B.N.


「弾ける楽器は?」

「……無い」

「…………」

 バンドクラブのまあまあの演奏(音楽に関して素人に近いのでよくわかっていないが)を聞いて

多少はやる気になった俺に、部長・上久 選が面接。どうせ形式的なもので、人数少ないこの部に

入るのはたやすいことだろうが、まあ担当楽器を決めるのだろう。が、生憎俺は何も扱えない。

「ほな、なんでバンドクラブに入ろうと思ったんや」

 ちょっと呆れた声で訊ねる部長。しかも関西弁なのでこちらも気が抜けそうだ。

「いや――友達のススメ……かな」

 瞳由ちゃんとは友達、だよなぁ、それ以上ではないよなぁ……ま、それは置いといて。

「あんまやる気無いんとちゃうん?」

「だから今までクラブ入ってなかったんだけど」

「まあまあ部長」

 あまり俺が入るのに乗り気でないように見える部長をなだめたのは宗谷。

「(幽霊部員でもいいから、2年が3人いれば部長が卒業しても部は残るんだからさ)」

 小声で言ってるようだが聞こえてるぞ……そんなにやる気ないように見えるか、俺。

でも逆に言えばそれほどバンドやりたいってことなんだけどな。

「それにあたいがちゃんとギター教えてあげるしさ」

「ギター? キーボードじゃないのか?」

 ギターを弾いてるのは当の宗谷だし、残ってるのはキーボードだけだ。ビーマニは得意だが

キーマニさえやったことない俺にとってギターもキーボードもさほど代わりはしないが。

小学生の時はピアニカやってたけどな……

「あんたがギターやって、あたいがボーカルになればいいじゃん」

 それが狙いか。やっぱボーカルはバンドの華だもんな、しかしギター弾きながら歌うのは……

やっぱむずかしいんだろうな。

巫琴

「それでいいでしょ、シャノン?」

 ここだけ甘えた声になる宗谷。針井は相変わらずの無愛想で、

「足手まといにならなけりゃいいけどな」

 ……そんなこと言うと思ったが、いざ言われるとやはりムカツクな……

「ほな、正式な部員になってくれるんな?」

 部長も折れたようで、もう俺が入部するのは確定のようだ。見学のつもりだったのだが。

「……よろしく。」

 俺も折れた。……「オレ」がかぶっている(汗)

「じゃ、バンドネーム(B.N.)決めよっか」

「B.N.?」

 だいたい見当はつくが、そんなもん付ける必要ないと思うが……やっぱバンドのときは別人に

なりたいんだろうな、カツラもつけてるし。

「ちなみにあたいは、バンドグループのSOPHIAが好きだから『ソフィア』ね」

(まんまだと思うが……)

「シャノンは、いつもそう呼びたいから『シャノン』のまま(はぁと)」

(それこそまんまじゃねぇか)

「部長は青色"blue"と可能性"able"っていう言葉が好きだから、あわせて『エブルー』」

(もちっとセンスないかなぁ)

「で、あんたはなんて名前がいい?」

「俺は……」

 すぐに思いついたのはビーマニ関連。好きな作曲者の名前を拝借するか。でもそれもまんま&

ゲームオタクみたく思われそうだが、ばれなきゃいいし。

「じゃあ、『レッド(L.E.D.)』で」

「赤色(RED)? というか戦隊モノのリーダーみたーい」

 ぐは選択ミス、でも最近DP THE BIG VOYAGERクリアしたから、それが先に思いついたんだよ……

ひそかにHELL SCAPERも好きだし。しかし他にも思いつかん。

「まあいいわ、あんたはレッドね。これからよろしく」

 宗谷……「ソフィア」が手を出したので、つられて握手。続いて部長「エブルー」とも。

「シャノン」は当然手を出さなかったが。

「ほな、この辺で今日はお開きやな」

「えっ、もう終わりなのか?!」

 早いぞ、1時間も経ってないんじゃないか? もっと日が沈むまですると覚悟していたのだが

拍子抜けだ。

「クラブだけに時間さけるわけでもないしな」

 なんとなくわかったような気がした。ここは完全に趣味のクラブだ、部長は結構飽き気味だし、

宗谷がクラブ残したがるのは、クラブがあれば針井に会えるからな、実はバンド自体にに一番熱が

あるのは針井だったりしてな。


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