探しびと


 俺たちが対岸へ向かおうとする間にも隕石は降ってきた。雨あられというわけでもないが、

1分間に2〜3個くらいだ。あれからは俺たちの近くに落ちてこないのは幸いだが、

代わりに誰かが被害を受けているのだから安心していられない。

「さっきは……ありがと」

 橋を探して歩いているとき、瞳由ちゃんがそう言った。さっきの隕石から見を守った

ことだろう。あのとき自分だけ伏せてたかもしれないのだが、彼女を庇ったのは偶然、

何も考えずに飛びついてたんだよな。それをしなければ彼女も破片を食らってたろうから……

本当にいい行動をしたなと自分でも思う。

「でもよくわかったよね、危ないって」

 続ける瞳由ちゃんの言葉に……俺はは内心冷や汗。あれが隕石だと先に予想していなければ

あの行動には移れない。というか俺は隕石だと知っていたのだ。なぜ知っているのかと

問われれば、1から話さなければならない――隕石を落とす人工衛星があって、

誰かがそれを使って街を破壊しているということ。でも今はその時期じゃないよな、

もっと事情のわかる人に会ってから……

 ――そうだ、三樹男さんなら衛星のことをよく知っている。彼は衛星を作った研究所の

メンバーの一人だからな。そして彼らが起こした事件に俺は巻き込まれることになったのだが、

今は彼も考えを改め、衛星の精度を完璧にするためにまた研究所に戻っている。

彼の仕事ならもう完成してもおかしくないと思うが……衛星が暴走したとも考えられるよな。

「テツ君?どこ行くの?」

 いつのまにか俺は瞳由ちゃんを無視して一人考えながら歩いていたようで、後ろから声を

かけられる。振り返れば彼女が橋の前できょとんとして立っていた。……ああ、対岸への橋が

見つかったのか。俺はゴメンゴメンと言いながら小走りでそちらへ向かう。

 

 学校に着くまで、隕石の落ちた跡は見当たらなかった。近くに落ちたのはあの交差点の

だけだろう。あそこに落ちたのは偶然か、はたまた狙って落とされたのかもわからない。

やはり三樹男さんに会うしかないが……彼も無事とは限らない。だれかが隕石を操っていると

したら、研究所の人たちはそれを止めるはず。それが出来てないということは、彼らの身にも

何かあったと考えられる。

 それに生きているとしても、どこにいるか連絡が取れない……さっきから携帯電話は

全く繋がらない。アンテナがやられたか、皆が電話を使ってて回線が混雑してるか。

でもひとつ望みはある。彼の娘のあおいちゃんは俺と同学年、センター試験のために

学校へ来ているはずだ。彼女の家はあの交差点とは逆の方向にあるから、あの隕石で

被害は受けていないだろう。だからといって別の隕石が彼女を襲ったかもしれないが……

 とにかく彼女が来ていることを祈って、学校を目の前にする。やはりというか校門には

先生たちが集まっていて、生徒たちだけでなく近所の人たちの避難を促している。

俺たちも押されるように体育館へ。学生はもちろん、荷物を持って来た人たちも目に付く。

俺たちも泊まりのための着替えは持っているのは不幸中の幸いというべきか、まあ俺は

マンションが近いからすぐに帰れるが、出歩くのは危険だよな……

「テツ君、私友達探してくるね」

 そう言って瞳由ちゃんは軽く手を振って、体育館の中へ歩いていった。少し寂しい気もするが

俺はあおいちゃんを探さなくてはならない。瞳由ちゃんと一緒にいるとまた説明が面倒に

なってくるからな……

「あっ、テツ!」

 探そうと思っていた矢先、また声をかけられる。振り向けば荷物を持った級友、

名倉佑馬だった。よくつるんで遊んでいる仲だから、俺を見つけた彼は声をかけたのだろうが、

その表情は友達を見つけた安堵よりも不安の方が多く表れていた。

「無事だったか……ひどい事になったな」

 あくまで事情は知らないふりをして話し掛ける。中学からの仲だろうが容易に話せる

ことでもないのだ。

「うん、さっきあの交差点に隕石落ちたみたいで……僕は先に来てたから助かったけど」

 こいつは修学旅行とかイベントがあるときは早起きして早く来る性質だったよな。

まあそんなことはいいとして、ふと何か足りない気がした。こいつの幼なじみで、

惚れてる女の子……千代川七希菜ちゃんがいないことだ。俺よりもまず彼女のそばに

いてやろうと思うはずなのだが。尋ねてみれば

「そっ、そうなんだ、七希菜はまだ来てないみたいで……もし、もしあの交差点で……」

佑馬 & 七希菜

 佑馬は今にも泣きそうだった。ちょっと大げさな気もするが、それは俺も心配と思った。

彼女とも中学からの付き合いだから放っては置けない。無事か確かめたいし、無事なら早く

避難させなければならない。でも俺は合流しなければならない人が……どうしようか。


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