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 ある曇った日の休み時間。天気と比例してかやる気が出ないか眠たいかで、机にひじをついて

ぼーっとしている。もうすぐ梅雨だよなー、いつぞやのときみたく傘を忘れるってことは無くなる

だろうけど、やっぱ雨ばっかってのは気が滅入るよな……

 と考えるのは俺だけか、教室の男子生徒どもは集まってがやがや喋っていた。女子はともかく

男子がそんなにつるんでお喋りかよ……声も大きいので自然と耳に入ってくる。

「お前ってさぁ、好きな娘とかいるのか?」

「なんで急に……いないなぁ」

「じゃあタイプは?芸能人で言ったら」

「……やまふじあいこ?」

「そりゃお前、身近にいるじゃんか」

 なにやらコントらしい会話が繰り広げられているようだが。そういえば俺のタイプって

どんなだろう。そんなに好き嫌いがあるとは思わないのだが……てことは浮気性なのか?(汗)

「じゃあ身近で考えよう。やまふじあいこは1年だから置いといて、同級生で」

「えー、それって好きな娘言うのと一緒じゃん」

「まぁ……『しいて挙げるなら』ということで」

「それはそれで失礼じゃないか?(^^;」

「んー……やっぱ千代川さんかな」

「お前……ベタすぎ」

七希菜

「そういうお前もそうなんだろ」

「でも名倉と付きあってるんじゃねぇの?」

 知った名前が次々と出てくるので、思わず顔がそちらへと向く。やっぱり七希菜ちゃんは

男子に人気あるよな。そして彼女のそばにいる佑馬もある意味有名だよな……と、会話していた

男子生徒の一人と目が合った。

「そういや、タイトって千代川さんと名倉とよく話してるよな」

「あ、ああ……」

 急に振られて単純な返事しかできなかったが。

「あの二人ってさあ、付きあってんの?」

 今度はもっと返事に困る質問をされてしまった。厳密には付きあってないのだが、そう答えると

この男どもが『よし、じゃあ俺が』とか考えてしまいそうで佑馬に悪い。それならよい意味で

誤解を招いてやるのもあいつのためか?

「ああ、そうみたいだけど」

 はっきり言えない自分は正直者だなぁ……しかし向こうも納得はしたらしい。

「やっぱそうか、あれだけくっ付いてて付き合ってないなんて、よほどの鈍感か漫画だよな」

「漫画って……じゃあ千代川さんはナシで、同級生で付きあうとしたら誰?」

「……なんか趣旨変わってきてないか?」

「俺だったら5組の……」

 そのあとは俺を放っておいて、女子の名前を羅列していった。同じクラスの女子に遠慮してか、

他クラスの女子のが目立っていたのは気のせいだろうか。まあこれだけの大声で女子に聞かれたら

恥ずかしいこと限りなしだろうからな(今でも十分に恥ずかしいと思えよ)。

 そいつらの会話は忘れ、またボーっとする。ふと思い出したのは七希菜ちゃんと佑馬の話。

佑馬のタイプって七希菜ちゃんみたいな優しくてかわいい女の子だったから、彼女のことを

好きなのだろうか。しかしかわいいはともかく優しいってのは、話とかしてみないと判らん

だろうし……あのTVでよくある、相手に面識ないのに告白されたっていうのは、はいとも

いいえとも返事が決められずに「お友達から」となっちゃうやつ。中途半端に思えるが、やっぱ

お友達としていろいろ話してみないと相手のこと判らんだろうよ。だからあれはまず「お友達に

なってください」から始めるべきだ……それはそれで計画的でいやだなぁ。

 結局、佑馬は七希菜ちゃんと話す機会が他の奴より多かったから、他の奴より好きだと思えるの

かもしれない(友人の立場上、そう思ってやろう)。じゃあ女の子の「好きな異性のタイプ」って

どんなだろう。男である以上、それを知りたいのではあるが、やっぱり完全に読みきれないのも

事実。男の方が単純だろうからなぁ……でも宗谷は単純だな(笑)七希菜ちゃんのタイプは見当

つかないが、宗谷みたくミーハーじゃないだろうし、一目惚れとか見た目だけで決めないだろう。

彼女は心で惚れる方だろうな。

 逆に……俺がタイプ、っていう女の子もいるかもな……そんでその娘が告白する勇気がなくて、

卒業まで言えなくて離れ離れになって、結局俺は気づかず終い、っていうこともありえるかも。

つーか中学生のときにあったりして……というのは自惚れか。まあ高校時代の出会いが全てじゃ

ないんだろうけど。じゃあ俺の気持ちはどうなんだてっと、まだそんなに想える相手もいないわけで。

……俺って中途半端だなぁ……


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