クリスマスパーティ(上)


「あ、雪!」

 そう言って隣を歩いている瞳由ちゃんが空を見上げる。つられて上を向く俺の鼻先に、

冷たいものが降ってくる。

 今日は12月24日、七希菜ちゃんの家で行われるクリスマスパーティに参加するために、

同じく呼ばれている瞳由ちゃんとともに七希菜ちゃんの家に歩いて向かっている。時間的には

開始予定時間より早く到着するが……外国では時間より遅く来るのがマナーらしいが、日本は逆。

早く来て準備を手伝ったりするもんだよな。というのは瞳由ちゃんが言ったことなのだが。

 今日は曇ってるな、と思ったら雪か……いいホワイトクリスマスになりそうだ。

「ん?でもパーティとか開くのってなんでイヴが多いんだろうな」

「……そういえばそうねぇ」

 独り言のように言った俺の言葉に瞳由ちゃんがあいづちを打つ。多分25日になる瞬間に

盛大に祝うのだろうが、今日のパーティは昼前から夕方まで。一昨日が冬至だったから、

すぐに暗くなっちゃうからな。

 

 七希菜ちゃんの家についた。呼び鈴は瞳由ちゃんが鳴らす。

「い、いらっしゃいませ……」

「!……な、七希菜ちゃん……?」

 扉を開けて見えた顔は確かに七希菜ちゃんだが、その衣装は真っ赤……赤い帽子、赤い上着、

赤いスカート、赤い靴。サンタクロースの衣装だ。というかスカートは……(*^^*;

「どうだ、かわいいだろ!」

 彼女の後ろから出てきた佑馬は……茶色い動物の着ぐるみだった。頭から2本の角が

生えてるってことは、やっぱトナカイなのか?なんか手抜きっぽい衣装だな……

「なんだよテツ、呆れた顔すんなよ」

「いや……七希菜ちゃんのも佑馬のアイデアか?」

「うん、やるならとことん楽しまなくちゃね♪」

 反対してた割には、一番やる気あるように見えるのだが……ま、俺も楽しむか。いいかげん

外が寒いので、さっさと七希菜ちゃん宅に入ることにした。玄関の靴を見れば、

「お、もう来てる人いるのか」

「ええ、料理クラブの皆さんが何人か」

「あおいちゃんも?」

「照下さん?確か来てますよ」

 よかった、ちゃんと来てくれたのか。楽しんでくれればいいけど、そのためにはやっぱり

俺が後押しすべきかな。自然と足取り軽く靴を脱いで上がらせてもらった。なんとなく

瞳由ちゃんの視線を感じるが。

「おじゃましま〜す♪」

「……お邪魔します」

 

 広間には長い机が2つくっつけられていて、10人以上もの席が設けられていた。料理は

まだ来ていないが、各席には皿やコップが並べられていた。料理クラブのメンバーがやって

くれたのか?こりゃ手伝うものもないな。むしろ俺が手伝ったら邪魔かも……と、よくみれば

既に席に座っている人影があった。

「あ……タイトさん」

「ようあおいちゃん、よく来たね」

 まるで俺が主催者のような口ぶりで応える。まあパーティを開くのを決めたのは俺と言っても

まあ過言ではないかも。本当に口で言っただけなんだけどな。

「あ……タイト」

「ん?……げ、益田」

 後ろからの声に振り返れば、ペットボトルのジュースを盆に載せて持ってくる益田がいた。

料理したのかわからないがちゃんとエプロンをつけていたりする。

あおい & 恵理

「『げ』ってアンタ……」

「いや、思いもよらなかったんでつい……」

「あおいの付き添いよ、どうしても一緒に来て欲しいってね」

 なるほど、一人ではやっぱり来るのをためらってたんだな。まだ益田と一緒にいないと

行動できないのか……

「そういえば益田、あおいちゃんのぬい……」

「ほら、さっさとどいてよ、これ並べなきゃならないんだから」

 声に押されて、思わず道をあける。今言うべきことでもないし、控えておくか。そういって

忘れそうなんだけど。

 ピンポーン

 また誰か来たようだ。七希菜ちゃんが出るだろうが、暇なので俺も誰が来たか見に行こう。

七希菜ちゃんの衣装に驚く顔も見てみたいしな(笑)ということで玄関まで戻ると、ちょうど

七希菜ちゃんが戸を開けるところだった。

「こ、こんにちは……」

「あ、北野君、いらっしゃいませ」

 き、北野!?あいつ瞳由ちゃんに告白してた……七希菜ちゃんと仲がいいから来ると思って

来たのか?振られたのにまだ執念があるとは……それとも「瞳由ちゃんが好きな人」ってのを

探りにきたとか?でもそいつこそここに来てる可能性は低いと思うんだが……考えごとを

していると、俺と北野の目が合った。

「君は……タイト君?」

「ああ……よく知ってるな」

「え、ああ、たまたまね……」

 ……もしかして俺が瞳由ちゃんと一緒にいることが多いから、要注意人物と目ぇつけられて

たりして……俺のほうから思わず目を反らすことに。反らして後ろに向いた先には。

「北野くん……?」

「あ、列戸さん……こんにちは……」

 瞳由ちゃんがケーキを運んでいるところだった。結局手伝ってるのか……じゃなくて、

気まずそうに頭を軽く下げる挨拶をしただけだった。視線を戻すと北野が顔を赤くして

(事情を知っている俺には赤くなってるように見えた)こちらも下を向いたままである。

「あの、どうぞ上がってください?」

 不思議そうに七希菜ちゃんが言ってようやく、ぎこちなく北野が靴を脱ぎだした。瞳由ちゃんは

既に広間のほうに行ってしまっていた。……なんか、一部は気まずいパーティになりそうだな……


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