思わず独り言になってしまうほど面白いものになっていたPS版DQIV。キャラクターの
性格がかなり出てて仲間と「はなす」のが楽しいな。はなしまくって時間過ぎて、飯作る時間も
無くなってしまうほどはまったり……ってダメじゃん……作る時間ももったいないので
ぱっぱとコンビニで買ってくるかな。一応教会でセーブをして、電源を切らずに家を出た。
「テツ君、いらっしゃい♪」
外から俺の姿が見えたのか、入ってきたと同時に挨拶した瞳由ちゃん。バイトの曜日が
替わって瑠璃絵さんと別々になったんだっけ。とりあえず今晩の飯は……と店を見渡し、
ふと視野に入ってきたのはゲームソフトコーナー。最近はコンビニでもゲーム売ってる時代に
なってんだよな……DQIVもならんでるし。ここで買えば近かったんだけど、まあ買ったことに
変わりはないしいいか。としみじみゲームを見ていると。
「テツ君も買ったんだ?」
瞳由ちゃんがカウンターから身を乗り出してこちらを覗いていた。
「ああ……好きだからね」
「私も買ったんだよそれ、今2章でLv10だったかな」
2章でそのくらいだと、もう武術大会くらいか、そろそろ2章も終わるな。
「俺は4章入ったとこかな」
「はっやーい、徹夜とかしてんじゃないのぉ?」
「……ま、ここに買い物しに来たのもそのせいかな(^^;」
「ああ、なるほど(笑)」
そこでゲーム電源入れっぱなしなことを思い出し、さっさと飯を買うことに。
ソバでいいかな。あと菓子類もいくつか選んで、レジに持ってくる。
「もう少し欲を言えば、声優があったらよかったんだけど」
レジに通しながら、瞳由ちゃんがゲームのことについて喋る。
「声はちょっと……FFXはどうだったか知らないけど、ちょっとイメージが合わなかったら
やだなぁ」
あのピコピコで喋るのも味がある。最近は性別によって3種類の音程になってたり芸が細かい。
「イメージはあるでしょ?同じ声優使えばよかったのに」
「……? ドラマCDの?」
「それもあるけど……アニメがあるじゃない」
アニメ……?? そういえばだいぶ昔にジプシー姉妹はアニメに出てたような……
でも本当昔だし、しかも1話きりだったはず……なんか話がずれてないか?
「なあ瞳由ちゃん……ドラクエ4……だよね?」
「えっ……ドラクエ、じゃないけど……あれ?」
やっぱ違ってたんかい。でも章仕立てで最近出たRPGって……
「"Super-Ability"のことなんだけど……」
……んなもん出てたのか?!思わずゲームコーナーに駆け寄る……さっきは気付かなかったが、
DQIVの斜め下に、「それ」がちゃんとある……こんなんも出してんのかよ、さすがに知らん
かったぞ。昔はマンガの新刊が出ると親父が俺に嬉しげに言っていたが、俺が無視気味の対応
だったので最近は言わなくなってるから、そんなことも知らされていない。どうせマンガから
ゲームになったのってあんまり売れなかったり面白くなかったりするんだけどな。
「知らなかったの……?」
再び覗き込む瞳由ちゃんは、不思議そうに聞いてきた。俺が「これ」が出ることを知っていて、
もう既に買っていると思い込んでいたような反応だ。
「ああ……実はあんまり詳しくないんだよ、このマンガ」
それは半分真実、半分ウソである。それを説明するとややこしくなるので、どっちかに
言っておかねばならない。知ったかぶりより知らないふりの方が簡単だ。
「そうだったの……」
共通の会話で楽しめると思っていたのか、反動でがっかりする瞳由ちゃん。そんなにそれに
執着しなくても……あまりの落胆振りにこっちのほうが悪い気がしてきたなぁ……
「じゃ、じゃあ、これから買ってやってみようかな……」
「……ホント!?」
途端に歓喜の笑顔に変わる。
「じゃあ今すぐ買うの?!」
「あ、いや……今日は持ち合わせが無いから、また銀行から下ろしたときに……」
さすがに今すぐは……DQIVクリアしてからにしたいし、どうせならソフトは親父に送って
もらうかな……もちろんそういう事情があって、ということを伝えないと、親父まで勘違い
しそうだし。
「面白いよ、私が保証するから☆」
店員としてか、個人的にか。というか明らかに後者だよな……ちょっとブルーなまま、
買ったものを下げて店を出る。出際に瞳由ちゃんの満面の笑みと、ライト(猫)のあくびが見えた。
「ありがとーございました♪」