 自然と手が上がり、2人の視線の間にくる。そして視線は手からお互いの目へと……

自分でやっておきながら目が離せなくなってしまう。瑠璃絵さんも――もう片方の手を添えて

俺の方をじっと見ていてくれる。この後どうなるんだろう、と考えつつもだんだんと

2人の顔が近づいてきて……

「……なーん」

 気の抜けた声でこける。またライトの奴が邪魔しやがって……しかも瑠璃絵さんに擦り寄って

きてるし。瑠璃絵さんは照れ隠しにライトをなでて

「ほ、ほら仕事の途中でしょ、早く並べなきゃ」

 と慌てて弁当を並べだす。よく考えれば客がいたらバカップルさらしあげだな……と冷や汗を

かきつつ、俺も仕事に戻る。瑠璃絵さんの夢が叶うのはもちろん望んでるけど、しばらくは

こういうのもいいかな、なんて思ったり。

瑠璃絵

〜住村 瑠璃絵 編 Fin〜


あとがき

泡:唯一のお姉さんヒロイン、瑠璃絵のお話。

瑠:テツ君も最後までさんづけでしたからね(^^;

泡:年上でも1つ上でないのは、高3だと受験しなくちゃいけないからな

瑠:受験って……どちらにしてもしませんよ、103話「将来」でも言ってますし

泡:あ。じゃあ高3で髪染めてるのは校則違反ということで(ぉ

瑠:そもそも染めてるなんて決めなくても……赤や青の髪の色でも学校通ってる娘いるでしょ?

泡:それはゲームだから……こっちはもうすこし現実的でありたいなと(笑)ほとんどのキャラが

 髪の色変わってるし

瑠:特に巫琴さんね(^^; 私は前期中盤から登場して彼女の話にからんでたけど、後期からは

 全く別ですよね

泡:社音はでてくるけどな。社音が瑠璃絵さんに……なんてのはあまり考えられないのは

 僕もそう思ったので、あっさりと別物に分かれてしまいましたな

瑠:それから、自分で言うのもなんですが、バイトおおいですね(^^;

泡:瑠璃絵MAINでは5割以上バイト、ほとんどがコンビニだけど本屋もあり、あと132話

 「不参加」から喫茶店でもバイトしてることがわかる

瑠:でも大半を家賃と生活費にもっていかれて、貯金はほんのちょっと……だから独学でしか

 歌を練習できないから、外で歌ってたりするの

泡:しかし他のヒロインに比べて話数が短いのに(短い分?)すんなり進展する一方のまま

 終わったよな。テツのほうからアタックすることが多かったからか?

瑠:隠し設定というのかな?高校時代につきあってた彼に、歌手になりたい夢を打ち明けても

 ほとんど本気にしてくれなかったことがあって、その点テツ君は真面目に受け取ってくれる

 どころか応援までしてくれたから……

泡:それを本編で書いたら流石にベタかなと(ぉ 過去に影をもってばっかが萌えとは

 限らんし(爆)

瑠:といってもこの小説では2人くらいしか……もう少し細かい経歴を決めておいてた方が

泡:行き当たりばったりの方が勢いで書けるんだよ(疑)関係ないが、初めはセリオ似だと

 思ってたけど、「背が高い・髪が長い・歌が上手・猫が好き」で榊さんに決定(笑)

瑠:クールさとか、運動神経がいいとかは当てはまらない気が……勉強ができるのはともかく(ぇ


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