してた割にはな。たまたま選択肢で当たっただけかもしれんが。ここは佑馬に見せびらかして
やりたいところだが、瞳由ちゃんの手前今回はよしておこう。いい時もありゃ悪い時もあると
いうことだ。
「おーいテツ〜!」
さっさと帰ってビーマニ♪と思って学校の玄関を出たところで、後ろから佑馬の声。
まあいつ行っても行列出来てるだろうからいいんだけどさ……振り返って待っていると、
七希菜ちゃんも出てきた。ついてきてるというよりは、佑馬を止めようとしているような
顔だが……先に近づいてきた佑馬の手には、成績表らしきものが捕まれていた。
「見てみろよコレ!」
自慢げに成績表を広げる。しかしこの前俺とテスト見せ合いして、俺の方が点がよかったのは
覚えているはずなのだが……見てみると、スゲェ得点……数学II・Bはもちろん、あのWriting
まで100点だし……その時点で佑馬のではなく七希菜ちゃんのものだとわかり、佑馬が見せびらかす
理由と言えば、順位が1位ということだ。
「ちょっと、佑馬君たら……」
困ったような照れたような表情で小走りでやってきた七希菜ちゃん。そりゃこの娘がそんな
見せびらかすような性格じゃないしな。七希菜ちゃんの自慢は佑馬の自慢か?
「どうだ、すごいだろ!」
「そりゃすごいが……何度見せられた?」
中学の時はもちろん、高校生になっても七希菜ちゃんはよく学年トップになる。その度に
佑馬が教えに来るので、もう慣れてしまっている。そして七希菜ちゃんは
「『見せて』って言われてつい渡したらこれなんだから……」
付き合いだしてもこれだから……いい加減七希菜ちゃんが嫌がってるのに気づけよな。
「でも、勉強できるっていうのは見習いたいよな、なんか特別な勉強方法とか?」
『学問に近道はない』と校長は言うが、実際は俺たちが寄り道してる(遊んでる)だけで、
真っ直ぐ進めば近道と同じ意味に取れる。つまり集中力とかつければ記憶力もつくんじゃねえの?
「そうですね……これといっては無いかな、普段の読書で得られる知識って結構ありますから」
なるほど、趣味が実益を兼ねてる(?)ってのはいいよな、俺はといえば……ビーマニ好きでも
音楽の譜面がよめるってのは関係ないし、一般的な大学入試には役に立ちそうもない。指を
動かせば脳に刺激があってよいとか聞いたことあるが、実感はわかないし……
「読書か……それこそ集中力ないとな。息抜きとかしないのか?」
「息抜き、ですか?」
「例えばマンガを読むとか、ゲームをするとか、カラオケに行くとか」
言ってから、どれも七希菜ちゃんのイメージに合わないような気がした。絵がいっぱいより
文章が好きな娘だし、あんまり素早い指先の動きは料理じゃないんだからできないだろうし、
下手なわけじゃないけど他人に歌声を聞かせたくなさそうだし。
「そうだよ、それこそ僕が聞きたいことだね」
佑馬も興味津々。いやこの場合は、俺の方が興味津々なのだが。しばらく考えた挙句、
七希菜ちゃんは、
「クラシック音楽聴いてます、前にお店でCDを安売りしてたから(^^)」
うわぁ、七希菜ちゃんらしいというか、ベタすぎというか……まあ最近のポップスよりは
穏やかな曲が多いから落ち着くことはできるよな。俺で言えばビーマニでもm-floなどの
HIP HOPとか。……ビーマニは関係ないが。
「僕はああいうの聞くと眠たくなるんだ、だから勉強してるときにかけてると寝ちゃって」
「じゃあ眠れない夜にかければいいじゃん」
「それは逆に気になって眠れないことない?」
「……そりゃそうだ(笑)」
結局3人してゆっくり歩いて帰った(距離は短いが)。それにしても佑馬、あれほど
つきまとわってあっているのに、七希菜ちゃんのことほとんど知らないんだな。
まあ俺のようになんでも聞きすぎて相手を傷つけるよりはマシかもしんないけど……
相手の表面だけを見て好きと言うよりは、内面までもを好きになれてこそ、本当に付きあうって、
彼女無い暦17年の俺は思うんだけど。あまりに相手を完璧だと思うあまり、相手の欠点を
見てしまったときの落胆がどれくらいのものなのだろうな。