探偵


 今はまだ雨でちょっとは涼しいが(蒸すけど)、梅雨明けたら本格的に夏だ、暑くなるぞ(当然)。

でも、私立なんで各教室にエアコンついてるので快適♪体育はプールになるだろうし。登下校でも

家が近いおかげで7・8分我慢すりゃいい。問題は……今向かってるバンドクラブの部室だ。

こんなプレハブにエアコンなぞつけてくれないだろうな。部活の数が多すぎて割り当てられる

部費も少ないだろうし。それにこのクラブは4人だし(汗)

 今日は俺の気持ちと同じで曇っている。さすがに泣くまではいかないけどな。で、その部室の

プレハブへ到着した。扉の鍵は――開いてるみたいだな。いつも通りノブをつかむ。

「ういっす」

「あ、なんだタイトか」

 なんだとはご挨拶だな……そして予想できる返答。先に来てたのは鍵当番の宗谷で、待って

いるのは間違いなく針井だな。というわけで掃除してるみたいだけど元気が無い。性格は

アレだが実はコマ目なところがあったり。料理とかは……どうか知らんが。

 俺も何か手伝おうとは思ったが、このクラブに来て間もないのでどこに何があるかまだ把握

できていない。勝手に触って壊したりしたらいけないのでとりあえず担当のキーボードの台でも

調べておくか……我ながら意味のねぇ行動だ(--;

「ねぇ」

 何か手伝って欲しいのか、珍しく宗谷が声をかけてきた。まあ部室に2人しかいないんだったら

自動的にそうなるだろうけど。

「なんだ?何すりゃいい?」

「え?……そうじゃなくって」

 急に真顔になって寄ってくる。なのに視線はなぜか窓の方を向いているが。

巫琴

「シャノンのことなんだけど、最近あたいに冷たくなぁい?」

「は?俺はいつも冷たいと思ってるけど」

 何を言い出すかと思えば……冷たいっつーか宗谷に限らず誰に対しても無愛想だと思うが。

「あんたわかってないわねー、シャノンの表情。1年の時はあたいに照れたりしてたのよ」

 照れ……似合わねぇ〜(ぉ てかそれってわかりづらい方だと思うんだけど。やっぱ毎日の

ように針井にベッタリな宗谷だからわかるもんなんだろう。つまりあまり面識の無い俺が

わかるはずもないと。

「あっそ……そりゃ飽きたんじゃないの?」

 こんな女に毎日付きまとわれたらまず間違いなく俺は飽きる(多分)。

「まさか……別の女ができたとか」

 想像だけで真っ青になる宗谷。そりゃあのルックスならもてるだろうが、針井自身は女に

興味なさそうだし。つーか「別の女」って自他が認める針井の女なのかよ?

「というわけでタイト、調べてくんない?」

「? 何を?」

「シャノンに別の女がいないか」

「あのな……」

 つまり探偵みたく針井につきまとって秘密をのぞいて来いってことか?何が悲しくて男の

ストーカーなんぞ……いや女だからってストーカーしたいわけじゃないぞ、余計に警察に

つかまるっての。それに俺自身に興味が無いのにやる気がでるはずもなく。

「面倒くせぇ……本人に直接聞いてみれば?」

「や、やだ、そんなことできるわけ無いじゃない……」

 もし本当にいたら、ということを言われるのが恐いからだな。じゃあ俺が調べて結果報告

しても「信じない」とか言うんじゃねぇだろうな……?

「じゃあ……自分で針井を見張る、というのは」

「だって、やっぱ罪悪感が残るしぃ」

 俺はそんなことやっても罪悪感無いと思ってんのか(怒)……まああいつなら気づかれて

これ以上仲悪くなってもデメリットはあんまりないけど(ぉ どちらにしろこの女の願いを

断わるのは難しいな。こうなりゃ表向きは調べる振りして、何も見つからなかったことにしよう。

その方が2人にとってもいいだろうし。俺にとっても(笑)。

「ま……いいけど、何も出てこんと思うぞ」

「やってくれるのね! ちゃんとそれなりの報酬はあげるから」

 報酬て……手作りの料理なぞ渡されても困るぞ、針井に食べさせる前の毒味味見とか

だったらなおさら……つーか報酬で手料理、ってなんで出てきたんだろ?他の物ったって……

ギターの爪?とかもらってもどうしようもないぞ、弾けんのだし。

「や、宗谷はん。タイト君も来とったか」

「…………」

 話が終わってしばらく後、上久部長と針井もやって来た。相変わらずの仏頂面な針井の表情

なんてわかる気配すらなかったが。

まかせたよっ!

「……ハイハイ」


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