聞きなれない単語を耳にして、宗谷は眉をしかめる。そりゃ俺でも聞いたことのない単語だから
無理はないのだが。
「それどういう意味?」
「意味は、無い。」
なんか間抜けな答えだが、本当なのだから仕方が無い。音の感じで付けたタイトルらしい。
『ロ○ンソン』みたいなのだな(笑)
「あっそ……で、どんな曲なんだい?」
バンドクラブの部室、いつものメンバー4人(少)。練習曲を何に決めるかで迷っていたが、
俺の好きなビーマニの曲を挙げてみた。他の3人はともかく、俺が演奏に参加できるかは、
今後の練習によるが。俺飽き性だからどうだろうなぁ……曲の方は今回はカセットテープに。
サントラまだ出てないからなぁ、本当は某3のがパソコンにあるんだけど、あいにくCD-Rに
書き込むとかの装備が無い。仕方なくその音を直接ラジカセで採ってきた。ので音質は悪いのだが
なんとか聞こえるものとなった。で、それを今3人に聞かせている。
「……へー、いいじゃん」
宗谷も結構気に入っている感じだ。なにせボーカルがすごいからな、特に無音地帯が。
「ドラムも決まっとるなぁ」
と上久部長。24連打は圧巻だが、決まるとかっこいい。
「…………」
無言で聞いている針井のパートであるベースもちゃんとある。大体の曲はそうだろうけど。
2分弱の演奏を聞き終わり、テープを止める。もう一回聞いてもいいくらいなのでとりあえず
巻戻しをしておく。
「借りてたCDに入ってた TAKE ON ME もいいかと思ったけど、こっちもいいね」
そこで思い出して、自分の鞄から3rd styleのサントラを取り出す宗谷。TAKE ON MEね……
DANCE EXPRESS Hi-speedに収録されてるけど、あれの原曲を歌ったグループって、TAKE ON MEしか
売れなかったらしいな、スマスマでネタにされてるし(笑)だから4thで消えたのか?(考えすぎ)
「わいはこれがいいと思うな」
部長も賛成、針井は何も言わないが、無言を賛成としておく。なんか久しぶりに自分の意見が
認められた感じだな、というか自分から意見を言うことなどあまり無かったからな。
「じゃあこの……リスリム?で決まりね、楽譜は……」
あ。バンドの楽譜のことを忘れていた……ビーマニの曲って楽譜がでてもよさそうなのに
どこを探しても無いからな。しかしこいつらなら……
「みんなで手分けして譜面起こしね」
「……やっぱバンドするくらいだから音階聞き分けられるのか」
「やっぱって……まあ絶対音感まではいかないけど、ほとんどの曲なら時間かければ譜面に
起こせるね。まあ一番早いのはシャノンだけど♪」
……またお惚気(ノロケ)話か。しかしシャノンはペンを片手に五線譜にスラスラと書いている。
1回聞いただけなのにマジですか(汗)こいつなんでもできるんじゃねぇか?でも部長もテープを
再生しながらドラムパート起こしてるし。そっちの方が難しそうだが。宗谷は……ボーカルだから
問題はないな、歌詞は教えてある。問題は……俺か。
「ギターっていうより、やっぱキーボードね。どうせギターまだ弾きこなせてないでしょ?」
「どうせって……まあ恥ずかしながらその通りだが」
小学生のときにピアニカは弾いてたから、やっぱ鍵盤の方がわかりやすいか。それに聞いた
限りじゃ和音らしいものはなさそうだしな。
俺の譜面は針井が書いてくれた。一見簡単そうに見えるが、5年ぶりの鍵盤なんで感覚を
戻しておきたい。まあビーマニも鍵盤だから大丈夫かな?
で、部長が塾に行く時間になったので練習は次の機会に。ってまだこんな時間じゃねぇか、
部長も塾がある日に部活の日を決めなくても。
「ほとんど毎日塾や、いつものことやから慣れたけどな」
……それは勉強熱心な、俺なんて今までひとつも塾なぞ通ったことはない。馬鹿呼ばわり
されない学力さえば生きていけるだろ、というのが俺の考えだから(不毛?)
もらった楽譜を眺めながら部室を出る。空は今にも雨が降りそうなので、濡れないように
楽譜は鞄に仕舞う。
「それにしても意外ねぇ、結構センスあんじゃんあんた」
迷惑そうな針井の腕を組んで部室を出てきた宗谷。意外ってことはセンスないように見られて
たのか?そりゃ……否定はできんが(弱)
「バンドのやる気も本当らしいし、見直してあげる。ちゃんと教えてあげるよ」
「教えるってギター?でもキーボードに変わったんだけど」
「あ、そうだった(^^;」