さらにいえば、6th styleが出たばかりだし、勉強もままならない……ガマンしてインターネットで
情報を見るだけにしてるんだけど、余計にしたくなるなぁ……もう、行っちまおうか(ぉ
しかし、外はあいにくの雨、濡れてまでやりに行きたくはないよな、ここは素直に勉強するか……
と、ベランダの外を眺めていた時、雨に濡れて走っていく俺の学校の女生徒が一人。
鞄をしっかりと抱え、その内側には丸い飾りが付いてあった。
「あおいちゃん!?」
思わず窓を開け、下に向かって叫ぶ。以前にもこういう事があったからか、声に気付いた
彼女はすぐに上を見上げた。やっぱりあおいちゃんだったが、学校が終わってからもう2時間
くらい経ってるハズなのだが。雨模様もあってあたりは大分暗い。
「傘持ってないのか?貸してやるよー」
と言って彼女の返事も聞かぬまま俺は玄関に置いてあった2本の傘を手にして部屋を出た。
1本は折り畳み、もう1本は普通のだ。後者を貸すことにしよう。エレベーターで降りていく間、
遠慮して濡れたまま帰ったりしないだろうか、とか考えたが、俺がもう行動を起こしているのに
それを無視する娘ではないだろうも思った。エレベーターが1階に着き、扉が開く。
「……うわっ!?」
期せずして目の前に髪から雨水を滴らせた女が立っていたので、思わず大声をあげてしまった。
がよくよく見れば制服姿、あおいちゃんだった。
「あ、雨宿りで……」
た、確かに雨の中待つわけにも行かないよな、それにしても……怖い(^^;
「どこか行くんだったんですか?」
二人して傘さして歩きながら、俺が質問する前に先にあおいちゃんに言われた。そういえば……
俺どこへいくんだ?(ぉ ポケットにはいつのまにかサイフが。あおいちゃんの帰り道を考えれば
ゲーセンという手が……結局ゲーセン行きになるのか。つーかあおいちゃんと一緒に行く必要は
なかったんだし。でも聞きたいこともあったんでな。
「ま、ちょっとな……そういうあおいちゃんこそ、こんな時間まで何やってたんだ?」
「学校で恵理さんと、テスト勉強を……」
ほら、やっぱりみんな勉強やってるし……それにしても益田、やっぱり悪い奴じゃなかったん
だよな、あおいちゃんに勉強教えてあげてるってことだろ。
「その益田は一緒には帰らないのか?」
「まだ、勉強するって残ってました」
ふーん、結構努力家なんだな、いつぞやも七希菜ちゃん抜いてやるって意気込んでたな。
それでもその時も七希菜ちゃんが学年1位だったけど。でも現国は調子悪かったんだよな(^^;
思い出しついでに、学園祭前の益田の話も思い出した。
「なあ、あおいちゃんと益田って、付き合い長いのか?」
変わった質問をされてか、まだ濡れた髪が乾いていない彼女がこちらを向く。今道はしばらく
直線なので、つまづく要素はない。まあ雨で滑るかもしれないけど。
「幼稚園のころから……」
「幼なじみってやつか」
漫画で幼なじみっていうと、ほとんどが男と女で、転校とかしてある日ばったり再会して……
なんてベタなことが見られるが、何も異性同士を言うものではない。幼稚園に通っていたなら
そこにいる全員が幼なじみだ……は、言いすぎか。とにかく、あおいちゃんと益田はよく
遊んでいたのだろう。ついでに益田が姉貴分ふかせているのがすぐに思いつく。
「昔からあんなにキツかったの?」
「いえ……中学3年のときに……」
高校に入る前……いきなり豹変するってのもおかしな話だよな、そのときなんかあったん
だろうか?たとえば……あおいちゃんの弟が……
「もしかして、悪いこと聞いちゃったかな……?」
「いえ……大丈夫です……」
傘に隠れてよく表情がわからない。やっぱりこの話題は、あおいちゃんから話してくれるまで
触れないことにしよう。でも俺の予想通りだったら、あおいちゃんがこういう性格になったのも
そのときなんだろう。それはわかるが、何で益田がああいうキツい性格になるのかがわからない。
普通はあおいちゃんにもっと優しくなってもいいのに……やっぱ地か?
もう駅前まで来ていた。というかゲーセンの前だ。UFOキャッチャーを見ると、つい彼女の
鞄の丸いのを見てしまう。それはちょっとだけ濡れていた。
「じゃあ俺、この辺で……」
「ありがとうございました……月曜日に返します」
「ああ。またな」
しばらくあおいちゃんが歩いていく方向を眺めていた。というか俺がゲーセンに入るところを
見られたくないというのもあったが……
ゲーセンに客はほとんどおらず、6th styleはやりまくれたのだが、そのせいで勉強が不安……
日曜はあおいちゃんを見習って真面目に勉強しよう……