相合傘


 ザァァァァ――……

 残念ながら、学校終わっても雨は降り続いてる。もしかしたら途中で止んでたかもしれないが、

意外と授業に集中してて忘れてるものである。ちなみにこの学校は私立なので掃除は企業に

任せてあるので生徒は掃除しなくていい。まあその分納入金が増えるのだが。だから他の学校より

少し早く放課後となるので、ゲーセンとか空いてたりするのだが、今日のような雨の日には

さすがに行く気にはなれない。

「テツ君、また明日」

 雨が降ってるのを窓からぼーっと見ていた俺に声をかけた瞳由ちゃん。きっと傘持ってるんだ

ろうな……

「これから――帰り?」

「うん」

「あのさ……」

 佑馬とか男友達なら抵抗無く言えることなのだが、女の子には少し恥が残る。まあ濡れて

帰っても近いから風邪ひくことも無いんだろうけど……

「今日傘忘れちゃったから、入れてくれないかな?」

「…………」

 彼女はちょっと驚いているみたいだ、俺が入れてくれと頼んだからか、朝から曇ってたのに

傘を持ってこなかったからか。それは遅刻しそうだったからな……

「いいよ。」

 快諾してくれた。これ断られたらとんでもなく嫌われてるということなのでちょっと

ホッとした。それに隣同士だしな。

 

 彼女の傘は真っ赤だった。他にもカラフルな傘を差してる生徒もいるが。雨は相変わらず

――シトシトとザーザーの間くらいの強さで――降っている。二人は学校を出た。彼女が

傘を持っているが、俺の背の高さに合わせているためちょっと腕が高いような気がする。

そして雨はちょっと斜めに降っているため、彼女は気づいていないかもしれないが背中に少し

かかってしまっている。

瞳由

(こういうときは俺が持ったほうがいいんだろうが……それこそ俺に合わせてしまって余計に

瞳由ちゃんが濡れてしまいそうな気がするな……でも腕もだるいだろうし……)

「テツ君はクラブ決めた?」

 考え中に不意に話し掛けられ、何を考えてたのか忘れてしまった。とにかく今の質問に答える。

「いや……まだだけど……」

「私は、アートクラブに入ろうかなーって」

 アートクラブ……美術部と同じように絵を描くのだが、古典的な絵画じゃなくて、イラストとか

アニメのような絵を描くクラブだ。もっとアニメ寄りになると漫画研究会になるのだが。

「絵、描くの好きなの?」

「うん、マンガみたいな絵だけどね」

 俺もそうだったり、つーか親父の絵を見て落書きしてたから、結構似たような絵柄になって

しまった。だからばれないように最近は人前でマンガ絵は描かないことにしている。のでできれば

この話題は変えたかった。瞳由ちゃんなら話してもいいかな、とか思ったりするのだが……

「じゃあ俺も、何かするかな……」

 交差点に差し掛かり、信号が赤なので止まる。車の水しぶきがかからないようにいつもよりは

かなり後ろで待つ。

「テツ君の趣味って何?」

「趣味……最近はビーマニ――音楽ゲームかな(それは趣味でいいのか?)」

「だったら音楽関係のクラブは? バンドとか似合いそう」

 バンド、つったらあのベタベタカップル(一方的)がいるところか。楽器はほとんど

さわったこと無いけどリズム感は自身あるから(笑)、ちょっと覗いてみるのもいいかな……

「じゃあとりあえず候補にしておくよ」

 俺がそう言うと、肯定されたからか彼女はニコッと笑った。そこで信号が青に。

 

「明日――バンドクラブやってるのか」

 瞳由ちゃんのおかげでほとんど濡れずに自宅へ帰れた。そしてたまたま残していた先日の

チラシを見ながら独り言。まあまだ本気でやる気が出てるわけではないが……彼女もお世辞でも

似合ってると言ってくれたし。ただそれだったらギターフリークス(ギタフリ)やドラムマニア、

キーボードマニア(キーマニ)とかもやってりゃよかったかもな……

 雨が降りゃゲーセン行ってそっちの方にも手を出してみようかと思ったが、やはり雨は

夜も降っていた。それにもはまってどれを極めるかわかんなくなってしまうよりはビーマニ一本、

というのもアリなんだろうが……DOUBLEを考えると極めようが無いぞ、アレは。まあゲームだから

本場のセッションはもっと凄いもんなんだろうけどな、楽譜とかも違うだろうし。

 今日は雨音を子守唄にしながら、早めに布団にもぐった。今日の二の舞にならんようにな……


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