テスト


 今日は定期テストだ。実は俺はテスト自体はそんなに嫌いではない。むしろテスト勉強のために

時間を割かれることが嫌いだ。でもテストがある日はいつもより早く放課となるのでそれは

嬉しいのだが。それに今回は真面目に勉強をした(方だ)からな。

 全員がそろって、出席番号順に席を並び変わる。いちいち面倒だとは思うが、やはりその方が

テストの結果を記録しやすいのだろう。小学生の頃は異性が座っていた席に座るなど考えられ

なかったのだが、今となっては平気というのもまた変な話だ。ま、今回は野郎の席だけど。

……つっても期待してたわけではないぞ。

 今日は国語・数学・英語。明日は化学・「物理・生物・地学」から一つ・地歴三教科から一つ。

公民をやりたい人はその後でできて、地歴と比べて良い方だけ選ばれる。どうせセンター試験で

1つしかいらないなら一点集中のほうがいいと思うのだが。というか時間がもったいないので

俺は公民はとらない。

 さてテストが始まった。1時間目は国語、現代文と古典(古文・漢文)に分かれている。

現代文なんぞ勉強のしようが無いと思うのだが……よくわからん明治時代の小説っぽいのから

出題されているようだ。読書好きの七希菜ちゃんなら読んだことあったりしてな。でも登場人物の

心情までわかるもんだろうか。問題作成者はそう思っていても、実は著者の考えと違っていたら

どうすんだよ……確認できないけどさ。古典は佑馬がいろいろ教えてくれたな。やっぱ将棋が得意

なのと……関係ないか。

 2時間目の数学は、得意(笑)。普段は忘れたところも出てくるのだが、皆で不安な所を勉強

し直したおかげでスラスラ解ける。記述式だから途中の式さえ間違ってなけりゃ、満点かも(^^)

 が、3時間目の英語はツライものがある……勉強したような気もするが曖昧にしか出てこない。

例として出てる文ばっかを記憶して、同じ文型でも内容が違っていると戸惑ってしまう。あんまり

自身が無いなぁ……

 時間が余っているときよりも、答えが出なくて焦っているときほど余計なことを考えてしまう。

他のみんなはできてるかなぁ、とか。瞳由ちゃんや七希菜ちゃんはできてそうだが、佑馬は俺と

どっこいどっこいだろうな……よく「しょ〜ぶ!!」とか言って結果を見せ合うんだけど

総合じゃ五分五分だし。似たような学力だからこそ友達でいられるのかもな。

 ……と、まだ空白のところがあるんだった、放っておくよりはなんでも埋めておいたほうが

いいからな。でも先生によって「わからないからといって解答郡の同じものを使ったら、片方が

合っていてもはねる」とか言う先生もいれば、「どうしても迷ったら両方同じにしとけ」とか

すすめる先生もいたりしてややこしい。俺はスマートに前者といきたいのだが……生徒の立場だと

やはり後者よりに……このテストでは何も言われてなかったから、まあいいか。

 

「1日目、ごくろーさま」

 英語が終わり、頭使いすぎてぼーっとしていると、帰ろうとしていた瞳由ちゃんが声をかけた。

「そちらこそ……昼飯?」

 そりゃもう正午だから当然な言葉なのだが……この「昼飯」は「学食」という意味で言ったの

だが、彼女は察してくれようだ。

「ううん、家で食べるよ」

「俺は……学食だな」

 彼女に別れを告げて、のそりと食堂へ。他は知らんが、この学校では授業は昼まででも食堂は

開いてくれている。早めの夕食を食べることも可能だ。でも早すぎて夜食が必要になるのだが。

その食堂にはやはり男子がかなりいた。皆今日のテストの話ばかりしている。終わったことは

忘れて次のテストのことを考えろ、とは言うがそうもできないのは仕方がない。

「あ、テツ」

 佑馬も食堂だったか。やっぱ俺もテストの話をしてしまうのか……なんとなく抵抗してみたく

なった。とりあえず食事を持って佑馬の向かいへ座る。

「佑馬、お前料理できるか?」

「……え?」

 唐突に聞かれて戸惑う佑馬。

「ほら、勉強会のときに言ってたじゃんか、『料理できる旦那さん』とか」

「ああ……」

 思い出したのか箸が止まる。だがすぐに気を取り戻したか、

「いや、僕は今の自分で勝負してみるよ」

 何の勝負だ……つーか答えになってないし。言いたいことはことはわかるけどな。

「そういうテツはどーなんだよ、瞳由ちゃんとか」

 いきなり切り返されて、今度は俺が焦ることに。だが……

「よく、わかんないな、恋愛とか」

「……?」

佑馬

 佑馬は怪訝な顔をするが、事実そうだった。彼女は良い娘で、はっきり言えば好きだが、それが

恋してるとかは理解できない。ただ好きってならほとんどの女性に恋してることになっちまうし。

恋愛してみなけりゃわからないものなのだろうか。そう考えると佑馬が七希菜ちゃんに好意を

寄せているのは普通の女の子と接するのと変わらないのかもな。

「佑馬はまだ子供だな……」

「なんだよ……そりゃまだ高校生だし、テツもじゃん」


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