もう一度


 補習は7月いっぱいまで、それからは8月の下旬までない。そこでやっと本当の夏休みに入る

わけだ。それでも学校は部活のために開放されてるんだけどな。でも週1・2度のバンドクラブ

しか入って俺は何をしよう……やっぱビーマニ三昧とか(ぉ それかしばらく実家に帰るかな

(実家と言っても、同じ都道府県内だが)、親父や妹ともしばらく会ってなかったし。じゃあ今の

内にゲーセン三昧を♪。ほとんど毎日のようだけど……マンションの自室にに帰ったら一応制服を

着替えてから、チャリで向かうことに。

 漕いでると、前方を見たことのある後姿が歩いている。あれってやっぱ……

「あおいちゃーん

 ブレーキが効きにくくなってしまったチャリなので、ぴたっと止まれずかなり通り過ぎて

しまった。驚いたようで立ち止まってるあおいちゃんの元へ、チャリにまたがりながらも

後ろ歩きして戻る。

「今帰り?」

「はい……タイトさんは」

「ん?……ゲーセンに(^^;」

 まあ初めてあったのがゲーセンから出てきたところだから、俺がゲーセン行くのは知ってた

だろうけど。そういえばあおいちゃんってゲーセンの前通って家帰るんだよな、ということは……

「途中まで道同じだろ?一緒に行こう」

「……はい」

 俺はチャリを降りて押しながら並んで歩き出した。道路の右側を、あおいちゃんが右側、俺が

その左側に、チャリを右側に押しながら自分は歩道より左側をあるいている。俺はそんなに背が

高いというわけでもないが、段差があってもまだあおいちゃんの方がちょっとだけ低く見える。

あおい

「あおいちゃんは、8月は何かすることある?」

「部員の皆さんと……天文台へ流星群を見に」

「流星群って……しし座?」

「それは11月中旬です……見に行くのは8月2週目あたりのペルセウス座のです」

「……聞いたことないな」

「今日ならみずがめ座の流星が見えるかもしれません……」

「ああ、それなら……って、今日あるのか?!」

 

 星の話で盛り上がった(彼女はそうは見えないが)後、ゲーセン前に到着。入り口には相変わらず

UFOキャッチャーが並んでいて、いろいろな人形が入っている。ゲームのキャラクターものが

多いよな、って俺が盗った取ったトラン人形もそうだけど。そして以前彼女に取ってあげた

丸いのや三角の「物体シリーズ(俺命名)」もわずかながら残っている。

「ところで、あの丸いの……」

「サテルです……まだ見つかってません」

 無くなったのなら仕方ないけど、あれほど大事にしてくれたのなら、またあげたい気がした。

前のように1発で取れるのはもう無いだろうが、なんか取れそうな丸いのが1つ見えたので、

なんとなくやる気がわいてきた。

「よし、また取ろう」

 あおいちゃんの返事も待たず、サイフから500円玉をとりだす。100円で1回だが、

500円を入れると6回なのでお得だ。まあ企業はそっちの方が収入がいいんだろうけど。

俺は今までに無く真剣に縦横を見比べながら、アームを動かす……

 

「あの、タイトさん……いいですから」

「……え?あ、もう帰る時間?」

 気が付けば30分くらい経っていた。数えてみれば筐体に飲まれた金は4000円……

ビーマニより減ってるし(汗)まあ金に関しては俺は大丈夫なのだが……親父の漫画のキャラ人形が

こっちを睨んでるような気がした。

「いえ……お金が……」

「ああ、気にすんなって、でも取れねえな……やっぱ店員にもらうか」

 ふと見れば、店員をはじめ女子高生ら数人がちょっと離れた所からこちらの様子を見ていた。

確かに男がUFOキャッチャーするのは変かもしれんが……女の子連れならあること、だろ?

でも店員に頼んで丸いのをもらったあと、ゲーセンに居づらくなってあおいちゃんと一緒にその場

から去ることに。

「ごめんなさい、私のせいで……」

「いや、俺が勝手にやったことだし……ほら」

 俺は彼女に球体を渡す。一瞬デジャヴを感じたが、疲れてるせいではない。

「……ありがとう」

「今度は無くすなよ」

「はい、大事にします」

 名前をつけるほど大事にしようと思っている丸い物体。理由は知らないが、ともかく大事な

ものがあるってのはなんかうらやましいな、俺も何かあったらいいんだけど、どっちかといえば

すぐものを壊しちゃう方だから……あとは大事な人とか――まあそれは「愛する人」とかに限らず

友達とかも入るんだけど。彼女は俺の大事な人の1人に入るんだろうな。


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