休憩終了


「……革命、です」

「うわぁ!強いカードばかりだったのにぃ!」

「またあおいちゃんの勝ちだな……って」

あおい & 佑馬

 なんで俺たちは大貧民なんかやってるんだ?隕石が落ちだしてからもう2時間以上経っている。

本来ならバスに乗ってセンター試験会場近くのホテルに、のはずなのだが、この様子だと

明日のセンターも受けられないだろうな。もっと遠くの、隕石の被害を受けてないところへ

行くというのもあるが、生徒全員が集まらなきゃ意味がない。全員どころか、被害に遭った

人もいると言うのに……

 そういえば何年か前神戸でおきた地震のときもこんな感じだったのだろうか。受験生たちは

センター受けた後だったかもしれないが。それに今回の場合はまだ「1次災害」が起こっている

最中であるというのも……いや、災害じゃなく人災だけどな。

 三樹男さんを待って3〜40分になるのか、ちょっと遅い気がしたが2人ともじっとしていた。

やがて佑馬が近づいてきて――七希菜ちゃんたちは親類と合流できたようで、その中にいるのは

流石に場違いということで俺のほうへやってきたと。そして、暇だからと持ってきたトランプで

こうやって遊んで……る場合かよ?

「にしても七希菜を助けてくれた人の娘だなんて……全然似てないよね」

 最後まで残った佑馬がカードを切りなおして、配りながらあおいちゃんの方をじろじろ見る。

俺が佑馬に彼女を紹介するときにそういったのだが、

「そんなことがあったのですね……どうして言わなかったのですか……?」

 詳しく言わなかった俺が尋ねられる。説明するのが苦手なだけ、というのもあったけど、

三樹男さんが怪我してないか、などと心配させたくなかったのもあった。だがそれを言うのも

恥ずかしいので

「その襲ってきた奴はあおいちゃんと面識のない奴だから、関係ないと思って」

と適当な理由を言って済ませる。校内で悪名高い奴だったから名前くらいは彼女も知って

いそうだが。それにしても三樹男さん……まさか荒井田の奴が目を覚まして、

彼に襲い掛かったとか……いや、武器らしいものでも持ってない限り三樹男さんには

勝てそうもなさそうだし。となると何が……

「照下さん?照下さんの番だよ?」

「……あ……すみません」

 ぼーっとしていたあおいちゃんに、カードを出した佑馬が声をかける。さすがにあおいちゃんも

父親が心配なのだろう。母親や弟とも別々という心細さもあるだろうし。俺はカードを置いて

立ち上がった。

「テツ、トイレか?あ、カードは見るなよ」

 何もわかってなくてカードを隠す佑馬を小突いてから、あおいちゃんに手を貸す。

「やっぱり、三樹男さんを探しに行こう。心配なんだろ?」

 俺もこの後何をすべきかわからないのは困る。やはり一番事情を知っている人がいないと

話が進まないしな。あおいちゃんはぼーっと俺の手を見ていたが、お辞儀をするように

うなずき俺の手を取った。

「え……探しに行くの?」

 せっかく安全(かどうかは本当にはわかっていないだろうが)な場所に来たというのに、

という顔をする佑馬。自分もどうするか少し迷っていそうだが、

「お前は七希菜ちゃんのそばにいたいんだろ。俺たちだけで行くからさ」

 2人じゃないと今後のことは話せないしな。足手まといというわけでもないが、

もしものときに他人を守っている余裕はない。できるだけ少人数での行動をな。

いや……あいつなら、あいつのためには俺は……自分を犠牲にしてまでも守れるだろうか。

「あの……もし入れ違いになって父がここに来たら……」

 あおいちゃんが佑馬に向かって頼みごとをする。三樹男さんと面識があるのは佑馬と四季さん

くらいだからな。七希菜ちゃんは気絶していたから……その辺を説明するとまた思い出しそう

なので、この場にいないのが幸いだ。

「私たちは御麻さんのところに行ってます、とつたえてくれませんか……」

「みあささん……だね、わかった」

 恩人の娘に快く承諾する佑馬と分かれて、俺たちは体育館の外へ向かう。

「御麻さんって?」

「父の助手をしている人です……父が別れる前に、もしものことがあれば彼を頼りなさい、

と言われたので……」

 なるほど、その人に会えば三樹男さんくらい衛星のことをよく知ってるかもしれないな。

だがまずは三樹男さんを探してからだが。


Next Home