晴読雨読


 今日も雨、今日も佑馬と学食。別に飽きてはいないが、あまり同じことばっかだとつまらんな

(それを「飽き」というのかも)、まだ授業まで時間はあるし。

「な、テツ、図書室行こう」

 佑馬も暇か、そんなことを言ったが、俺もこいつも漫画くらいしか読まないのに一体何を読む

つもりだ、文学作品なぞ読んでも眠くなるだけだぞ、飯食ったばっかだし。

「きっと七希菜がいるだろうから♪」

「そういうことか」

 彼女はこういう雨の日でも関係なくよく本を読んでいる。中学生のとき、1年間で一番図書室で

本を借りて読んだ人になって表彰されてたぐらいだ。というかそんな賞作るなよ。どうせ俺は毎年

0冊だが。というわけで高校の図書室の位置さえも知らない。佑馬は七希菜ちゃんについてって

たまに本を借りてるらしいから今先を歩いてもらっているのだが、果たして佑馬はちゃんと借りた

本を最後まで読んでるのだろうか?七希菜ちゃんに勧められた本なら、無理しても読んで感想まで

つけるだろうな。

 どうやら図書室は最上階の4階らしい。1階の食堂から階段で上がってきたのでやや横腹が痛い。

授業まで30分弱か、暇つぶしにはなるかな?佑馬が図書室の扉を開けた。廊下のじめじめして

蒸し暑い空気と違って室内は空調が効いているため冷っとしてて気持ちがいい。しかしこりゃ

昼寝にもうってつけだな、寝過ごしそう(^^;

「あっ、佑馬君。それにタイト君」

 机に向かって無言で本を読んでた彼女はこちらに気づき、小声であいさつした。室内では他に

数人が同じように本を読んでいた。俺たちはその人たちに気遣ってすり足気味で彼女の元へ。

「何の本読んでんだ?」

「中国の歴史文学を……」

 うへぇ、やっぱ難しそうな本を……さすがに漢文じゃなく日本語訳されてるとはいえ、人名は

やっぱり難しい漢字が使われてるし(だからそれは俺がつっこむことじゃないって)。文面から

見ると中国には珍しく?戦争してるわけじゃないな、ここだけじゃわからんが。彼女は血生臭い

ことが苦手だし。料理好きの彼女も生の魚だけは捌けないらしいからな、でもあれは男が捌くものか?

七希菜

「僕たちも本を借りようかなってさ」

「オイ佑馬……」

 俺は別に借りんぞ、と言おうとしたが、どうせ機嫌取りででた一言だろう、それ以上言及は

しなかったが、そのせいで俺も本を探さねばならなくなった。どちらにしろ立ち読みする気だったが。

「なあ、図書室って漫画も置いてあるんだな」

「なんか古そうなのばっかだけど」

 アトムとかな(^^; でも小説だって最近のファンタジー系の大量に置いてあるし。生徒からの

要望か?でも自分が読んでる次の巻が借りられてて読めなかったら結構鬱になるからやめとこう。

あとは……数学パズルとか?見てみると面白かったりするけど借りてまで、って本じゃないな。

やっぱねえぞ俺に合った本……

「見つかりました?」

 読書が一段落ついたのか、七希菜ちゃんが声をかけてきた。佑馬の方はもう決めたのか、

カウンターにてカードに書き込んでいる。時計を見ればもう15分もないじゃないか、そろそろ

決めないと。だが、

「んー、あんまりねぇなぁ……」

「推理小説なんてどうですか?シャーロックホームズもありますよ」

 ホームズか……アニメで(なぜか犬の)見たことはあるが、それはあくまで漫画だからな。

でもこういうのって推理とはいえ全然当たらないんだよな〜、意外性ばっか出てきて。

「よかったら感想聞かせてください、実は私読んでないんです。殺人はちょっと、ね(^^;」

 んなこといったらサスペンス全部無理じゃねぇか……事実なんだろうけど。俺が読んで

面白いとわかりゃ彼女もそういうのに耐性つくようになるかもね(笑)ある意味俺が毒味役って

感じもしないでもないが。

「ま、とりあえず借りとくよ。最後まで読む保障はないけど」

 結局俺も1冊借りることに。七希菜ちゃんは4冊も。2週間で最大4冊借りられるのだが、

彼女なら1日1冊で読んでしまうだろうな。やっぱ読書慣れしてるとテスト問題の長文も

スラスラっと読めちゃうのだろうか。

 

 あれほど読みそうになかったのだがさすがコナン=ドイル、こんな時間(深夜1時過ぎ)まで

読んでしまった。何も考えずに読んでいるだけでも読む力が付いているような気もする。

外はまだ雨が降っているのだが、雨の音は読書に合っていると思う。さすが「晴耕雨読」と

いったところだな。彼女の場合は「晴読雨読」だろうけど(^^; 彼女が眠そうな顔を見たことが

ないので、今日のはさっさと読んでもう寝てるだろう。俺ももう寝るか。……ところで佑馬は

何を借りたんだ?


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