起きれば寝汗がひどい。梅雨は湿気が多いのも嫌だなぁ、髪の毛が湿気てヘナヘナになるのは
男の俺でも気にしている。暑さしのぎにもシャワーを浴びてドライヤー。今日は雨は降ってない
ようだが曇っている。そういえば今週から夏服への移行期間だったよな。いきなり夏服で行くと
自分ひとりだけ、なんて浮いてしまうことがあるので牽制していたのだが、さすがに今日は
冬服の厚いので行く気にはならない。ハンガーにかけていたカッターシャツを取り出した。
クラスのほとんどが夏服になってたのでちょっと一安心。なんか一気に「白さ」が増したような
気がする……男子は白のカッターシャツ、女子はやっぱりセーラーだが半袖で白い。教室が
明るくなって気分も……晴れるわけではないのだが。
そして薄着になっても暑いものは暑い。この時期からはハンカチかタオルを持ってないと
顔が汗まみれになって不快指数ドンさらに倍(古……)なので必須だ。あぶら取り紙でも持ってりゃ
よりいいのだろうが俺はそこまでオシャレじゃないぞ。下敷きをうちわ代わりにする手もあるが
(うちわは余計に暑くなる、という理論は成り立つとしても、俺はあおぐぞ)、先生によっては
目障りか怒ったりするので、先生が黒板に向いているときだけあおいで見たり。
しかし、例え暑苦しくても腹が減るというのは、健康の証拠でいいものだろうか……
食欲はさすがに落ちるんだけど、食べな夏前にバテるぞ。というわけで4時間目終了後は
パンで済まそうとは考えずにいつもの食堂へ。
さすがに空いているようだ。それに並んでる人の大半は麺類とか喉に通しやすいものばかり。
学校が終わるまでは持つだろうが、5時くらいに腹が減りだすんじゃねぇの?かく言う俺は
カレーライス(笑)辛いものは食欲を増進させるからな。といっても辛いの結構平気だから
そうなってるのかわかんないんだけど(ところで辛いものばっか食べてると「痔」になりやすいって
本当っすか?(汗))。
「よくそんなもの食べれるわねー、蒸し暑いのに」
背後からの声を聞いた途端、反射であたりを見回す。あいついねぇだろうな……
「ってなにやってんの?」
「荒井田がいないか見てんだよ」
声の主は山藤藍子。夏の制服で、持っているお盆に載っているのはきつねうどん。放課後仕事が
あるだろうに、そんなので足りるのかよ?とは聞いてみたかったが、学校では仕事のことは
忘れたいだろうからやめておく。それに、
「前も言っただろ?君のそばにいるとあいつがキレるんだって」
「なんで小声(^^; 大丈夫だって、今日は暑苦しいから来ないように言っておいたから」
そういえば荒井田をはじめ、とりまきたちはいない。さすがにあいつらも気力が出ないか。
「というわけで、今はゆっくりお話ができるよん」
いや、安全とわかったからって別に話さなければならないことなどないのだが……彼女は
隣に座ってうどんをすすり始めた。半分うどんを加えながら
「んむ、この学校の夏服っていいよねー」
「……食べ終わってから喋れよ」
芸能人とか以前にマナーとして、な。しかし夏服――普通にあるような制服だとは思うのだが。
というか女子の制服をマジマジ見たこと無いし。知ってたら余計怪しいだろ。
「この制服で、ここの高校に決めたんだ」
「……そんなにいいの?」
「少なくとも、今まで着た制服の中では一番いいよね」
ああ、ドラマとかでね……しかしドラマよりいい制服なのか?別にドラマの様に特別仕立てって
わけでもないし。むしろドラマと違って普通だからこそ、それを選んだのだろうか?他の学校は
新しい制服にどんどん変えてるみたいだが、この学校は開校以来この制服らしいからな。
「あ、何見てんのよ〜」
「べ、別にみてねぇよ」
そんなことを考えながら彼女をぼーっと見てたらつっこまれてしまった。こんな光景を荒井田に
見られてたら闇討ち食らいそうだな(汗)それにしてもさすが女優、何を着てもよく映るよな……
やっぱ生まれつきそういう才能みたいなのがあるのだろうか。でも維持するための努力もしてるん
だろうな。「性格は顔に出る」という言葉もあるし(少なくとも俺はそう思っている)。彼女は
誰に対してもおおらかに接しているのだろう。無愛想な俺に対してこうなのだから。ドラマの
迫真の演技を見て信じられないくらいに。
食後彼女と別れて教室へ。ああ、また雨降ってるな……まあ今日はちゃんと傘はあるが。
男子のカッターシャツはいくつも替えがあるけど、女子のはひとつだろ?濡れたら困るよな、
冬の紺は汚れは目立たないけど、夏は白だし。でも白って雨に濡れると透けるって話だが……
「テツ君?もうすぐ授業始まるよ」
瞳由ちゃんの声で我に返った。俺はエロ親父にはなりたくないぞ……というか男全員がそういう
妄想をしてることを願うが(願うな)
「あ、ああ、すぐ行くよ」