体育館でオープニングセレモニー、生徒会長が壇上で宣誓。周りから一斉に拍手が沸き起こる。
どうもこういう雰囲気になじめない俺は乾いた拍手をするのみ。学園祭は楽しみなんだけど、
いざ始まってみるとそんなにすることなかったりするんだよな……でも今年は去年よりも楽しめる
ような気はしている。
俺たちのクラスのお化け屋敷はこのあとすぐにやるらしく、綿貫の宣伝、またカップルだと
安いこともありかなり人気があるらしい。交代で驚かせ役を決め、1時間ごとくらいで交代する。
俺は実は初っ端から中に入るんだけどな。初めの方が空気がこもってなくて蒸してないだろうし。
セレモニーが終わってさっそくお化け屋敷へ。製作途中で何回も試していてわかっていたのだが
やはり暗すぎ……客には懐中電灯を渡すのだが、こっちはそうもいかないので客の顔すら見えず。
まあ並べた机の隙間から足が見えるので大丈夫なんだけど。俺の役はお化けに扮して直接驚かせる
のではなく……あ、さっそく来たな――
ッパーン!!
「うわぁっ!?」
なんだ男かよ……今俺が鳴らしたのは新聞紙で作った紙鉄砲。驚かせるなら文字通り驚異的な
威力。これは瞳由ちゃんのアイデアだったりする。これがなかったら笹持って揺らすくらいしか
なかったから、まあありがたいネタだな。しかし教えてもらうときにいきなり背中で鳴らさんでも
……(^^; お、また来たな。
ッパーン!!
「っきゃっ!?」
やっぱ女の子を驚かせる方がいいよな……って、これじゃ夜中にコートの中見せる変質者と
同じだ(爆)本物のお化け屋敷のスタッフも同じなんだろうか……?
「暑ちぃ……」
初めの1時間だろうが、やっぱり蒸す……交代時間に出てきたが、外はかなり涼しい。
で、見てみると開始1時間ですでに結構な行列が……もう成功と言ってもいいんじゃないか?(笑)
まあお化け屋敷はここしかしてないし、去年も好評だったって聞くし(俺は行かなかったけど)。
「お疲れ様。すごい汗ねぇ(^^;」
瞳由ちゃんが入り口で待っていて、タオルを渡してくれた。もちろん彼女のものではなく、
学園祭用に一人一本渡された特製のタオルだ。お化け屋敷に入る前に彼女に渡して、氷で
冷してもらっていた。
「サンキュ……ああ、気持ちいい」
「そんなに暑いの?」
聞いてきた瞳由ちゃんは、俺と入れ替わって次にお化け屋敷の裏方に。役はやっぱり紙鉄砲。
「やばいほどに(汗)気休めに氷柱がおいてあるけど、そのそばの方がいいかもな」
思ったよりも巨大な氷柱が3本、開始前に運ばれてきたが、当然ながら遠くまで涼しく
させるものではなかった。
「そうね……あ、それとコレ」
彼女が後ろでに持っていたものを俺に見せる……もう少しで吹き出しそうになった。
アートクラブの特別号、表紙は堂々と親父の漫画のキャラだったからだ……
「私頑張ったからちゃんと見てよね」
そう言って手渡されると、お化け屋敷の中に入っていった。仕方なくパラパラめくっていくと
……サインに「まいるど」と書いているのが目に入り、そのページに戻してみると……
女、いやこいつは男だったな、イェンタっていうキャラを描いていた。どれだけ人気があるか
知らないが(知りたくもないが)彼女が好きなキャラの一人なのだろう。ただ「こっち系」ばっか
好きだったら困るのだが(謎)
一応見たということで冊子は、お化け屋敷の入り口で入場料を受け取っている女生徒が座って
テーブルに置いた。一応クラスに一冊だからな。さて、バンドは2日目の明日ということで
今日はヒマだ。普通の人ならいろいろ見回るんだろうけどな……あれ?
「お、佑馬に七希菜ちゃん、さっそく来たな」
「うん、それにしてもすごい人気だね……それに外からも悲鳴が聞こえてくるし」
「そんなに怖いんですか?」
「まあ、半分はいきなり現れるってんで驚かせてるようなもんだから……驚いてなくても
一応驚いた振りしてくれよな(笑)」
2人と別れたあと……何も考えも無くにぎやかな所に出てきたが……適当に回る前に、
友達の所に寄った方がいいか。といっても友達って少ないんだった(寂)佑馬の将棋は、ただ
観戦するってのも時間の使い方が無駄なんで後にするとして、七希菜ちゃんら調理部の
食堂は、といっても昼までまだ時間はあるし……そうだ、同じ調理部のあおいちゃんは、
天文クラブにも所属していたな、きっと星を撮った写真とかがあるんだろう、行ってみるか。
やっと学園祭を満喫できるような気がしてきた。