手解き?


「え、ギター?」

 週2のバンドクラブ。ギターを任された俺だが、あれから全く練習していない。ギターを

持ってないのもあるが、マンションで弾くのは周りに迷惑だし。ギタフリを1回やってみたが、

簡単そうなのを選んですぐ落ちたので、やる気を無くした(早)。本屋でギターの本を立ち読み

してみたが、コード進行やら指の抑え方やらさっぱりわからない。やはり経験者に聞くのが一番

だと思い、部室にて宗谷に教えてもらうことにしたのだが。

「面倒くさいなぁ」

「面倒って……オイ……」

 確か「自分が教える」って言ってたんじゃないのか?それにボーカルがどんなに良くても

演奏がダメだったらバンドとして成り立たんだろ。

「シャノンのベースがあったら平気だって♪」

「俺はどーすんだ」

「じゃあ……お茶汲みってことで♪」

 なんだそりゃ、新入社員じゃねぇんだぞ、やっぱやめようかなこのバンド……

巫琴 & 社音

「入ってすぐはそんなもんだって、すぐやめちゃうのはよくないな〜」

 結局は部員(費)稼ぎの癖に……しかし、瞳由ちゃんに薦められて入ったクラブなのに、

こんな早くやめるのは彼女に悪いし……でも何もすることないっていうのは……

「なぁ針井、教えて……」

 くれるわけ無いだろうな、あいつは。しかも今は一人で演奏に弾いてるし。しかもベースだけ。

部長はドラムをいじるわけでもなく、そのドラムを机代わりに勉強してるし。この人もあんまり

やる気ないように見えるけど、演奏はちゃんと出来てるんだよな、おかしな話だ。

「ほうじゃ、タイト君」

 不意に部長が手を止め、俺を呼んだ。

「あれから、あいつにからまれなんだか?」

 あいつ……3年の荒井田か。山藤藍子のことで誤解されて、目つけられてるんだよな。

「ああ、あいつ背が高いから、よくわかるんでさっさと避けてます」

 ……なんかいじめられっこみたいだなぁ(鬱)

「なぁに、何の話?」

「実はな……」

 でしゃばる宗谷。こいつもこいつだが、ベラベラ喋りだす部長も部長だ。

「ふーん、でもよかったじゃない」

「どこがいいんだよ」

「誤解されてることが学校中に広まって、公認の仲になれるってこと」

「よくねぇって」

 んなことになったら、マスコミとかに取り上げられてもっとウザイ生活になるぞ……

そりゃ彼女は明るいしいい娘なのは認めるが――

「でも人気があるってのはいいわね〜、あたいも注目されてみたいな〜」

「お前針井がいたらいいんだろ?」

 その針井はまだ自分の世界に入っている。宗谷のことは眼中にないようにも見えるが。

「だって、そうなったらシャノンがちょっとは妬いてくれるかなって♪」

 さいですか……ついていけんな、こいつには(--;

「でも人気になるんだったらバンドに熱入れりゃいいじゃねぇか」

「それもそうだけど……なんていうの、弾いて楽しい曲が無いっていうか……」

「演奏しがいのある曲ってなかなか見つからんのや」

 と部長。弾いて楽しいねぇ……ビーマニは叩いて楽しいけど、それだけか?やっぱり

曲がいいから叩けるのかもな。

「音楽ゲームの……」

「ゲーム音楽ぅ?なんかオタクっぽーい」

 あかあさまにイヤそうな顔をする宗谷。ゲーム→オタクと考える典型的な奴だな。しかも

それはなぜか知らん女に多いし。別にコイツにはオタがられても関係ないけど。

「音楽ゲーム、の曲だって。そっちに力入れてるからいい曲揃いだと思うよ、それに知ってる

曲なら俺もすぐに演奏出来るようになるかもしれないし」

「んー……」

 ちょっと考えてる宗谷と部長。聞こえるのは針井のベースだけだ。あいつまだ弾いてるのか。

「まあとりあえずCDとかあったら持ってきぃや」

「一応聞いてみて、ね」

 肯定な返事をした二人。つーか普段何もやってねえじゃねぇか。ちょっとは針井を見習え。

「でもなんでそんなにやる気なの?」

 ……そういえば……飽き性の俺が燃え気味なのはなぜだ。多分周りがやる気ない分、同類項に

されたくないからだろうな。


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